帰り

「はぁ…」
何やってんだろ。
だるいという気持ちとは反対に、左足は貧乏ゆすりする。

不満を貧乏ゆすりで解消するだけの日々という感じ。
ため息をついて、電車の窓に魂に水分を含ませて、そのまま忘れてきたみたい。

今日も曇りか。星も見えない。
まるで晴れの日が少ないかのように私のネガティヴ号は世界を煙で灰色にしていく。

「ん…」

実家に居たよく居る薄い茶色の芝犬よりも口数が少ない。
あの子、元気だったな。
人が来るたびに人懐っこく尻尾を巻いて、振って、全身で甘えて。

口数の割に、嫉妬心は多いみたいだ。犬如きに羨ましいだなんて。

寒さに気づいてしまった。
寂しさはマフラーで包みきれずに私は全身を冷やされる思いだ。

冷えている私も通り過ぎていく風のように、あるようでないような。
そんな感じ。

2階建の1軒屋にブロック塀のよくある家と、30、40代が住んでそうなアルミ塀に道路に面したコンクリートと石っころの駐車場。

それらが礼儀正しく道を譲ってくれているような、というか凸凹なようでみんなきちんとしているのだろうという妄想に耽る。

きちんとした大人なのだろう。
普通ができるんだ。

「(羨ましい)」

頭の中いっぱいに広がる嫉妬心。
私が劣ってるみたいじゃないか。

「(何強がってんだろ)」

諭すように私を押し殺す。

チラリとオレンジのミラーを一瞥して、すぐそこ。

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