ねものがたり⑨ ひとがた
宝暦のはじめごろの話という。三河国は矢作川に橋を架ける公的事業のために、江戸から多くの役人や職人が派遣された際の出来事である。
ある日、人足頭──労働者の取りまとめ役のひとりが川縁に立っていると、川上から何かが流れてくる。何だ、とよく見てみると、板の上に人形を乗せたものが流れてくるのだ。子どものすることかとも思ったが、どうにもその人形の造形が子どもが玩具にして遊ぶものとも思われない。
奇妙ではあった。が、どことなく興味を引かれた。そこで、川の中から取り上げ、宿へと持って帰って