最近、近所の人と話していて感じたこと
最近、散歩中などに行合った近所の人と話していて感じたことを下に列記してみる。
昔からの「おなじみさん」との会話は楽しい
最近20年くらいの間にこの地区に移住してきた人達はここが水害が多いことを知らない
上の内、「おなじみさん」との会話が楽しい理由は方言で会話するからだな。
昔からの知り合いだから、自分も何も隠すことなく『ド甲州弁(南湖弁)』を遠慮なく使って話ができることが楽しかった。
「ほうけぇ?」だったり、「何ょう言ってるでぇ?」「困るじゃんね」など、この土地(山梨県南アルプス市東南湖地区)の人でないと理解できない言葉遣い、ニュアンスでの会話、私の両親や祖父母、我が家が昔に住んでいた大正時代に造られた家のことなどの思い出話が盛り上がり、一緒に散歩していた飼い犬が、
「父ちゃん、まだあ?ぼく、もう帰りたいよ〜」
と言い出しそうな時間を立ち話をした。(^_^;)
そして移住してきた人との会話で感じたのは、当然といえば当然だが移住してきた人達はこの地区が太古の昔から水害と戦い続けてきた土地だということを知らないことに私が驚いた。
南湖という地名は、記録上最も古い時代にこの土地を治めた「奈胡十郎義行」の「奈胡(なご)」の読み方が「南湖(なんご)」に変化したという説と、甲府盆地の南端部で内水氾濫が何回も発生した土地であるために湖の様に年中水に浸かっていたので、南の湖で「南湖」という地名になったという説の2つの説がある。
地区の歴史をまとめた文献では「奈胡十郎」説が有力だとしているが、私が住んでいる土地の登記簿を確認すると、「山梨県南アルプス市、大字東南湖、字前河原」というのが現住所の正規な表記として示されている。
また既述した東南湖、西南湖の他に周辺には「和泉」「田島」「戸田」「清水」「宮沢」「鮎沢」「高田」などの水や田んぼに因む地名が多い。
これらの地名が何を意味するか、分かる人には解ると思う。
事実、私は中学校1年生の時の昭和57年と、2年生の時の昭和58年の2年連続で台風襲来時に実家から避難した経験がある。
幸いに2回共実家は水害を逃れたが、同級生の1家は2年連続して、別の同級生の家はもっと多く洪水による浸水被害を受けている。
更に我が家のお墓がある菩提寺の本堂の床下には木舟が2艘保存されていて、この木舟は昭和30年代の台風災害時に実際に使用された記録が残っている。
古い時代からの地名というのは殆どの場合、その土地に生きた先人達の想いやメッセージが込められていることが多い。
土地の売買を行う不動産業者は、わざわざその土地の地名の由来などを解説した上で土地を売ることはしないと思う。
だから土地を買う側が地名に隠されたメッセージを読み取る必要があるが、この点に注目して土地を買う人は少ないと思うし、最近はこの様なメッセージが判り難い地名や造成地名に変えて分譲地が売り出されるので買う側の人も知らないことが多い。
でも自分が貴重なお金を出して住む、事業を行う土地についてなるべく事前にその土地の過去の被災状況を確認する努力が必要ではないかと私は考える。
そしてこの土地に生まれ育ち現在もこの土地で生活している私達は、自身の避難経験や地名に隠れたメッセージ、先人達が水害と戦ってきた記録などを語り継ぐ責任を全うしたいと思う。