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金曜の夜に乾杯

フルリモートで働く定位置は、こたつ。
実家では勉強やくつろぐのを畳の上でやっていたからか、大人になったいまでも椅子ではなく床に座るのが一番しっくりくる。

12月よりもちょっとだけ日の入が長くなったとはいえ、17:30を過ぎると真っ暗になる中、玄関を開ける音がして旦那さんが仕事から帰ってきた。

厳密にはその手前の、車を停める「ぶぅん、うおん。」という音で帰宅に気づくのだが、気づいていないふりをして部屋に入ってきたところへ「おかえり〜」と声をかける。

時刻は18:00になる15分前。

定時が18:00の私は、最後の追い込みだ。
18:00になるとSlack上では他の社員さんたちが続々と退勤の挨拶をしていく。

カタカタ.…

カタ…

カタッ

カタカタカタカタ…

よしっ、おわりだ!

退勤の挨拶をSlackで行い、PCを閉じる。
毎朝毎夕やっていることなのでなんら疑問はないが、あらためて考えるとPCの中だけで仕事が完結し、コミュニケーションもオンライン上なんて、なんてバーチャルな世界にいるのだろうと思ってしまう。

クリック一つで送信も、取り消しもできてしまうような儚さでありつつも、そのメッセージは送り先の相手の時間や感情を変化させてしまう。

と、仕事から解き放たれた頭は自由な思考を始めるが、今最も考えるべきことはごはんだ。

何たべる〜

冷蔵庫、いま作り置きのおかずあんまりないね〜

スーパー行っちゃうか〜

行っちゃう行っちゃう〜(元気よく財布とエコバッグを掴む)

二人で車に乗り、近所のスーパーへ。
自分が金曜日の夜にわくわくしているからか、スーパーにいる他のお客さんも心なしかくつろいだ表情だったり、開放感溢れる雰囲気がある。

スーパーでは割引になっていたお惣菜を少しと、あとは旦那さんがチョイスしたホルモン(未調理)ともやしをゲット。

帰宅したらお互いにさくさくとごはんの準備をしていく。
私がお惣菜をレンジで温めたり取り皿を用意している間、旦那さんはホルモンの調理にとりかかる。
フライパンでホルモンに火を通し、もやしに油を吸わせながらしんなりさせていく。

塩コショウ、焼き肉のタレににんにくチューブ、しょうがチューブもたっぷり絞る。

冷蔵庫に残っていた作り置きやお惣菜をテーブルに並べ終わったころ、ホルモンも完成。

各々のお酒も用意して、1週間お疲れ様の乾杯。

どんなにメインのおかずが美味しそうでも、まずは野菜の副菜を必ず一口食べるのが旦那さん。
白菜の浅漬けやキムチ、きんぴらなどから食べる彼を見て、あわててメインおかずに伸ばそうとしたお箸を方向転換させるのが私だ。

スイーツとなると、ケーキのいちごなど一番美味しいとこは最後に食べる私。対して旦那さんは最初にぱくっと食べてしまうのに、食事となると反対になる原理が未だ解読できていない。

ホルモンの話に戻り、二人で同時にぷりぷりのむっちりしたホルモンともやしをほおばる。
ホルモンは、ぷちっと油が口の中で弾け、噛んでいくごとに甘くてジャンキーなタレが口いっぱいに広がっていく。
もやしはたっぷりホルモンの旨味を吸っていて、これもまた美味しい。

二人ともお酒を吸収するペースがいつもより速く、「これはホルモンのせいだ」「罪深きホルモン」「もやしがいい働きしてて最高」なんてホルモンたちからお小遣いをせびろうとするほどに賞賛が止まらない。 

用意したおかずが少なくなり、箸のペースも緩やかになってきた。

「あったかい部屋で、お酒を片手に食べるホルモンは最高だね」と頷きながら更けていく金曜日の夜だった。


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nekoyan
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