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私の詩集1

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#詩

〔詩〕隣の仕合わせ

〔詩〕隣の仕合わせ

青い鳥を探さないのは
どこにもいないと知っているから
実はここにいるんだよ、なんて
お伽話にはもう騙されない

本当の仕合わせって何
自分が思い込めばいいなんて嘘
私が持っている物と
あの子が持っている物
比べても意味が無いなんて
当たり前のこと言わないで

隣の芝生はいつだって青い
私から見たあの子
あの子から見た誰か
誰かから見た私
一番青いのはどこだろう、なんて

答えの無いクイズは
もうお

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〔詩〕夕景

〔詩〕夕景

凪いでいく心をかき乱すのは
夕空に光る飛行機雲
枯れ野でひっそり咲く野花
少し音程のずれた子ども達の歌声

謝らないよ
私だけが悪いんじゃない
謝らないで
あなただけが悪いんじゃない
きっとボタンを掛け違えたのは
あなたでも私でもない他の誰か

色褪せていく過去
曖昧に揺らぐ未来
覚束ない足取りで
その狭間を歩みながら

冬の風は頬に痛く
花の香も温もりもない
それでも
もう会うことの無い人の幸せ

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〔詩〕夢を見る

〔詩〕夢を見る

夢を見るのは
現実から逃れるため
越えられないこの塀の向こうには
美しい風景が広がるはずだと
うずくまる自分に言い聞かせて

勝つとか負けるとか
そんな単純な話ではなくて
好きとか嫌いとか
そんな本能的なことでもなくて

ただそびえる灰色の塀を
見ない振りができなくなっただけ
この重く冷たい無機質な塀を
愛することなど出来はしないのに

だからまた目を閉じる
美しい風景
美しい風
美しい私を
いつ

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〔詩〕天空の楽譜

〔詩〕天空の楽譜

十数本の電線が空を横切れば
向こうにはぐれ雲の音符が浮かぶ
きっとこれは天空の楽譜
天使たちはこの曲を歌い奏でるのだろう

地上の五線譜しか知らない私には
天使たちの歌声は届かない
どんなに美しく
清らかな歌声だとしても
カチカチに凍り付いた頑なな心は
その存在すら否定してしまう

耳を澄ませてみても
届くのは気怠い街の喧騒
行き交う車は不穏をはらみながら
平和で安全な仮面をかぶっている
それでも

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〔詩〕星空

〔詩〕星空

冬の夜はひとり星空を見上げる
キーンと冷え切った地球から
白い吐息を送るように

オリオンの強さは魅力だけど
短気で乱暴なのはいや、なんて
ヒロインを気取ってみたところで
ただの迷惑ないいがかり

どこかで読んだ知識なんて邪魔
星座たちの物語は古代人の創作
今この瞳に映る星の輝きに
神話など要らない

余計な飾りは全て捨てよ
無機質な光で自分を貫け

冴え冴えとした夜空に輝くのは
静かに命を燃やす

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〔詩〕あなたに

〔詩〕あなたに

四つ葉を見付けたら
しばらくその辺りを探す
たくさんの三つ葉に混ざって
ほら、また四つ葉があった

これは誰にあげよう
小さな幸せが必要なのは
泣きたい気持ちで笑っているのは
考えながら探し続けて

あ、
またあった!

幸せの周りには
違う幸せが隠れている
どんなに小さくても
どんなに不格好でも
幸せの形はそれぞれだから

だから、これ
一番きれいな四つ葉を
あなたにあげる

こんにちは。三羽烏

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〔詩〕だいじょうぶ

〔詩〕だいじょうぶ

大丈夫だよ
涙が止められなくても
私はあなたを責めたりしない

その涙で何かを得ようなんて
小賢しい計算などあなたには無い
心のひび割れから零れ落ちる
痛みの結晶なんだよね

良いんだよ
大人だって
どうしようもない時はある

一人が恥ずかしいなら
私も一緒に泣く
二人で泣いて泣いて
瞼を腫らして
お互いの酷い顔を見て笑おう

大丈夫だよ
私はちっとも強くないけど
あなたの涙ぐらいは受けとめられる

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〔詩〕赤い海

〔詩〕赤い海

切なさとは
心を切りつける何か
時には剃刀
時にはナイフで
鎌鼬のように襲いかかる

せっかく大人の顔で
懐かしそうに夢を語っていたのに
諦めた不甲斐なさと
届かなかった悔しさは
おくびにも出さないで

すみません
滲んだ血をそっと拭うような
優しい言葉はありますか
逃げ込んだ先は
更に切ない言葉の海で
私は溺れるしかなくて

力尽きて漂う夜
数え切れない傷口から流れ出すのは
閉じ込められ
腐敗し

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〔詩〕隠し味

〔詩〕隠し味

痛みは生きている証だとしても
そんな証は欲しくない

悲しみが人生を彩ると言われても
余計な模様など邪魔なだけ

欲しい物だけを選んで
生きていけたなら
もっと幸せなのに

もっと幸せなはず

本当に?

降りかかる痛みも悲しみも
決して選んだわけじゃない
それでも
異物のままにするのはやめて
覚悟を決めて受け止めれば

私の確かな一部となって
隠し味のように
少し私を面白くする

かも知れない

〔詩〕帰り花

〔詩〕帰り花

間違えた訳じゃない
ただ
春のように温かいあなたの言葉に
応えてみたかっただけ

私が微笑むことで
ちゃんと乗り越えようとしていると
あなたが安心してくれるなら

涙は尽きなくても
胸の奥の軋みは消えなくても
私は微笑みたい
微笑む私を見せていたい

秋の気配を知りながら
小春日和にそっと咲いた
一輪の菫のように

こちらのジェルーシャさんの記事を読んで、この詩ができました。

ジェルーシャさん、

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〔詩〕シュレディンガーの猫

〔詩〕シュレディンガーの猫

明かりが消えていく街を
怪獣のような闇が覆う
夢の跡すら飲み込むように

確かめなければ良かった
友達以上恋人未満なんて
ありきたりな思い込みは
ただの幻想でしかなかった

まるでシュレディンガーの猫
大事に抱えてたのは空っぽの箱
中には何もなかったのに
最初から何もなかったのに

そこに確かにあると思ってた
希望も
未来も
煙のように消えて

残ったのは
ひしゃげた心と
冷ややかに広がる闇ばかり

〔詩〕花

〔詩〕花

花は振り返らない

花弁の少し歪んだ付き方も
褪せてしまった色も恥じたりしない
咲いた時期を悔やんだり
蕾を懐かしんだりしない

ただ今日のこの瞬間を
外に向かって開く
隠すことも躊躇うことも
考えもせず
ただ素直に
ただありのままに

誘うべき者を誘い
拒むべき者を拒む
種を未来へ繋ぐため
迷いなどあるはずが無い

花は振り返らない
もしもあの時
もっとこうしていたら
そんな生温い後悔で
無駄に

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〔詩〕きっと

〔詩〕きっと

夕焼けは空の約束
きっと明日は晴れると

今日の1日が
どんなにしんどくても
どんなに悲しくても
きっと明日は晴れる
だから大丈夫だと

人生はそんなに単純じゃない
でも
信じたい時もある

きっと明日は晴れる
それっぽっちの約束を
御守りのように胸に抱いた
何度も何度も
暮れてゆく空を見上げて

きっと明日は晴れる
今日よりも
昨日よりも
きっと美しい青空が広がる
だから

私も空に約束する

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〔詩〕秋物語

〔詩〕秋物語

ごめんね、って
言いたかったのか
言って欲しかったのか
もう分からない

ただ
何かが足りない気がして
息が苦しかった

あの日あなたは優しかった
多分私もそうだった
何で今ごろ
全部終わってしまった後なのにって
出来の悪い小説の
エピローグだけ綺麗な二人

ごめんねが言えなかった二人

風が吹く
金木犀が香る
信号は変わった
聞き分けの良いタイムリミット
あなたも私も
少しだけ嘘つきなまま

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