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私の詩集1

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2023年1月の記事一覧

〔詩〕眠れない夜に

〔詩〕眠れない夜に

さあボリュームを上げて
音に溺れよう
心の軋みが聞こえないように

複雑なリズムがいい
ベースのように低めの声で
早口で捲したてる方がいい
転調を繰り返し
気軽に口遊めない難解さに
自分の場所が分からなくなればいい
上質過ぎて悪酔いしそうな音を浴びて
無表情で眠ろう

救われなくていい
ただ眠りたい

〔詩〕名前

〔詩〕名前

寒い夕暮れ
ふと呟いた名前

それは聞いていた曲のせい
それとも暮れてゆく街の色のせい
どちらにしても笑ってしまう

夜が近付く
風が強くなる
でも闇には飲まれない

懐かしいのは
きっとあの頃の私自身
名前の人じゃない

〔詩〕見上げる

〔詩〕見上げる

晴れた日には
蒼い哀しみ
雨の日には
昏い淋しさ
空から堕ちて
当たって
壊して
隙間から入り込んで
どんどん どんどん

崩れる
溶ける
流れていく

ここは
こんなにも白く柔らかで
脆い

〔詩〕解放

頑張ればきっと報われる、なんて
誰かを頑張らせるための嘘
報われないのは頑張っていないから?
頑張った分だけ報われる方が
本当は稀だというのに

未来を示す者と
望みを抱く者
誰かを救う者と
誰かを喰らう者
勝利を手にする者と
敗れ去る者
無限に頑張らせようとする嘘つきは
どこに立っているのだろう

現実を否定し
もっと頑張れと繰り返し
もう頑張れない誰かを追い詰めていく
それは底なし沼のような偽

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〔詩〕ため息をつく前に

〔詩〕ため息をつく前に

幸せなんて比べるもんじゃ無い
不幸なんて比べてどうする

下らない自慢はしなくていい
でも自信は持っていていい
よそ見して道に迷うより
自分の心に従って進めばいい

あなたはあなた
私は私
それ以上の真理なんてない

〔詩〕旅の支度

〔詩〕旅の支度

抱えきれないのは
あなたが悪いんじゃない
あなたの両手には
荷物が大きすぎるだけ

そんな荷物を持たせた人は
あなたを置いてどこへ行ったの
無理に笑わなくていいよ
取りあえず下ろして選り分けよう

これは必要
これはいらない
これは大切
これは邪魔なだけ

必要なものなら
大切なものなら
きっとあなたには持てるはず
持てないものは置いていこう
今のあなたには要らないから

さあ、
旅はここから

〔詩〕嘘

〔詩〕嘘

窓辺の空気は冷たい
遠くから飛行機の音が聞こえる
ガラス越しに見上げてみたけれど
雨空には暗い雲ばかり

知らない方が良かったとしても
どうしても知りたがったのは私
求めて知ってしまった事実は
無かったことにはできそうもない

飛行機は行ってしまった
雨はいつまで続くのだろう

信じていた昨日も
来るはずだった明日も
乾いた砂のようにこぼれていく
私は雨雲を睨みながら
希望の一つも残っていない

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〔詩〕My Life

〔詩〕My Life

生まれ変わったら何になりたい?
なんて当たり前のように聞かないで
私はもう充分だから

やってみたかったことはある
生きてみたかった人生もある
もう1度行きたかった場所
もう1度会いたかった人
私の中の忘れ物は増えるばかり
でも
やり直したいことなんてない

満足でも諦めでもない
私は私のままでいい
今までも
これからも
ただの私のままがいい

〔詩〕忘れる権利

〔詩〕忘れる権利

忘れる権利は
傷付いた私にある

過去を思い出せないのは防衛本能
亡霊にに蝕まれて
自分が粉々にならないように

思い出してしまう過去は
ゆっくりゆっくり凍らせる
細胞から破壊してしまうために

私には忘れる権利がある
傷付いたのは私だから
あなたの顔も声も匂いも温もりも
全部忘れる権利がある
だからいつか
私が何もかも忘れてしまっても

悲しい顔をする権利など
あなたにはない

〔詩〕好きということ

〔詩〕好きということ

何色が好きでもいい
赤でも
青でも
黒でも
白でも
勿忘草色でも
鶯色でも
茜色でも
ビリジアンでも
コーヒーブラウンでも
サンドベージュでも
玉虫色でも
全部でも

あなたが好きならそれでいい
その理由も
その説明も
言いたいならちゃんと聞く
言いたくないならそれでいい
分からないならそれは素敵

きっと
好きってそういうもの

〔詩〕凍空

〔詩〕凍空

どこまでも暗い空
雲の濃淡を確かめながら
境界線を指でなぞってみる
北風に飛ばされた雨粒が
指先に縋り付いては落ちて

いっそ凍ってしまえばいい
指先から
胸の奥まで
悪い魔女の呪いのように

雲の上にラピュタはない
あれはただのお伽話
そう言い聞かせながらなぞり続ける
縋り付くことすらできなかった
あの日を閉じ込めるように

〔詩〕ひとり立つ

〔詩〕ひとり立つ

自分の淋しさを埋めるために
誰かを求めたりしない
あの日から
心に誓ってきたこと

右側を歩く人がいなくなっても
前だけを見て歩けば大丈夫
大切なことは
自分の胸に聞いていけばいい
疲れたら休みながら
辛ければ泣きながら
それでも自分の足で進んでいく

自分の孤独くらい
自分で背負っていく
優しい言葉に救われたとしても
自分の荷物を誰かに背負わせはしない

〔詩〕手紙

〔詩〕手紙

間違い探しのように
昨日の自分を振り返るのはやめた
振り返っても振り返っても
臆病になるばかりで
何も進歩しないなんてもう飽きた

手紙は届かない
私が返事を出していないから
そんな当たり前のこと
振り返らなくても分かってる

今夜は手紙を書こう
小さい便箋に
迫力の無い右下がりの文字で
とりとめもないことをつらつらと
美しくも何ともなくても
彼女はちゃんと読んでくれるから

もしも
春までに返事

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〔詩〕毒にも薬にもならないけれど

〔詩〕毒にも薬にもならないけれど

壁に耳なんて無い
障子に目があれば妖怪

お天道様は見ていないし
星に願いが届く頃わたしは居ない
天網は大穴だらけで
貧乏は稼ぐのを追い越していく

ひょうたんから駒は出ないし
棚のぼた餅は食べ終わった
寝て待てど果報は届かず
水に驚いて飛び起きるだけ
だけど

捨てる神あれば拾う神ありは本当で
わたしは拾われ続けてここにいる
たとえ大海を知らなくても
天に唾することはしないと誓う