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奈良・平安の乳製品「蘇(酥)」を作る

「メソポタミアしかネタないんすか?」
 という単刀直入かつネコ爺ぃのドMな心に直球を放り込むメッセージを頂戴したわさ。
 だ、黙らっしゃい! んな寂しいネタでブログを始めるわけがにゃいっ… こともにゃいんでしゅ(涙)。とくに日本の古代食については実のところ、分からんことだらけなんじゃ。

 とはいえネタが無いわけでもなく。それも乳製品! 牛乳や乳製品は日本食に縁もゆかりもない食材に思えてならんのじゃが、文献の残る奈良時代から平安時代にかけて貴族が「蘇(読みは”そ”、酥とも書く)」という乳製品を食っとったことが分かっておる。
 下々の者には動物の殺生を禁じておいて、上級国民は「殺さんのだからオッケ法華ぇ〜」とばかりに高カロリーの乳製品を食していたあたりは今とさして変わらんの。もっとも貴族の皆しゃんは料理やお菓子としてパクついていたのではなく、薬として摂取していたんじゃて。

 最近では店頭販売のお菓子や健康食品として売られている蘇じゃが、実のところ蘇がなんであるかが分かっている人は誰一人としておらんのじゃ。チーズやヨーグルトのような発酵食品を蘇として売っているところもあるんじゃが、ネコ爺ぃが調べた限りでは、蘇に限らず動物の乳から発酵食品を作ったことを示す国内の文献はどこをほじくり返しても見つからんぞな。強いていえば『本草綱目』に「乳腐」という食いもんが登場するんじゃが、これはもしかするとヨーグルトっぽいものだったかもしらん。じゃが蘇とはまるで別物じゃ。
 蘇については研究論文やらなにやらが多々あるので、出典としてまとめておくでの。関心のある人は、そちらで知的好奇心をみたしてみてちょーだい。

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 では今回作る蘇とはなんぞや? 牛乳をひたすら煮詰めて固形にしたもの。これを蘇として作ってみることにしまっしゅ。あ”、またネコ爺ぃがインチキこいてるじゃと? んなことはないぞい。『延喜式』にある、
「作蘇之法。乳大一斗。煎得蘇大一升(蘇を作るの法、乳大一斗、煎して蘇大一升を得)」(民部下)
 という簡潔なレシピと他の文献から偉いセンセたちが導き出した最有力候補なんじゃ。ほれ、疑り深い目で見とらんで作るぞい!

[材料] 牛乳1リットル

[作り方] 1. フライパン(テフロン加工のものを推奨)に牛乳を注ぐ。 
      2. 中火にして、ヘラで(ゆっくりと)ひたすらかき回す。

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3. 牛乳がドロドロになり、ヘラで寄せてこんもりとまとまるぐらいの半固形状態になったら火を止める。

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4. ラップに移し、くるんで形を整え、冷蔵庫で冷やす。

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 無茶苦茶カンタンじゃろ。ただし時間がかかるでの。そーじゃのぅ、牛乳1リットルを煮詰めるのに約40分。それもかき混ぜ続けんと焦げてしまうでの、忍耐だけは要るので覚悟せい。土日休日にお子しゃんと一緒に作るなんてのも一案じゃの。味はというと、クリープを板状にした『おしどりミルクケーキ』ってお菓子があるじゃろ。あれを柔らかくしたような優しい味わいじゃ。なんも入れとらんのに絶妙の甘味と塩味が効いておって、そのまま食べても、クラッカーに載せて食べても美味い。

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 ネコ爺ぃが試してみていちばん美味かったのは、フルーツソースをかける食べ方じゃて。市販のソースでもいいんじゃが、フルーツソースは結構、高くつくでの。ネコ爺ぃがお薦めなのは、市販の冷凍ブルーベリーで作るソースじゃ。これもオマケにレシピをアップするぞな。

[材料] 冷凍ブルーベリー 100g
     ハチミツ 60ml1(84g)
     レモン果汁 小さじ1

[作り方] 1. 材料を鍋に放り込み、水気が出るまで置く。
      2. 水気が出たら弱火でとろみがつくまで煮る。
      3. 2を冷ます。

 煮沸消毒をした容器なら、冷蔵保存で1ヶ月は余裕でもつぞな。切り分けた蘇にこのソースをかけるだけで極上のデザートになるぞい。

 ほかにも蘇を化かすアイデアはいくらでもあるはずじゃ。「こんなふうにしたら美味しかった」とかいうお薦めのアレンジがあったら、ぜひコメント欄で教えてちょーだい。


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