楽しさをとるか、ストイックをとるか。さくら剛『君たちはどの主義で生きるか』
大学生の頃、ビッグバンドジャズのサークルに入っていた。
…ビッグバンドってわかりますかね。20人くらいでジャズ演奏するやつです。ちょっと前ですが映画「スウィングガールズ」の世界です。
そこで私はコンミス(演奏代表的なやつ)をしていたのだけれど、バンドの方向性に激しく悩んで、悩みながら走って、つまずいて、結局最後まで答えが見つけられなかった。
要は、「サークルなんだから楽しくやろうぜ~」なのか、「せっかくやるなら上を目指して真剣勝負だ!」なのか。
年に一回の大会もあったので、せっかくなら真剣勝負でいきたかった。けれども、ここは部活ではなくサークル。楽しくやりたいという気持ちもわかる。バイトだってあるし、勉強とか、旅行とか、大学生はいろんなことをやりたいお年頃。
メンバー全員がサークルに全力投球というのもなかなか難しいもので、温度差が生まれるのは必然。
でも楽しくやりたい組も皆いい子たちだったし、別にさぼっているわけでもない。ただゆるく頑張るか、すさまじく頑張るかの違いで。
私はどっちにも振り切れず、「楽しく真剣勝負だってできるはず」という甘美な夢を見て、結果中途半端になり、メンバー内の不和もあって大会も惨敗。
負け惜しみのように「音楽は順位じゃない!」と自分に言い聞かせてた。
実は今でも消化不良案件で、大学時代のことってあんまり思い出したくなかったりする。いつか笑って話せるときがくるのだろうか。
というわけで、世の中いろんな考え方がある。
ながーいこと哲学者の方々が考えに考え抜いたけれど、残念ながらいまだに完璧な思想はない(あったら世界に争いごとも貧富の差もなくなるのかな)。
資本主義、共産主義、合理主義…言葉は知っているけれど、実際どんな考え方があって、それぞれのメリットデメリットは何なのだろう。
と思って手に取ったのがさくら剛さんの『君たちはどの主義で生きるか』。…完全にあのタイトルですよねぇ。ふふ。
哲学って聞いただけで「難しそう、無理!」って蕁麻疹出る人もきっといるでしょうけれど、本書はとても親しみやすいです。
我々一般人の目線まで降りて、さらにはオタク方面に飛んでってます。
プロレスラーの名前とかアイドルグループの名前とか、正直よくわからないのですけど、イメージはよくできる。
さらに語り口調が超絶軽快。軽快すぎて時たま暴走機関車になってるけれど、そこもまた楽しい。こういう難しいお話は、時々(もはや終始)笑いながら楽しく読めないと、頭に入ってこないものね。
この主義がスバラシイ!みたいな誘導はなくて(多少はあったかな?)、それぞれの主義を比較的フラットに(そんなことないかも)紹介してくれているので、これを読んで思想が偏るとかはないです(たぶん。少なくとも私は偏らなかった)。
かくいう私は、自分は悲観主義だなぁと思いました。いや知ってたけど。
何が嬉しかったって、悲観主義でもいいんだよーって書いてくれてたこと(著者も悲観主義なのだそうだ)。
この本を読もうと思ったのも、「今の自分のマインドだめだなー。他の人の考え方知ったら世界変わるかも。」みたいな動機だったのですが、これ読んで、こんな自分でもまぁ悪くないのかも、なんて思ったりして。
みなさんはどの主義で生きますか?