先生も知らない【#シロクマ文芸部 】
ガラスの手だよ、これ。
いいや、これは絶対に足!あし!
違う違う。これは葉っぱだよ。
だーかーらー!花だってば〜!
…………。
*
今は美術の時間。
生徒はみんな、目の前にある
「ガラスの置物」を描くのに集中している。
そのうち、描くのに飽きた誰かが
この置物は一体何だ?と言い始めた。
不思議な形をしたこのガラスの置物について
それぞれみんな自分の考えを主張している。
そしてそんな生徒たちのことを私は
少し遠くから静かに見守る。
手、足、葉っぱ、花、などなど。
他にも沢山の意見が挙がる。
さてと、授業もそろそろ終わりの時間だ。
「みんな、描けたかな?それじゃあ見せ合いっこしましょう」
「先生。結局この置物の正体はどれが正解なんですか?」
生徒はみんな「正解」を知りたがっている。
正解?
それはね…
「うん。それはね、先生にもわかりませんっ!」
みんなぽかんとした顔をしている。
でも本当に、先生にもよくわかりません。
だから「正解」なんて知りません。
というかたぶん、誰も知らないと思います。
何者かわからないガラスの置物は
自分の思うように自由に想像していいんだよって伝えるために
この姿をしているんじゃないかな。
だからみんな
それぞれ自分で決めて下さい。
みんなの思うように。
自分の思うように。
それでいいと思うよ、先生は。
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