秋と本屋とアップルパイ #シロクマ文芸部
「秋と本屋は仲良し」
そう書かれたポスターの前で僕は考え込んでいた。
え?秋と本屋さんはいつから仲良しだったの?
これってみんな知ってるの?
この暗号のような言葉の意味がわからなくて
繋いだ手を僕はきゅっと引っ張る。
「お母さん、これはどういうこと?」
「読書の秋ってことでしょう」
そうか、秋は本を読むのか!
だから僕の好きな秋は本屋さんと仲がいいのか。
それじゃあ僕も行かなくちゃね。
僕は軽やかにスキップをしながらお店の中へ進む。
それを見て慌ててお母さんも僕を追いかける。
「わぁ!こんなにいっぱい!」
僕は色んな棚を見て回った。
漫画、雑誌、絵や写真、むずかしい本がずらりと並ぶ。
それから僕は絵本コーナーにたどり着いた。
「秋と本屋は仲良し」
ここにもまたそう書いてあった。
それに「この秋ぴったりの絵本」というコーナーもある。
僕はそこから本を一つ手に取ってみる。
表紙には大きなアップルパイの絵。
僕はアップルパイが大好きだ。
秋も好きだしアップルパイも好き。
つまりこれは、僕は秋が好きで、秋は本を読むもので
だから秋と本屋さんは仲良しで、これは秋にぴったりの本で
絵本にはアップルパイが描いてあって
だからえーっと僕はアップルパイが好きで…
んっとんっと。
それじゃあ僕はこのアップルパイを買わなきゃね。
「お母さーん、これ買ってー!」
🍎
こうして僕は本屋さんと仲良くなった。
美味しそうなアップルパイの絵本も手に入れた。
本についてきたアップルパイの絵葉書からは
りんごのいい匂いがした。
帰り道、ひゅうと冷たい風が吹いたけど
本を抱える僕の胸はじんわりとあったくて
全然へっちゃらだった。
さすが「秋と本屋は仲良し」だね、お母さん。
【おしまい】
***
今週のシロクマ文芸部でした🐨
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