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【ピリカグランプリ・後夜祭】「もっともっと眠って」

僕は今、友達の目の前にいる。
けれどその友達は僕のことを「友達」だと思っていない。
意味がわからないよね?僕だって意味がわからない。
その友達を僕は「A」と呼んでいた。

中学生の僕とAは同級生。よくつるんでいる仲間の一人だ。毎日くだらない話ばかりして笑っている僕らだが、実は僕はAのことを少し苦手だと思っている。みんなといる時は平気なのに一対一になるとなんだか上手く話せない。実は気が合わないのかも、なんて思っていた。
そんなAが、記憶喪失になった。

もともとAは親とあまりうまくいっていなかった。口論も絶えなかったらしい。でもAは少し愚痴る程度で、僕達に深刻な顔を見せることはなかった。けれどこの前、親と喧嘩をしている際中に頭痛を訴えて突然倒れたらしい。その後病院に運ばれ検査をしたが異常なし。いや、異常なしではないか。
記憶喪失になってしまったんだから…

「記憶喪失?そんなまさか」
今なら僕はこの自分の言葉を撤回する。だってAは本当に僕達の事を忘れてしまった。毎日あんなにふざけ合って笑っていたのに。そんなことってあるか。Aの事を苦手だと思っていたくせに、忘れられたと分かった途端これだ。自分でも呆れる。でもやっぱり嫌だった。一緒に過ごした日々を覚えていないなんて…どうしても許せなかった。「お前本当に忘れちゃったのかよ。毎日みんなで休み時間も学校の帰りも休みの日だって、ずっと一緒にいたじゃんか。」「ごめんなさい…。」この敬語も僕には辛かった。もうどうしていいか、わからなかった。

それから僕は毎日Aの元へ通うようになった。Aは記憶喪失になってからずっと学校を休んでいる。そりゃそうか。僕だってそんな状態で学校になんか怖くて行きたくない。Aは今も僕のことを思い出せていない。そんな僕は今日もまた、Aの家のインターホンを押す。
「いらっしゃい。」
あれ?顔が明るいぞ。なんだか僕への態度も少し自然になっている。一体どういう事だ?昨日まではたしかまだよそよそしかったはず…
「記憶が少しずつ戻ってきているんだ…です。」
そう言ってAは少し笑った。

Aの話では、どうやら睡眠をとるとその度に記憶が少しずつ蘇ってくるとのことだった。だから起きた後は、眠る前より少しだけ記憶が戻っている。眠ることで忘れていた記憶が思い出される…え?寝たら忘れる、じゃないの?寝たら思い出す?なんだそりゃ…

そんな事を考えながらも僕の顔はほころぶ。そういや僕はAのことが苦手だったはずじゃなかったか?そしてまた僕は自分に呆れる。でももうそんなことはどうでもいい。Aは眠ることで記憶が戻ってきているんだ。
A、もっと思い出せ。僕達が一緒に過ごした日々を。
僕らの思い出を消すなっ。
そんな僕はAにお願いをした。

「もっともっと眠って、早く全部思い出してくれよ。」

僕はAに、しきりにそう言っていた。


【1167文字】

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
そして今回「ピリカ☆グランプリ」では
有難いことに審査員を務めさせていただきました。
みなさん本当にありがとうございました。

この「後夜祭」企画が決まる前に
実は既にこのショートショートを書き終えていた。
今回私のほぼ初となるショートショート。
最初に書こうと思ったきっかけは
もちろんこの「ピリカ☆グランプリ」だった。

もともと私はショートショートについては読む専門で
自分が書くことは今までほぼないに等しいレベル。
noterさんとのコラボで物語を作ることはあったが
それは記事紹介を物語っぽく作ったもの。
なので本当のショートショートを書いたことは、これまででほぼゼロ。
けれど読むのは大好きだった。
いつか自分も…とうっすら思いながらも、行動には移せなかった。
だから結局自分で書くことはせず
日々みんなの作品を読んで楽しんでいた。

しかし今回審査員をするにあたり、自分の中で
「本当にこのままでいいのだろうか?」と思い始める。
そこで書き手さんの気持ちを少しでも理解するために
自分自身もショートショートに挑戦してみようと思ったのが
今回の始まりである。
そうと決めたらすぐに開始。
なんとかみんなの作品を読み始める前(募集開始前)に
完成させることができた。
「読み始める前に完成させる」ことが
今回私の中ではとても重要だったのだ。

そしてその後、後夜祭企画として
このショートショートを投稿させていただくことになった。

正直…本当に本当に難しかった。
ショートショートを書く皆さんはやっぱりすごい。
今回実際に書いてみたことで、その難しさが身に沁みてわかった。
経験して初めてわかることだった。

私が最も苦労したのは「文字数」だった。
この企画の募集要項は、文字数800~1200文字と決まっている。
しかし最初に出来上がった私のショートショートは1400字以上‼︎‼︎
いくら最初に書いたものが大雑把とはいえ
その後の削り作業は本当に大変だった。
一度出来上がったものを削るというのはなんとも難しく
段々全ての文章が大事に思えてくるのだ。
うぅ…ツライ…。
しかし推敲した結果、1400字以上→1167字にすることができた‼︎‼︎
まぁこれでもギリギリだけど(笑)

そんなこんなで書いたショートショート。
下手だなぁと思いながらも、それでも書いている時間は
本当に楽しかった。
書き方だってどれが正解かなんて正直全然わからない。
それでもなんだかワクワクした。
ショートショートにはやっぱり不思議な魅力があるんだなぁと思う。

今回このようなきっかけで新しいことに挑戦してみたが
とてもいい経験をさせていただいたと思う。
それも全てはこの「ピリカ☆グランプリ」のお陰だ。

企画に関わってくださった全てのみなさん。
改めまして、本当にありがとうございました。
このイベントがみなさんの何か新しいことへのきっかけに
なれたとしたら、それは本当に嬉しいことです。
なんせ私自身この企画が「ショートショートに挑戦する」という
きっかけとなりましたから…ね♪

以上、「ピリカ☆グランプリ」後夜祭
ねじり編でした。

まだまだこれからメンバーみんなの
ショートショートが投稿されますので
お楽しみに〜‼︎‼︎


ではまた。

最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀