「君だったのか」
草むらから何かが
こちらを見ているのがわかった。
けれど怖くてそちらを見ることができない。
一体そこには何がいるのだろうか…
*
休日。
僕はいつもの公園に出かけた。
そこはちょっと小高い丘にある公園。
公園というよりはむしろ
「山」という方が近いかもしれない。
少しでもピクニック気分を味わいたくて
おにぎりを握って持って行く。
僕が握ったおにぎりはいつも大きくて不格好。
でもとびきり美味しいんだ。
なんせ僕のおばあちゃん手作りの
大きな梅干しを一つ、入れるから!
それに海苔だってちゃーんと巻いてるしね。
それから僕は
その不格好な美味しいおにぎりを持って
公園に出かける。
ピクニックに必須の
もちろん「ピクニックシート」も忘れずに。
このピクニックシートは僕が小さい頃から使っているものだ。
昔ながらのキャラクターが描かれてある。
このくたくたのシートは「ひらがな」で
僕の名前が書いてある年季もの。
折り曲げてあった部分は、所々擦り切れている。
でもいいんだ。これは捨てられない。
上京する時になぜか一緒に連れてきた。
なぜそうしたのかは、僕にも全くわからない。
けれどこいつとはずっと一緒にいる。
ずっと一緒に歳をとっていきたいと思っている。
恥ずかしいから他の人にはちょっと見せられない
「秘密の相棒」ってやつだ。
公園に着いたらまずはすぐに、お気に入りの場所に
自分の名前が書いてあるピクニックシートを広げる。
よし。ここなら僕らしかいないから大丈夫。
相棒よ、一緒にピクニックを楽しもう!
おにぎりは三つ作ってきた。
僕は景色を見ながらもしゃもしゃ食べる。
シートのキャラクターに時々目をやりながら
またもしゃもしゃ食べる。
そして二つ目のおにぎりを手に取ろうとしたところだった。
草むらに小さい影が見えた。
何かいる。
え、ちょっと怖い…
何だ?動物か?
ガサガサ…
ガサガサガサ…パタンッ!
ん?何か倒れたぞ?
それは今まで見たこともない
小さな「ひと」だった。
小さい。
とにかく小さいぞ、これは。
おにぎりと同じくらいか?
いや、僕のおにぎりは特大だから
それよりも小さいかもしれない。
恐らく僕の前を急いで横切ろうとしたのだろうけど
前のめりになって転んじゃった。
その小さなひとは僕を見てびっくりしていた。
そして僕のあの特大おにぎりの後ろに隠れた。
あ、やっぱりおにぎりより小さい。
僕だって正直すごくびっくりしたけれど
それよりも何よりも、なんだかすごく可愛かった。
まぁ転んだのを見てしまったせいかもしれないけど。
彼は「こびと」なのだと思う。
今まで見たことはないけど、そう思った。
そのこびとは言葉を一切話さないけれど
僕の横にちょこんと座って特大おにぎりを見ている。
こびとは僕をじっと見た後、おにぎりをもしゃもしゃと食べ始めた。
美味しいかい?
そんなに急いで食べたら危ないよ。
あ、よかったらこの飲み物もどうぞ。
それから僕とこびとはシートの上で寝っ転がった。
お互い何も話さない。
ちらっとこびとの方を見ると、既に眠っているようだった。
安心してくれたのかな?
よかった。
僕はまた空を見た。
僕はいつの間にか眠ってしまったみたいで、起きると夕方になっていた。
すぐに隣を見たけど、こびとはもういなかった。
なんだ、もう帰っちゃったか…
それとも夢?いや、わからない。
けど、とってもいい時間だったなぁ。
さて、僕も帰るか。
明日からまた仕事だー!
*
それから数日が経ったある日
僕は家のリビングにあるテーブルにうつ伏せになり
疲れてうたた寝をしていた。
そのテーブルの上にはいつもメモ帳が置いてあるのだが
起きてみるとそこには、書いた覚えのない「絵」が描かれてあった。
僕はその絵が何なのか、わかった気がした。
恐らくこれは、僕の相棒のピクニックシートに描かれてある
昔ながらのあのキャラクターだ。
うん。きっとそうだ。
ということは、もしかしてあの時のこびとが…?
辺りを見回したが、小さな影は見つからなかった。
でも事実、メモにはこうして
小さな小さな絵が存在している。
僕はものすごく嬉しかった。
あの時のことは僕の中でとても大切な思い出として残っているから。
ほんのちょっとの時間だったけれど
そこにはとても心地いい世界があったんだ。
僕はそこに「特大おにぎり」の絵を付け足してみた。
うわっ、下手な絵!
あっちの方がよっぽど上手いじゃないか。
はははっ。
「また、僕の前に現れてくれるかなぁ…」
そんな期待をして僕はまた思う。
次の休日、相棒のピクニックシートを持ってまたあの公園に出かけよう。
その時はもちろん、特大おにぎりも用意して…ね!
【おしまい】
***
今回のこびと部活動は「物語」にしてみました。
なんだか突然このお話が頭に浮かびまして。
そしてまたもやおにぎり。笑
こびと部、こんな感じでゆるくやっております~🐨
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた。
最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀