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夫と横浜で3年越しのイタリア旅行へ行く(冷静と情熱のあいだ/江國香織)

夫婦共々、江國香織さんが好きだ。

初めて読んだのは大学生の時。きらきらひかるが最初の出会いだった。
読み終わった後、胸いっぱいに広がる愛しさと苦しさを言葉に出来ず、でもどうしても共有したくて(この人ならわかってくれる、という確信があって)、当時友人だった夫に「読んでほしい」と真夜中の駅のホームできらきらひかるを渡していた。今思えば、あれは強烈なラブレターだった。

江國さんの本を読むと、自分の心がじわじわと、温かいような、それでいてどこか冷静なもので満たされていく。
江國さんの言葉に触れると、自分が喜んでいるのがわかる。
江國さんの本を読み終わると、これまで当たり前にあった身近なものたちが急に輝きを増し、愛しく見える。それを見つけられる自分になれたことがうれしくてたまらない。


「冷静と情熱のあいだ」は、夫から紹介された本だった。
江國さんと辻仁成さんが、同じ時系列で男女それぞれの立場から書いた恋愛小説。映画化もされていたが、私は見たことがなく初見だった。

二人の深い愛とすれ違う苦しさ、でもどこかでお互いを想い合いながらそれぞれの生活を紡いでいく。その先には、ずっと前に交わした約束が二人を支えていて・・・・・。

「あぁ、これは絶対好きになる」

読み始めからすぐにそう確信するだけの ”江國さんらしさ” が存分に詰め込めれた言葉たちと、一方でこれまで読んだ単独作品とは少し違った雰囲気がスパイスのように加わって、あっという間にのめり込んでいった。

Rosso(江國さんの作品タイトル)読み終わった後、すぐにBlu(辻さんの作品)も読み、私は心も体も完全に満たされていた。
自分も大恋愛を終えた後のような、抜け殻のような達成感。満ち足りた気持ち。
居ても立ってもいられず、読み終わった後すぐ夫に「30歳の誕生日、イタリアに行こう」と約束を取り付けた。(素晴らしい作品なので、気になる方はぜひ原作を!)


時は過ぎて30歳の誕生日。
世の中はコロナの真っただ中で、海外はおろか、国内でさえも旅行には行けない状況だった。次海外旅行に行けるのはいつだろうね、なんて話しながら、家でニュースを眺める日々。
その後私たちには子供も生まれ、二人で海外旅行に行くのは当面叶いそうもなく、遠い約束になった。


そんなある日、なんとなくプラネタリウムを見たいなと思って検索していると、イタリアの文字が目に飛び込んできた。

「え、イタリアだって!見に行こうよ!」
すぐに夫を誘い、二人で時間を見つけて横浜へ。

星空だから、旅行とは少し違うかな?と思いつつも、会場に入ると映画館とは違う雰囲気にとてもワクワク。
リクライニングシートをたっぷり押し下げ、上映開始前の頭上に広がるイルミネーションにすでに心は満たされていた。

待ち時間|しんしんと雪が降ってくる


イタリア星空散歩は、本当に素晴らしい時間だった。
上下左右180度の円形に広がる世界は完全に全身を包み込み、本当にその場にいるような感覚で、初めての体験に驚きと感動の連続だった。

星空だけでなく日中のイタリアを散歩する時間もあり、神殿や街並みも楽しめて、本当にイタリアに行っているような感覚になれた。

そして、津田健次郎さんの落ち着いた声がまた、とても良い。
ただ星を眺めるだけでなく、ギリシャ神話や星の解説があることで、飽きずに最後まで楽しめた。


もう当面イタリアには行けないだろうと諦めていたけど、思ってもみない形で夫とイタリアデートが出来た。
「子供がいたら夜じっくり星を眺めるのも現地では難しいだろうし、いい時間だったね。」と、今の私たちに楽しめる時間を過ごせたことが何よりうれしい。

いつかその時が来たら、二人でイタリアのドゥオーモに上りたい。
その日を迎えることが一段と楽しみになった。




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