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低速充電生活

「今、羽田に向かってます。これからしばらく××に帰ります。」
遅めのお昼休みの時間、携帯電話を開いたらLINEが来ていた。このひとからこの時間に連絡が来るのはめずらしい。
短文は飛行機の絵文字で締めくくられ、続けて「いってきまーす!」という文字の入ったキャラクターのスタンプが送られていた。
「いってらっしゃい(*´ω`*) 楽しい休暇になりますように」
わたしも短く返信する。
メッセージの主は、これから日本を離れて、遠くに住む家族のもとへ帰る。それは以前から聞いていたことだ。
なんだか寂しいな。
日本にいても、都内にいても、そんなに実際に会うことはないのだけど、物理的な距離が遠くなると思うとどうしても寂しくなってしまう。
なんにも変わらないのにね。
家族のもとへ帰るから? 楽しい、幸せな時間を過ごすであろうから?
大切に思うひとが楽しく幸せであることをよろこべないなんて。

今年の年末年始は、なんとなんと三連休である。
ふーん、というひとも多いかもしれないけれど、職業柄、年末年始の三連休というのはわたしにとってめずらしい。社会人になって初めてかも。去年も一昨年もお店は大晦日まで営業し、元旦が初売りだった。そして、そこそこ責任のある立場になるとそれらの日はもちろん出勤。その前は、たしかコロナ関連の営業規制があったような。…覚えていないものだ。

先月末から、シフト作成者には何度も伝えた。「わたし、年末年始の連休とかぜんぜんいらないので。大晦日も元旦も出勤できるので」と。クリスマスイブの日は知人の演奏会があるので休みを希望しているし、本当に本当に、年末年始は仕事を入れたかった。世の中のイベントムードがとにかく苦手で、非日常を味わいたくない。帰るところもないし、粛々と仕事をしていたい。
しかし、ふたを開けると三連休だった。31、1、2日と公休の印がついている。
「ウオズミさん、たしか去年も一昨年も出てくれたから。今年はシフトが潤ってるから大丈夫だよ」
うう、覚えてくれていた。うれしいやら悲しいやら。

というわけで、三連休、何をしよう。
帰省の予定はないし、旅行するにもお金のかかる時期なので、この際だからしっかり思う存分引きこもろう。おうち時間を楽しむのだ。
大掃除しなくちゃ…とかいう左脳のささやきは、今年は聞こえないことにしておく。いまの住まいになってからこまめに掃除しているし(自分比)、したくなったらする、というくらいのつもりでいよう。

読みたい本はたくさんあるから、暖かくしてゆっくり読書しよう。最近、また積読がたまっている。先日本を何冊かもらったし、図書館にも行って仕入れてこよう。この頃のブームは昭和のエッセイ。井上ひさし、浅田次郎、檀一雄を読んだ。

何か映画も観よう。あんまり年末を感じないものがいい。ただひたすら笑えるものとか。余韻なく(良い意味で)さらーと観られるおすすめの映画はありますか? だれか教えてください。

あとは、ぼちぼち料理してごはんを食べて、自分をととのえよう。たっぷり眠って、少しは散歩もする。年明けのギャップが過ぎないように、人ごみにも短時間は出かけようかな。きょう、インフル明けにひさしぶりに大きめの駅ビルに寄ったら、クリスマスとお正月のごった煮みたいになっていた。たしかに、端境期というか、実質24日の日曜を過ぎたらクリスマスは終わるようなものだ。早くディスプレイ変えたいよね…わかるわ…とちょっと同情。
華やかなものを見て、帰宅してごはんを作る。ごぼうと人参のきんぴら、肉豆腐、茶わん蒸し。わたしにしては豪華。

帰宅前に携帯電話を開いたら、冒頭のひとから写真が送られていた。
「離陸してすぐ、小さく富士山が見えました~」
楽しい時間が過ごせていますように。わたしは充電することにします。
イベントごとはざわざわするけど、少しの期間だから。なるべく気持ちを大きく揺さぶられないように、低速充電で過ごしてみる。

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