マガジンのカバー画像

そらのうた

64
運営しているクリエイター

#季節

春、白昼、詩

想いを風と光に乗せ
春の白昼に詩を綴る

光は屈折するもの
水が入ったグラスに着地した
誤って器に入った水が袖に飛びかかった

今は僅かな水滴のみ器に残って

光は直線に進むもの
矢のように前を突き抜ける
渇きはどこへやら濡れた衣服は乾いた

過去と決別するよう梢越しに陽を見つめて

光は虹のようなもの
星彩に青光りまで色彩豊か
忘れかけていた七色の表情が反射した

その美しさに改めて気付いて

もっとみる
既定通り春は訪れる

既定通り春は訪れる

既定通り春は訪れて
君が不在の世界でも

柔らかな風がそよぐ
髪と戯れて頬を掠める

最後の言の葉
変わらない面持ちと声の高さで
君からの「ありがとう」

刻々と針は動き
2人の思い出は
クリスタル色に染まる

既定通り春は訪れて
君が不在の世界でも

木漏れ日は揺蕩う
その円形の眩さに
記憶の君を重ねる

既定通り春が訪れるその前に
君は世界から去っていった

その事実が
ガラス色の心に響いて

もっとみる

窓から眺める桜(詩版)

窓から眺める桃色がひらひら踊った。病室のベッドで足を伸ばす私はそっと手を差し出して窓越しに春を掴む。

窮屈な日々が色褪せないのは、一年に一度、君に会えるから。年々、恰幅の良い出で立ちで私を驚かせる。

舞う桜との真反対ではドアを開ける音。君がこの小宇宙に入ってきた。今年もまた、一段と背丈が高くなったね。

「だって育ち盛りだから。」と切り返す、淡々とした君の言葉選びは嫌いじゃない。「桜が綺麗。」

もっとみる
wish

wish

「wish」
「届いて」
「境界線」

「wish」

あどけない笑顔が弾ける
今日はクリスマスイブ

君が笑うから
心がはしゃぐんだ

君のしなやかな掌が
心を撫でてくれるんだ

街を飾るイルミネーションが綺麗だね
明日の朝は何を囁き合おうかなんてね

怖くはないよ
君がいるから

弱いところは
さらけ出して

過去は幸福で
塗りたくって

未来は雪白より
綺麗になるから

君の幸せを形成する

もっとみる

驟雨の詩

君は突然 退屈に支配されていた僕の前に現れた

夏のある昼下がり
喧騒から外れた場所で出会ってしまった

突飛な行動や気まぐれな態度

振り回されていては悪くなかった
むしろそんな君だから好きだった

君と巡った夏祭り 花火の刹那は僕らの恋模様みたい

夏の終わりが訪れる前に僕は切なさを知ってしまった

出会ってしまったなんて
振られた男の強がりだ

出会えたが正解だろうな

君と巡り逢えたことが

もっとみる

季節をなぞる

もう会わないよって君は季節に溶け込む
風が吹いて思い出は動かないまま

もう会えないよって言ってくれたら
何か期待できただろうか

枯葉を避けて道を歩く
ありふれた今日がまた躊躇うことなく訪れる

じゃあねって手を振り合った
春の嵐が吹いた日も

もう少しだけそばにいてと襟元掴んだ
雷鳴轟く夏の日も

四季をなぞるように
僕らも変わってきたのにね

せめて君と冬を迎えたかった
もう叶わないのに心だ

もっとみる

木枯らし

季節が巡る
ありきたりな書き出しから綴るね

当然のように地面に降り積もる
落ち葉を見ることが堪え難いなって

約束されたように散って
木枯らしに攫われるんだね

ああ、いつから心変わりしたの
嘘をつくとき唇に触れるそのしぐさ

だから怖いんだ
秋という季節は

実りを終えたら
手を振ってバイバイ
頭を振ってバイバイ

たゆたう心の動き
不変を嫌うのはケースバイケース

変化には犠牲がつきもの

もっとみる

咲いて散って繰り返して

桜の花が咲きました

今年もひとびとの眼と心を奪います

スーツを着たサラリーマン、フェミニンな可愛い服を着た女子大生、品の良い老夫婦

みんな桜の花びらに視線を注ぎます

私も桃色のそれに心惹かれます

とこしえに愛される桜にさえ嫉妬した、高校時代のクラスメイトの女の子

君が歳を重ねる度に失うと勘違いしている若さとか美しさ

美貌の喪失に悩む君だから君は確かに綺麗なんだ

いつ

もっとみる