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散文

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エッセイ・掌編小説など。
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#tanka

これさえ読めばいい自己紹介

これさえ読めばいい自己紹介

 那須ジョンと申します。ジョン・ナッシュという名前の犬と暮らす傍らで短歌を詠んでいます。那須ジョンという筆名は犬の名前から貰いました。ちなみに犬の名前は有名な数学者から拝借しています。

 短歌は2015年12月に始めました。2020年7月までの約4年半のあいだに作った歌から358首をピックアップした記事がありますので、ご笑覧いただければ幸いです。『平行じゃない』ってタイトルです。とはいえ歌集一冊

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夏の工作:手製本で一点物の歌集づくり

夏の工作:手製本で一点物の歌集づくり

 時間が有り余ってる。
 今年はたっぷり夏休みがあるけど、出不精で県内にある実家にすら何年も帰ってないくらいだから、コロナとかは関係なくいつも通り、暇だ。
 これまでに作った短歌をまとめたばかりだし、前々から装丁と製本作業をやってみたかったし、本を一冊作れるだけの原稿を手にしている今、有り余る夏休み中の今、自分用の歌集でも作ってみるか。と思い立ったのが1週間くらい前で、つい先ほど完成しました。案外

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最後の日記 / 2017.06.06

「これは誰とした話だっけ?」みたいなことがよくある。相手が男だったか女だったかくらいは覚えているんだけど。

答えとは対岸の花 鏡台に母の秘密の、見てはならない

推敲に次ぐ推敲/ワイン

 モウカラ不動産の今号の連作『佳作みたいな虹を着ている』については、実はかなり早い段階でほぼ形になっていた。それを数ヶ月ずっと握っていたわけで、事あるごとに眺めては推敲をして、をずっとやっていた。こんなに長い期間をかけて推敲したのは初めて。推敲すればするほど良くなる、というわけではないということを再認識しつつ、しかしインターバルを取りながら読み返すことも大事だと気づけた。そして、手許にこういう大き

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空き地に人間向けの窓はない

空き地に人間向けの窓はない

 フジモトさんはどの路地にもいた。うちを出て目的地への最短ルートを進むときであろうと、進む道を適当に決める日課の散歩のときであろうと、本当にしょっちゅう、そこかしこで遭遇した。(今日はフジモトさんいなかったな)と思えるような、家から割と遠ざかったところで、背後から不意に明るい声に呼び止められる。振り返るとやはりフジモトさんだった。

 この町は死刑宣告を受けている。元々は終戦直後の混乱のなか、大陸

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母の家出

母の家出

 南東向きの窓があるリビングから、ダイニング、キッチンと続く分譲マンションの一室、リビングとダイニングの間には間仕切りとしてカップボードが置かれている。電話台はそのカップボードのすぐ裏、ダイニング側にあるので、晴天の午後二時前だというのに薄暗い。冷房のために締め切った部屋に微かに届く蝉の声がその暗がりを強調していた。
「長崎行きの高速バスに空きはあり

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次はいつ来る?

次はいつ来る?

 旅行は好きじゃない。だって方向音痴だ。自分の街ですら同行者に道先案内を委ねるのに、知らない土地だと迷子にならないように、常に気を張っていなければならない。誰かと行く旅行であれば相手への依存度が高くなり過ぎて申し訳なくなるし、一人旅では半べそをかきながら無事に帰れることだけで頭のなかをいっぱいにすることになる。そもそも計画やパッキングといった旅支度自体が億劫て

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