今、あの人に伝えたいこと
理系の化学、修士から博士課程に切り替わるときの春でした。横浜で学会があり、関西から移動して研究の発表をした後、帰り道を歩いていました。突然、あの人の背中がパッと目に飛び込みました。遠方でも人ごみの中でも、不思議なことにすぐわかる。か弱く、本当に元気のない、幸(さち)が薄いと思えるような背中でした。恐らく見間違えるはずはありません。ウォーリーを探すより、はるかに自信があります
自分は、頭が真っ白になり、踵(きびす)を返し、その場から必死に離れました。離れたところで立ち止まり、