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マインドフルネスはなぜ精神疾患を治すのに役立つのか①

読んでくださってありがとうございます。

自分は機能不全家族で育ち、精神疾患(うつ病等)で苦しんだ経験があります。
そこから心理系の本を何百冊と読み、回復することが出来ました。

今回の記事ではそんな自分が
うつ病や不安障害に効果がある『マインドフルネス』について紹介します。

自分の回復までの経験談はこちら

精神疾患を良くするのに役立つ本の紹介

マインドフルネスって何?

『マインドフルネス』は慢性疼痛、心身症、不安障害、うつ病の再発防止、トラウマの軽減などに効果があるということで、近年心理学界隈では大きな注目を浴びています。

それ以外でも、グーグルなどの企業で集中力アップや社員のメンタルヘルス向上を狙って、企業研修に取り入れたりと話題になっていますね。

今回は精神疾患を良くするのに、なぜマインドフルネスが役立つのかに焦点を当てて、紹介したいと思います。

『マインドフルネス』はジョン・カバットジンが瞑想とヨーガを基本とした治療法、『マインドフルネスストレス低減法』を創始したのが始まりです。

瞑想とヨーガ?
宗教っぽくて胡散臭いって思っている人もいるかと思います。

それもそのはず、元々の始まりは仏教です。
仏教を宗教としてではなく人間の悩みを解決するための精神科学としてとらえ、医療に取り入れました。

マインドフルネスは宗教色を無くし、健康に役立つ部分を科学的に抽出したようなものですね。

マインドフルネスは説明が難しいのですが、
自分の「今・ここ」の体験に気づきを向け、それらを判断したり評価することなく、そのまま眺めたり受け止めたりすることです。

①今の瞬間の現実に常に気付きを向け
②その現実をあるがままに知覚する
③その現実に対する思考や感情に囚われない心のありよう

マインドフルネスは
”思考する自己”とは別のもので
観察する自己”とも呼ばれます。

言葉で説明するのはかなり難しいです。
「Don't Think. Feel!(考えるな、感じろ!)」に近いですね。
思考して得られるものではなく、
五感を研ぎ澄ませて体感するものです。

トップダウンではなく、ボトムアップです。

なぜマインドフルネスはメンタルヘルス向上に役立つのか

瞑想などを行うことで、心を"今"に向けたマインドフルネスの状態に到達することが出来るのですが、マインドフルネスの状態になることによって得られる効能をご紹介します。

それぞれの項目は独立しているわけではなくつながってます。

①苦しんでいる状態に気付くことが出来る

辛く苦しい思いをしている時、苦しいことはわかっても、その感情があまりに大きく自分が何で苦しんでいるのかがわからないことはよくあります。

そういった状態から抜け出すきっかけはまず「気づく」ことが大事です。
気付くことが出来ないと対策出来ません。

何がストレスの原因になっているのか
どんな自動思考がでてきて
どんな感情が生まれて
体がどんな状態か
それに対してどんな行動をとっているのか

マインドフルネスというのは、「今、ここ」の体験から生まれる感覚を、大切にできるようになることです。

マインドフルネスの状態になることを普段から練習すると、自分の状態を把握することが上手くなります。
観察する自分が育っていくようなイメージです。

ちなみに自分のストレス状況を把握することをセルフモニタリングといいます。

セルフモニタリングの紹介はこちら

②後悔や反省、心配事や不安などの思考から抜け出せる

人は生まれつき思考する生き物です。
人は無意識のうちに絶えず何かしらを考えていると思います。

思考は、いい面もあれば悪い面もあります。
今回はその悪い面に注目したいと思います。

うつ病の人は寝たきり状態で休んでいるように見えて、人間特有の”思考”が原因で休むことが出来ません。

自分がいかにダメな人間か、あの時ああしておけばよかったなどぐるぐる考え、一人反省会を絶えず行っています。
このぐるぐる思考を反芻思考といいます。

反芻思考の例

・なんであんなことを言ってしまったんだろう
・あの人に嫌われてしまっていたらどうしよう
・目標が達成できない私はダメな人間だ
・なぜあんな行動をしてしまったのだろう

人は考えることで答えを導きだそうとする癖があります。
しかし、過去の失敗はどんなに考えても結果は変わらないです。
結果が変わらないことも分かっているのに、過去の失敗についていつまでも考えてしまい、気持ちがどんどん落ち込んでしまいます。

不幸感から抜け出す方法を頭で考えることによって不幸感を取り除こうとすることは、落ち込んでいく悪循環から解放されるどころではなく、悲しい気分を強めて長引かせることになります

また人は、過去や未来のことを考えて不安になります。

失敗して大勢の前で恥をかいたらどうしよう…
お金が全くなくなったらどうしよう…
クビにされたらどうしよう…
ドアのカギをちゃんと閉めたかな…
今日眠れなかったらどうしよう…
パニック発作が起きたらどうしよう…

これは人間が思考する生き物ゆえに感じるストレスです。
まだ起こっていない出来事を考えて、それが起きてしまったのと同等かそれ以上に気分が悪くなります。

自分の思考が現実そのものだと思ってしまう。
(心理学で認知的フュージョンといいます。)

マインドフルネスの状態では思考が自分とべったり融合しているところ(認知的フュージョン)から脱却し、自分の思考を外から眺めるように距離を取れるようになります。

③自分の感情に気付くことが出来る

精神疾患になった人の中には育った家庭環境などが影響し、自分の感情を押さえざるをえなかった人も多くいます。

悲しくて泣いていたら「男だろ泣くんじゃねえ」と怒鳴られる。
親に強く主張したり、怒ったら無視される。
自分が楽しい思いをしていたら、親に「あんたは気楽そうでいいね」と言われる。

このような家庭環境で育つと、自分の感情を押さえつけて育つのも無理もないです。感情の蓋を押さえつけることが生きる唯一の道だったのです。

また、社会の価値観にもこのようなものはあふれています。

皆辛い思いをして仕事しているんだから、私だけ辛いと言ってはいけない。
ネガティブな人は嫌われる。楽しんでいるように見せないといけない。

このような社会では、自分の辛いという感情を無視して理性で自分を奮い立たせるようになるのもしょうがないと思います。

しかし人間はロボットではありません。
頑張って理性で奮い立たせて感情を無視しても、いつかは限界がきます。

感情を押さえつけたままにすると、身体的精神的に異常をきたします。
その結果の一つが精神疾患だと自分は思ってます。

お笑い芸人のクロちゃんが最近、『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由』という本を出しましたが、あれだけ自分の感情に素直で欲望を吐き出してる人間が病むわけないだろって思ってます(笑)

ネガティブな感情は悪いと捉えがちですが、感情にはいいも悪いもありません。それぞれの感情には意味があります。

悲しみは何か大事なものを失ったことを知らせてくれます。
怒りは不当な扱いや理不尽な言動にさらされたことを知らせてくれ、自分を守ることに繋がります。

進化の過程で必要なものだからこそ、このような感情は残ってます。

ちゃらんぽらんな前向き人間は、進化の過程で淘汰されたと思います。
手元に食べ物が無くても不安に思わなかった人や、人から食べ物を奪われても怒りを感じなかった人は餓死したと思います(笑)

マインドフルネスの状態を学ぶと、身体の変化から感情が沸き立ったことに気付けるようになります。逆に、感情から身体が変化していることにも気付くことが出来るようになります。

一つ悲しみで例をあげます。
・瞼が重く感じる
・胸がうずく
・肩を落とす
・目が潤む、涙が出る
・胃のあたりが痛く感じる
・全身が重く感じる

感情に気付けるようになることは、人間らしい自分を取り戻す、回復の一歩だと思います。

④感情を感じ尽くすことを助ける

人は悲しみや怒りや不安などネガティブな感情を避けようとします。
当然自分もそうです。

嫌な感情から逃れる為に、やけ食いしたり、お酒を飲んだり、爆音で音楽を聞いたり、自分のキャパを超えて仕事にのめりこんだり、ゲームにのめりこんだり、リストカットしたり、ODしたりします。

一時的に気がまぎれ、その感情から抜け出せるかもしれません。

しかし、ネガティブな感情は避けることで消えることはありません。
かえってその感情はどんどん大きくなることもあります。

じゃあ、その嫌な感情を消し去るにはどうするか。
これはその感情を感じ尽くす以外にないです。

避けるのではなく、受容する。受け入れる。
とーっても嫌ですね(笑)自分もそうです。
辛い感情なんてできれば向き合いたくない。

ただ、感情というのは、自分がその感情に居場所を作ってやって、そばにあることを許してやれば、長いことずーっと続くことはありません。

これは楽しいといった感情も、悲しいといった感情も同様です。

悲しさや怒りを人と共有して楽になった経験はどんな人でもあるかと思います。これはその感情を感じ尽くした結果ともいえます。

ハリーポッターと謎のプリンスで、ダンブルドアが「この水を飲み干すまでワシが何を言っても無理やりのませてくれ」と言い、黒い水を飲まされていたシーンがありましたが、あのシーンと嫌な感情を受け入れることは似ているなと感じます。

マインドフルネスの状態は、「今・ここ」に注意を向けることで、感情の波に襲われた時、海の底に沈める錨のような役割を果たしてくれます。

嫌な感情の為に心の中に居場所を作ってやって、過ぎ去るまでそこにいるのを許してあげる。波がおさまるのを待つような感じですかね。

とはいえ、ネガティブな感情の大きな波に襲われている時は、マインドフルネスの状態になることを忘れてしまうんですけど(笑)

この感情を受け入れるというのは、不安障害やトラウマなどの治療法にも使われる暴露法(エクスポージャー法)に近いです。

「することモード」「あることモード」

「自分の体験に気づいて反応を止めることによって、いつものパターンから抜けること」がマインドフルネスの狙いです。

たとえば嫌な出来事があった時、「こういうときに自分は、つい自分を責めちゃうんだよな。自分の悪いところを見つけて、自分が駄目な証拠探しをしちゃうんだよな」と気づく。気づくことでいつものパターンを止めることができます。

上記のような気づきが出来るマインドフルネスの状態を「あることモード」といいます。
それに対して私たちが普段生活の中で使っているのは「することモード」(問題解決モード)です。

「することモード」の特徴
・目標志向または問題解決志向で
 思考を通して取り組む
・しばしば自動的
・過去と未来に注意を向ける
・不快な体験を回避しようとする
・現状を変えようとすることに集中する

「あることモード」の特徴
・直接的に体験を感知する
・意識的な気づきと選択と
 ともに生きる
・現在の瞬間に存在する
・不快な体験に関心を持って接近する
・物事をあるがまま受け入れる
「マインドフルネス認知療法ワークブック」から

いろんなものを生産するためには思考しないといけない。
過去と未来を見通さなければならない。
そうすることにより私たちは様々なものを生み出しています。
「することモード」は私たちが生きていくためには必要です。

でもそれだけでは、
気付かぬうちに思考の罠にハマって疲弊します。

「あることモード」にも意識的に戻れるようにしましょう、2つのモードを自分で選べるようになりましょう、というのがマインドフルネスが目指しているものになります。

今回は以上となります。
次回はマインドフルネスを習得する為の瞑想法などを紹介したいと思います。

次回の話はこちら

長い文章を読んでいただき、誠にありがとうございました。



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