【展覧会レポ】ISSEY MIYAKE GINZA/445"CUBE"「IM MEN<FULFILL>」
【約3,300文字、写真約35枚】
イッセイミヤケ銀座店/445の1階「CUBE」で開催された「IM MEN<FULFILL>」を鑑賞しました。その感想を書きます。
※本展覧会はすでに終了しています。
【この投稿で伝えたいこと】
❶銀座に行ったらイッセイミヤケの「CUBE」に寄るべし、❷ブランドコンセプトの「一枚の布」が分かりやすく理解できる、❸サステナブルな取り組みだが、それを前面に出さない潔さがステキ、❹イッセイミヤケファンだけでなく、一般の人にもおすすめな展覧会です!
▶︎訪問のきっかけ
訪問のきっかけは、偶然「X」でこの展覧会について知ったためです。3月から開催しているにもかかわらず、知ったのは5月後半のほぼ終了間際でした。展示室の様子が大変興味深かったことに加え、「CUBE」に行ったことがなかったため、訪問することにしました。
▶︎アクセス
ISSEY MIYAKE GINZA/445「CUBE」へは、銀座駅から徒歩約5分。ミニシアターのシネスイッチ横にあります。
▶︎ISSEY MIYAKE GINZA/445「CUBE」とは
銀座には、旗艦店が2つあります。ISSEY MIYAKE GINZA / 442(住所:銀座4-4-2)は、4つのフロアにわたり、イッセイ ミヤケの計10ブランドが販売されています。ISSEY MIYAKE GINZA / 445(住所:銀座4-4-5)は計3ブランドを展開。1階が展示スペース「CUBE」、2階がショップです。
本展覧会は、大阪のISSEY MIYAKE SEMBAのCREATION SPACE(南船場4-11-28)でも同じ内容が実施されていたようです。
▶︎IM MEN「FULFILL」感想
展覧会は計6つのセクションに分かれています。それぞれで1つのアイテムの制作プロセスを、実物やミニチュア、動画を使って説明しています。
コンパクトな規模ながらも、全体的にとても示唆に富んだ内容でした。ブランドコンセプト、企業の服作りの哲学を展示を通して分かりやすく示している点は、他のアパレルブランドも参考にすべき情報発信だと思います。
伝える相手が一般消費者、イッセイミヤケのファンなら、今回の展示内容くらいが一番分かりやすく刺さると思いました。
イッセイミヤケは、1973年のパリ・コレクションに初めて参加しました。その際、インドのサリーや日本の着物などから着想を得て「一枚の布」を身にまとうことで完成する衣服およびそのコンセプトを発表しました。
「一枚の布」=素材を可能な限り無駄にしない姿勢。そこから分かるように、イッセイミヤケの服作りは、ブランドの考え方そのものがサステナブルです。付け焼き刃で「サステナブルっぽい取り組み」をしている企業とは一線を画していると感じました。
環境に配慮したビジネスをしようとすれば、何もしないことが最も効果的です。しかし、お客様に役立つ商品やサービスを提供する上でそうはいきません。ポイントは、主軸の事業を通して、どのように地球環境や社会に貢献できるかだと私は思います。
イッセイミヤケのチャレンジは「一枚の布」、すなわち「残布を残さない」ことでした。ブランドの軸がしっかりしており、それが結果的に地球環境に配慮されている好事例だと思いました。
さらに、私が展示を通して最も印象に残った点は「サステナブル」「持続可能」「SDGs」などの上っ面なコトバを使っていないことです。イッセイミヤケ側は意識して、そのようなコトバを書かなかったのだと推測します。
「SDGsバッジがamazonで販売されている国は日本だけ」と聞いたことがあります。ビジネスを行う上で「SDGs」の考え方は当たり前すぎて、それを胸にドヤ顔で付けている会社役員やサラリーマンを見ると「恥ずかしくないのかな?」と私は思ってしまいます。
島精機製作所が得意とするホールガーメント技術も、考え方はイッセイミヤケの「一枚の布」と似ていると思いました。
✔️01:INSIDE OUT
残布を出さないことに加え、穴を開けずに一枚の布から服を作ります。計算された特殊な切り方で4分割し、それぞれのパーツを回転させることで、布を捨てることなく、首を通す穴を開けることができました。
✔️02:STRINGS
紐で縛ることで、生地を手繰り寄せます。それにより、生地を切ることなく、コートの形を美しく作ることができました。
✔️03:COLOR STORM
生地を作るチャレンジ(?)にフォーカスした取り組みのようです。縦6色、横2色の糸を使い、軽いふっくらした2m近い生地を作ります。その長方形の生地をどこも無駄にしないで、コートが完成しました。
✔️04:BUILD
1枚の布に3本の切れ込みを入れただけで、袖と身頃を作ることができました。折り紙のように、1枚の布の可能性を端的に理解できるアイテムです。
✔️05:DUO
ポリエステルと綿が分離されている素材を使います。1枚の生地を無駄にせずに、加工と絡めてフォルムを作り、ボトムスだって作れちゃいます。
✔️06:NAROWS
1枚の布を残さずに、ダーツとタックを使って、ワンピースのフォルムを作ります。
本展覧会は想定以上の人気だったため、5月28日に計画していた終了予定を、31日まで延長したそうです。
館内の6つのセクションにそれぞれ数分間の動画で、作り手の思いが語られていました。この説明が分かりやすく、参考になりました。HPでは、会場の写真に加え、この動画も公開すべきです。良い取り組みをしているにもかかわらず、会場に来た人しか見られないのは、あまりにももったいないです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?イッセイミヤケの「一枚の布」というコンセプトが端的に理解できる素晴らしい取り組みでした。他のアパレル企業も見習う部分が多かったと思います。また「サステナブル」「SDGs」といった言葉を1回も使わなかった点も好感度が高かったです。
イッセイミヤケファンだけでなく、アパレル関係者にもおすすめの展覧会でした。とても良い取り組みだと思うため、是非HPなどを使って動画付きでアーカイブを残すべきだと思います!
▶︎今日の美術館飯
▶︎おまけ
私がもっているイッセイミヤケのアイテムは腕時計です。「腕時計が欲しい」と思い、文字盤がシンプルで見やすいものを探した結果、これに行き着きました。どんな格好にも合うので重宝しています(最近は、apple watchを常用しているため出番が少ないですが…)。