【人事ノウハウ】シンプルで小さなことからがいい。組織開発のすゝめ
こんにちは、こんばんは、ごきげんよう!
フリーランス人事の清水奈央(しみず なお)です。
最近はようやく気温も秋らしくなってきて(とはいえまだまだ信じられないくらい暑い日もありますが💦)、髪を秋色に染めたり実家の夕暮れに秋を感じたりしています!
早いもので、人事ノウハウの連載も3回目となりました。
「人事」と一言で言っても様々な領域があり、それぞれで課題はたくさんあります。さらに言えば、企業の大きさやカルチャーによっても少しずつ発生する課題は違ってくるので、なかなか網羅的にお伝えするのは難しいのですが、このnoteが少しでも思考の助けになればうれしいです!
今回のテーマは、ずばり「組織開発」です。
とてつもなく広く深いテーマですね。
皆さんも、人事としてだけでなく組織で働く一員として、組織課題を目の当たりにすることってあるのではないでしょうか?
なんとなく課題は見えるけど自分に何ができるのかわからない、そもそも課題の末端しかキャッチできておらず、何を根本解決するべきなのか見えない、そんな感覚の方もいらっしゃるかと思います。
今回のnoteでは、組織開発という大きいテーマを身近なコミュニケーションや意外とシンプルなアプローチでまずは解き明かしてみよう、という気持ちで書いてみました。
このnoteを通して、「あ、これも組織開発なのか。取り掛れそうだぞ!」という気持ちになっていただけたらうれしいです。
組織開発とは、個の能力を最大限組織の成長に活かすためにある
今、「組織開発」に関心が高まっていると感じています。
フリーランス人事としてご相談をいただくことも多いですし、組織開発のためのコンサルやシステムなどを主要サービスとして市場で活躍する企業も増えました。
それだけビジネスにおいて関心の高い組織開発というテーマですが、そもそも組織開発っていったい何なのでしょうか?
私は、組織開発とは「個の能力を最大限組織の成長に活かすためにあるもの」だと考えています。
どんなに個としてスキルフルでタフな人材が集まっていても、不思議とチームとしては機能しない、ということも往々にしてあります。
その原因は様々ですが、個の能力を超えてチームとして最大化できるように試行錯誤するのが組織開発だと思うのです。
また、組織開発が十分に機能し優秀なマネージャーが伸び伸びと組織に向き合えていると、優秀なメンバーをチームに引き入れ続けることと並行して、どんなスキルの人がチームに入っても成果が上がり続ける状態を再現性を持って作ることができたりします。
そんな場面を、私もたくさん見てきました。
前回のnoteでは、採用という仲間集めの話をしましたが、組織開発でチームを最大化させて新たな仲間を待ち受けることができれば、様々な問題も乗り越えながら適切に増え、壁を乗り越えていく組織を作ることができます。
そのために、組織開発はあるんじゃないかと私は考えています。
組織開発は「打ち手」より「組織状態の把握」が肝心
想像してみてください。
組織開発、と聞いて最初になにが思い浮かびますか?
組織開発に注力することになった時、まず最初に思い浮かぶアイディアって、どんなものでしょうか?
例えばよくあるのが、「制度を変えよう!(作ろう!)」という動きだったりします。
組織全体を横にも縦にも貫く会社としての制度がもっと整えば、全体に対して迅速かつ効果的に良い変化をもたらせるような気がしますよね。
でも、本当にそうでしょうか?
組織開発の目的=会社が目指すビジョンの達成のために、個人も組織も同じ方向を向いて能力を発揮できる状態になる、ということは、なんとなく皆さん同じ認識なのではないかなと思います。
でも「制度改革」などと大きく旗を掲げる前に、小さくやれることはたくさんある、というお話も紹介したいと思うのです。
例えば、組織開発に注力しよう!→「制度を変えよう!(作ろう!)」というアイディアの流れは、様々な課題を多角的に観察し、議論し、その結果として制度改革に行き着くのであれば良いと思います。
ただ何をするかという打ち手の前に、現状の組織で何がおきているのか?どういう状態になるのが自分たちの組織にとってベターなのか?をしっかり把握する必要があると私は考えています。
組織制度の変更という打ち手に最初から飛びつきすぎず、まずは「問題発見」「理想状態の定義」から、という順番です。
なので、組織の状態を正しく「知る」ことが大事になってきます。
私のおすすめは、
①組織図を整理すること(=レポートラインとロールを整理すること)
②上記の組織図に則って定期的な1on1を実施すること
└1on1はできれば業務内容の話ではなく、メンバーがどういう状態(心身の健康、個人の人生の目標、今感じている不安など)を把握することを目的とするイメージです。
この2点をしっかり組織開発の土台として実施することです。
①なぜ組織図を整理するのが大事なのか?
例えば、チームメンバーが10人くらいになってくると、それはもう個人の集まりというより「組織」と言って遜色ない状態になってくると思います。
個から組織になったとき、それぞれのメンバーの成長に誰が責任を持つのか?というレポートラインを組織で決めておかないと、コミュニケーションや問題の所在が複雑化して誰も全容を把握出来ていない、という状態になってきてしまいます。
ここで発生する大きな課題は、問題がおきた時に誰に相談していいかメンバーもマネージャーもわからない、というカオス状態。
こうなってしまうと、メンバーの責任を誰が持つのか?も曖昧になってしまいます。
組織がこのカオス状態に突入すると、なにか問題が起きても表面化してくるのに時間がかかりますし、さらに問題解決が進まないうちに「気づいたらメンバーがめちゃくちゃストレス抱えてるかも…?」「あれ、休職するメンバーが出てしまった…」という悲しいことが起こりだします。
組織図を整理するうえで大事なのは、自分の上長(何かあった時に相談する人)は誰なのか?ということがメンバーにとって明確であること。
そして、組織図上の上長に相談するのが難しい場合や、どうしても解決できなかった時、次に誰に相談すべきか?を組織のメンバー全員が共通認識を取れている状態にしておくことです。
なので組織図は基本オープンにしておくとより良いですし、上長やさらに上の統括の人はいつでも相談してね!というオープンなスタンスを示しておくことが大事になります。
実は私も、そもそも上長のそのまた上長に相談していいという認識が全くなく、問題を長く自分の手元に置いておいてしまった経験があります。
後々「上長が難しいと感じたならすぐに相談してくれてよかったのに!」と言ってもらえて、「そうか、相談してよかったんだ…!」と目からうろこが落ちました。
このように、上長はいつでも相談してOK!難しいと感じたらその上にエスカレーションしてもOK!と思っていてもメンバーにはその選択肢が思い浮かばない、というズレはお互いの立場上発生しやすいので、ここは上長の立場にある方々がスタンスを定期的に示すのがおすすめです。
もちろん、同じチームである上長に相談しにくい内容に対しては人事が相談役として入るのも良いのですが、それはできれば最終手段がいいと私は思っています。
ここが組織の難しいところですが、発展途上の組織であればあるほど、あくまでその組織やチームで起きた課題は人事という他部署からの強制的な解決ではなく、チームの成長責任を持つ人たちの中で解決しないと、組織としては強くならないからです。
もちろん人事として問題の把握や、解決のサポートはしてもいいと思うのですが、あくまで「事業部が解決する手助け」というスタンスの方が良いと経験上感じています。
ここからは少しプラスαな話ですが、現状の組織図を整理して共通認識をとることにプラスしておすすめなのは、少し先の未来の組織図を作っておくことです。
・3ヶ月後ここにAさんをリーダーとして配置したい、メンバーは誰が良いかな?
・半年後にBさんが産休に入るからこのポジションが空くな、異動か採用かどうしようか
・1年後にはこの組織もセールスが30名を超える。アシスタントポジションを正式に作ろう!
などなど。
「こんなビジョンを達成したい!」というエモい未来を作るのも大事ですが、未来の組織図を3ヶ月程度のスパンで想定しておくと、今の組織との差分、メンバーの成長との差分、整えていきたい部分への差分、この辺りが見えてくるため、定量的に想定と修正を繰り返すことができるので一つのPDCAサイクルができていきます。
組織の人を定量的に可視化するのが組織図。
組織図を整理してみると、意外と取り組むべき組織課題がわかったりするので、組織開発の第一歩目としてとてもおすすめです。
②レポートラインと定期的な1on1をしよう
「組織開発」と銘打ってわかりやすい打ち手に飛びついてしまう前に、しっかり課題を知り理想状態を定義しよう、というお話をしてきました。
組織を定量的に可視化するのが組織図の整理だとしたら、定性的な部分を把握し、紐解いていくのが1on1という手段です。
1on1、絶対やった方がいいです!
少なくとも、私は今までマネージャーとしても人事としても、1on1で気づけた重要なことがたくさんあったと感じています。
おすすめの1on1実施方法はこんな感じです↓
1on1実施方法① 頻度は1~2週に1回
月1回だと前回の内容を忘れてしまったり実施自体が形骸化しやすいため、毎週、または隔週の実施がおすすめです。
1on1実施方法② アジェンダはあえて決めず、話の主導権はメンバーに委ねる
できればお散歩している時のように、リラックスして好きなことを話してもらうのが一番よいです。一番本音が出せるような環境設定を用意してあげるイメージで、アジェンダもメンバーに委ねるようにしていました。
とはいえなかなか本音が出てこないこともあるので、質問のレパートリーも持っておくようにしていました。
【質問例】
・入社して○○くらい経ったけど、なにか困っていることはない?
・やっていて「これは楽しいな〜」って感じる業務はある?逆に苦手なことってある?
・社内(外)でやってみたいことある?
・休みの日に休めてる?楽しかったことがあれば、ぜひ教えて!
・チームメンバーで気になる(元気ないな、とか)メンバーがいたら良ければ教えてもらえるかな?
・前言っていた◯◯ってどうだった?
1on1実施方法③ 1on1で話した内容のログを残す
こちらはもちろん、メンバーには見えない形で、ですが話して終わりではなく文字でログを残すようにしています。
丁寧にログを残すことで、後々評価期間など別の振り返りタイミングで見返してメンバーの成長やたどった軌跡も見えてくるのでおすすめです。(もちろん、1on1は評価に関係ない場として設定するのであくまで振り返り材料として、になります)
そして、実はログをつけていると文字でメンバーのアウトプットが可視化されるので、「このワード、他のメンバーも言っていたな」など発見もあったりします。組織課題は、意外とこういった小さい発見の積み重ねの中ではっきりしていくこともあるので、面倒に思えますが文字で残すだけで得るものが大きかったりします。
ちなみに、ログはこんな感じで残していました。
【1on1ログ例】
●月◎日 ○○さん
・コンディション:good/soso/bad
・メモ:うまくいっていること、課題、次回までの宿題(本人・上長どちらも)があれば記載
1on1実施方法④ 1on1の冒頭と締めは、感謝を伝える
「いつもありがとうね〜!」「あれめっちゃよかったね!見てたよ〜」などのアイスブレイクがあると、1on1として質の高い時間を過ごせるなぁと感じています。
1on1に慣れていないメンバーや、立場の違いを敏感に気にするメンバーもいる中で、1on1という場は「これから説教されそうだぞ…」と思わせてしまうと1on1したくないという感情を呼び起こしてしまいますし、トラウマにもなります。
終わる時も「話してくれてありがとうね、また何かあったら言ってね、応援してるよ〜」など感謝や応援で終わることができれば、積み重ねていくうちネガティブなことを言っても否定されない、本音を伝えた方がチームや自分にとってプラスになる、そんな1on1の場を作り出すことができると感じています。
このように、ラフに簡単に、まずは1on1という文化を浸透させていくことが組織の土台を作ります。
ただ、逆効果になりやすい1on1もあります。
こんな1on1になっていないかぜひ、確認してほしいと思います。
NG1on1① 業務のことだけを話す1on1
これは、1on1ではなく定例のミーティングで実施しましょう。
業務の話は計画から振り返りまで、おそらく緊張感をもって頻度高く話していると思うので、1on1という心理的なケアが大事な場とは意図的にしっかり線引きしていく必要があります。
1on1が業務ミーティングの延長戦となってしまうと、本当に実施したい組織の地固めとしての機能を果たさなくなってしまいます。
NG1on1② 上長が話したいことを一方的に伝える1on1
上長が質問を準備することは前述のとおりOKです。
自分から話すことに抵抗があるタイプのメンバーも、慣れておらずアジェンダをうまく用意できない場合もあるので、上長の質問力はもちろん大事。
ですが、一番大事なのはメンバーに「この時間はあなたが気持ちよく組織で働くための時間だから、まずは話したいことや相談したいことがあれば何でも話していいんだよ」というメッセージがしっかり伝わることが大事。
オープンに話せる場を上長が設定できていればいるほど、耳が痛くなる話も出てきてしまうかもしれないですが、そういう場を用意できたとプラスに受け止めまずは耳を傾けることが必要です。
NG1on1③ 社内のオープンな場所で実施される1on1
ついつい話の内容がほかの人にも聞こえてしまいそうな場所で実施してしまいがちですが、できるだけ会議室を抑えたり、もっと言えば社外のカフェなどで実施してほしいなと思います。
「周りに聞かれそう…」と思うと、本音や相談ごとってなかなか出てこないですよね。
1on1の重要度を上長側も高く認識し、会議室を抑えたり時には気分を変えて社外に出る労力を惜しまないことが大切です。
組織開発は、課題発見のための素地を作るところから始めよう
組織開発として、分かりやすい打ち手に取り組む前に課題を組織から拾い上げることが大事、というお話をしてきました。
おそらく、組織図を整理し共通認識をとり、1on1を3ヶ月くらい継続していくと、
・みんな評価に不満があるんだな
・あそこのチームはメンバーとリーダーが対立してるな
・新しいメンバーが急に増えたから相互理解が全然進んでないんだな
など、机上の空論ではなく血の通った課題が見えてくると思います。
そう、組織って生きているから、良い時も悪い時もあって、とっても生々しいんです。笑
逆に組織から拾い上げずに一方的に打ち手ありきで施策を進めると、組織の感情としてはいわゆる「施策を押し付けられた感」を違和感として覚えてしまうことになりかねません。
「何か施策は進んでいるようだけど、私が感じている不安とは絶妙にずれた施策が意気揚々と進んでいるぞ…。」「この施策にコミットしろって言われても、全力で取り組めないよ…」みたいな感じですね。
この違和感を感じさせてしまっている状態は、私も人事施策を進める上で何度もぶつかってきました。
今思えば、そりゃ反発されるよな…という反省もたくさんあります。
適切なレポートラインで定期的にメンバーとコミュニケーションを取る施策がどの組織でも、またどの階層でもできていれば、メンバーから見ても自分の意見が尊重され、相談しても大丈夫、という安心感につながっていきます。
これが、組織開発をシンプル思考した時に見えてくる一丁目一番地の「打ち手」なのではないかと思います。
補足ですが、組織開発で言われがちな「組織エンゲージメントをあげたい!」という目標も、実は何か革新的な施策を新しく導入することより
・相談できる組織だとメンバーが認識できている
・誰にどんな順番で相談したらいいのか、数段構えで組織が話を聞く準備ができていると認識できている
・メンバーの話をしっかり聞いてくれている
という状態を作り出すことが結局エンゲージメント向上の一番の近道だった、ということもよくあります。
組織図整理と1on1実施は、意外と侮れない組織開発の第一歩なので、ぜひ取り組んでみていただきたいなと思っています!
フリーランス人事として組織図整備や1on1ノウハウもお伝えしているので、各社の課題に合わせて壁打ちすることも可能です。
いつでもお気兼ねなくご連絡ください!
【ご依頼方法】
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今月は長くなってしまった気もしますが、この辺で!
また来月〜!