【人事ノウハウ】漫画『葬送のフリーレン』に学ぶ、本質的な仲間集めを実現するコンピテンシー面接のすすめ
こんにちは、こんばんは、ごきげんよう!
フリーランス人事の清水奈央(しみず なお)です。
前回、人事ノウハウとして採用戦略の要であるKPI戦略についてnoteを書きました。
じわじわと読んでいただけているようで、64個もスキをいただけてうれしい限りです。(2024年10月現在)
日々シビアに数を追う人事の皆さんや営業職の皆様、ぜひこちらの記事も読んでいただけると嬉しいです。
さて、私生活ではダンスのナンバーに出演したりおいしいものを食べたり、人生を満喫している私ですが、フリーランス人事としても楽しくお仕事をしています。
今回のnoteでは、前回に引き続き「人事ノウハウ」として採用面接の考え方を私なりにお伝えしたいと思います。
人事として採用面接の最前線に出ている方はもちろん、事業部として採用面接に出る方、転職のため面接準備をされている方にも広く知っていただけたら嬉しいな、という内容になっています。
面接は何のために行うのか?
さて、企業成長にとって欠かせない採用活動ですが、面接は一体何のために行うのか?というテーマから考えていきたいと思います。
いろいろな考え方がありますが、採用とはつまり「仲間集め」です。
私は葬送のフリーレンという漫画が大好きなのですが(アニメ二期制作決定に歓喜してるのは私だけではないはず!)、物語が進むにつれて段々と仲間が増えていく時、「パーティーに誰を入れるか?」について物語のスポットライトが当たる瞬間が多々あります。
この仲間集めがつまり採用活動で、それを判断していく方法が面接になります。
ただ、面接がジャッジ(判断)によりすぎてしまうと、それは仲間集め(採用)にはならないんですよね。
ここが、面接の難しさだと思います。
面接を受ける方が「判断されてるな」と感じる一方通行なコミュニケーションは、どうしても「このパーティに入りたい!」という感情とは真逆の感情を与えるので、もちろん見極めはしつつも「仲間になりたい」と、そう思える設計にして面接を実施する必要があると考えています。
そこで、今回はジャッジとファン作りの2本を軸に面接を紐解いていきたいと思います。
採用面接のポイント3選
採用面接では、主に3つの観点から候補者と企業の相性を見ていきます。
①スキル
②ビジョン
③価値観(バリュー)
いわゆる「スキルジャッジ」「ビジョンマッチ」「カルチャーマッチ」という採用の現場でよく聞くワードに置き換えて考えていただくと、まずはイメージがつきやすいかもしれません。(厳密には違うのですが…それはこれから説明していきます!)
そして、この評価項目の優先順位は「①スキル<②ビジョン<③価値観(バリュー)」で覚えていただきたいと思っています。
詳しく解説していきましょう。
①スキルマッチ=候補者の持つスキルと、企業が求めるスキルがマッチするかどうか
3つの項目のうち、一番わかりやすいのがこのスキルマッチなのではないでしょうか?
言わずもがなですが、特に中途採用においてはそれまでの経験や持ち合わせているスキルを総合的に確認し、お任せしたいポジションで求める力を発揮してくれるか、が大事になってきます。
まずは、会社がどんな職種を求めているか?
営業、エンジニア、マーケターなど職種ごとに整理することが大切です。
そしてその整理された職種では、どんなレベルを求めたいのか?何ができていれば合格なのか?この言語化をまず企業側がしておく必要があります。
いわゆるペルソナ作りですね。
『葬送のフリーレン』で考えてみましょう。
私たちのパーティは一級魔法使いを求めているのか、三級魔法使いでも十分活躍できるのかで、仲間集めの際聞く項目は大分変わってくると思いませんか?
「うちにはもうフリーレンも1級レベルのフェルンもいるから、スキルはそんなに必要ないな。」
「その代わり長期的に育ってくれそうなポテンシャルが必要だな」
「いや、そもそも魔法使いってすぐに必要?今本当に必要なのって僧侶なんじゃ?」
などなど、考えられることはいくらでもあります。
しかし、意外と採用にかかわるみんながこの視点に気づいておらず、だれにでも毎回一級魔法使いを採るようなレベルで質問してしまったりすることが実際の採用現場では起きがちです。
どんなレベルのスキルが必要か、意外とちゃんと議論されていないことに気づき、しっかり議論してみてほしいと思います。
そして、そのスキルが正しく聞けるような質問項目、対象もきちんと設計すべきです。
仮に一級レベル魔法使いに聞くようなレベルの質問を、ポテンシャル採用を目指して面接設定した三級魔法使いにしたらどうなるでしょうか?
三級魔法使いからしたら、めちゃくちゃ威圧感を感じる面接体験になってしまいそうですよね…。
また、完全に前職と同じ仕事内容で転職して来る方はほとんどいないので、スキルの「再現性」があるのかを判断するのも大切です。
面接の難しさは魔法のように「じゃあやってみて?」ができないところ。
再現性は、「自分の言葉で」やったこと、なぜやろうと考えたのか、その結果、を論理的に相手にわかるように説明できればOKとしましょう。
だからスキルチェックの面接はちょっと意地悪に「こういう時どうする?」的な深掘りが必要になるのです。
ただ、スキルは入社後伸ばすことができます。
向き不向きはあれど、本人の努力次第でかなり変化する項目がスキルであり、特に20代の所謂「ジュニア」層は変化の幅が大きいです。
そのため、3項目の中の優先順位で言うと「スキル」は一番下、と考えています。
②ビジョンマッチ=候補者の描くキャリアビジョンと、企業が目指すビジョンがマッチするかどうか
ビジョンって、つまり「このパーティ(組織、会社)はどこ向かっているのか?」という話。
・楽しくみんなで世界を冒険していろんな景色を見る
・とにかくたくさんのダンジョンを攻略してお金を得る
・魔王を討伐して平和な世界を作る
これら全てがビジョンです。
このビジョンの相互認識を間違えると、組織にいることそのものに違和感を覚えてしまったりします。
頑張ってはいるけど、頑張ることそのものに意味を見いだせなくなってしまったり、「だってこれは私の目指したいことじゃないしな…」と感じてしまったり、そんな感覚に覚えがある方もいるのではないでしょうか?
働くことは楽しいことばかりじゃない。
ただ、ビジョンという共通の目標があると、辛いことも「通過点」と捉えて踏ん張ることができたりする。
だから、私たちはどこに向かいたいパーティで、新たに仲間になるかもしれないこの人はどこに向かいたい人なのか?を確認することはとても大事なのです。
ビジョンの一致を確認する際、よく面接内で質問するのは「中長期でどうなりたいか?」と「今までのキャリアチェンジの理由はなにか?」です。
これまでのキャリア選択の軸に一貫性があるのか?
また、自社のビジョンにマッチしているのか?
この2視点で確認します。
とはいえこのビジョン、一緒にいる人や取り組んでいる仕事内容で、後発的に醸成することも可能です。
あくまで「方向性」があっているのか?の確認は必要だけど、決定的で埋められない違いがなければピッタリあっていなくてもいい(と私は思ってます)。
またフリーレンの話をしちゃいますが、僧侶のザインがパーティーから離脱するのは「ビジョンが違うな」と思ったからでしたよね。
幼なじみを探すために旅路を選択するザインと、オレオールを目指すフリーレン一行。
でも、戦士のシュタルクも魔法使いのフェルンも元々フリーレンの旅の目的に大きく共感していたわけでもない。
それでも一緒にいる中で、やり遂げたい気持ちが強くなったから、今も同じパーティとして共にオレオールを目指しているわけです。
だからビジョンマッチは絶対ではないけど、決定的に背を向けあっていないことは大事な要素だと思う。
なので、このビジョンという項目はあくまで2番目に重要な要素になります。
③バリューマッチ=候補者の価値観と、企業の価値観がマッチするかどうか
価値観とは仕事だけでなく、その人が生きていく上で何を大事にしているか?というかなり抽象度の高いものです。
企業によってバリューや採用コンピテンシーを策定しているところも多いですが、まさにこの「価値観(バリュー)」が面接で判断する上で一番外せない要素だと思っています。
なぜなら、20〜30年生きていて人の価値観が大きく変わることってよっぽど大きな出来事がなければないから。
多様性はあれど、企業が大切にしている価値観を本人が全く兼ね備えていないと、お互いに苦しいですよね。
そして価値観に良いも悪いもなく、それこそ多様性だと思うのです。
自分の大切にしている価値観を曲げてまで、その会社や組織に合わせなくて良い。パーティが大切にしてきた価値観を、誰か個人のために曲げる必要もない。
そうなると、入り口の段階でどの程度価値観が一致しているのかは結構重要な気がしませんか?
価値観が最も変わりにくい、という観点から価値観(バリュー、カルチャー)に重きを置いた面接を設計することが、とても大事だと考えています。
どのように3項目を確認すればいいのか?
では、どのようにこの複雑な3項目を面接で確認するのか?
そのためには、まず各社採用戦略に合わせた面接設計を可視化した形で作成していくことが必要です。
まずは、「自社が求めるスキル」「自社が見据えているビジョン」「自社の価値観」を出来れば現場社員や自社を象徴する社員、若手からベテランまで話を聞いて共通点を探りながら、より明確に詳細に言語化してみてください。
意外と、アウトプットは違って見えても根本は同じ思いを持っている、という発見があったりします。
そうしてよりたくさんの方の表現やアウトプットを聞き、深堀してみることで質問のボキャブラリーを増やしていくと、面接で相手の価値観に鋭く切り込む質問力も磨かれていきます。
自社を知り、そして価値観の認識を他社から引き出すボキャブラリーを増やすことで採用面接の質が現実的に上がっていきます。
自社のことを知ってもらう、ファンになってもらうアトラクト
「アトラクト」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、面接が始まった瞬間から実はアトラクトは始まっています。
面接官の見た目(清潔感)、話し方、所作、表情などから、
「なぜかこの人と話していると、自分のことを自然に話してしまうな。もっと話したいな」
と、こんな気持ちに候補者をさせていたら、それはもうとても有効なアトラクトなのです。
私の主観もありますが、誰からも好かれそうな感じの良さではなく、
面接官が
・正直であること
・心から候補者のことを知りたいと思っていること
・どんな候補者にも敬意があること
この要素が揃い、適切に候補者に伝わっていると「体験が良い」と言っていただけることが多いです。
フリーレンもフェルンもちょっととっつきにくいところはありますが、この辺りは満たしていますよね。
自社のことを開示する、より魅力を知ってもらうことも面接では重要なことです。
そのために、資料を先に準備してあらかじめ目を通しておいてもらうのも有効ですよね。
フリーレンの世界ではインターネットやSNSはないから「勇者一行の葬送のフリーレン」という伝承しかないけれど、私たちの世界には情報を残す、広めるツールが沢山あります。
note、自社のHP、採用資料でまとめたスライドなどを面接までに読んでもらうような設計をするのも、リクルーターの仕事です。
自社や面接官のキャラクターを活かしつつ、もっと知りたい、また話したい、と思っていただくようなコミュニケーションを毎面接目指せたら、自ずと仲間集めは良い波に乗っていけると思います。
最後に
今回は、「漫画『葬送のフリーレン』に学ぶ、本質的な仲間集めを実現するコンピテンシー面接のすすめ」というテーマで人事ノウハウを紐解いてみました。
採用に携わる方であれば耳慣れた単語が多く登場した回だったのではないかなと思うのですが、大事なのは採用ライン上に登場する社内メンバーそれぞれが、各項目について共通の基準を持ち、できれば同じ深さで重要性を理解しているとより採用感度が全社的に上がっていきます。
共通認識を持たせたい、という目的でもぜひこのnoteを活用いただけたら嬉しいです。
フリーランス人事として面接設計やその他のノウハウレクチャーもしているので、各社の課題に合わせて壁打ちすることも可能です。
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