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姉ちゃんは門司の花嫁

姉ちゃんは門司の花嫁

「元気でね」って姉ちゃんは、僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。

平気なふりをするけど、僕の鼻はツーンとなって、ぐすんと上下に動いてしまうんだ。

姉ちゃんは、瀬戸の花嫁じゃなく、門司の花嫁としてこの橋を越えて行く。

地元の赤間神宮に最後の参拝へ行ったあと、睦ぶふたりは橋の彼方へと消えていった。

姉ちゃんが嫁いだ最初の週末、する事なくてアルバムをめくっていた。

ふいにインターホンが鳴って覗いてみ

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空からの手紙 (3)

空からの手紙 (3)

ベッドに入ろうとした時、ピロンと通知音が鳴った。暗闇の中、慌ててiPadを引き寄せ開く。

想いが通じるってこういう事を言うのだろうか。遠い世界に行った人、二度と交わるはずのない瀬川君からのメッセージが目の前にあった。

「 寄付ありがとうございます。もちろん、渚ちゃんの事覚えているよ。僕の方こそ覚えていてくれて、協力してくれて嬉しいよ。感謝してる 」

「 良かった、瀬川君の活躍は知っていたの。

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空からの手紙 (2)

空からの手紙 (2)

「 今年の役員大変よね。まあ、リモートで会議できるから学校行かなくて良いのは有難いけどさ 」

「 うん、でも運動会も無いし文化祭もないし。役員になっても何すればいいかわかんないのが困るよね 」

「 とりあえずマスクを新一年生に配る分作れたのが良かったわ。でも、協力してくれる人とそうでない人の温度差激しくない? 」

「 … 人それぞれだからさ、仕事が忙しくって余裕無い人もいるでしょう 」

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空からの手紙 (1)

「 なんだかへこんだり、淋しい気持ちになった時にもさ、この空は好きな人と繋がっているんだなぁなんて思うと、嬉しい気持ちになるの 」

「 そうなんだ、君はそう感じるんだね。…僕は同じ空の下なのに、繋がっているその先の空の下で戦争があったり、貧しさに打ちのめされている子ども達がいるって事が苦しいんだ 」

サークルの合宿で、偶然一緒に見た空の色。海からの風を感じながら彼はポツンと言ったんだ。

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