姉ちゃんは門司の花嫁
「元気でね」って姉ちゃんは、僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。
平気なふりをするけど、僕の鼻はツーンとなって、ぐすんと上下に動いてしまうんだ。
姉ちゃんは、瀬戸の花嫁じゃなく、門司の花嫁としてこの橋を越えて行く。
地元の赤間神宮に最後の参拝へ行ったあと、睦ぶふたりは橋の彼方へと消えていった。
姉ちゃんが嫁いだ最初の週末、する事なくてアルバムをめくっていた。
ふいにインターホンが鳴って覗いてみると、顔をめっちゃ近づけた姉ちゃんもこっちを覗いてた。
「旧英国領事館までランチ行かない?」と姉ちゃん。
「あれっ、もうケンカしてきたの?!」というと、ぽくんと頭を殴られた。
「知ってる?門司から下関までJRで往復460円、タクシーの初乗り料金より安いんだよ。いつでも会いに来るから覚悟しといてね」
…あぁ姉ちゃん、あの日の僕の涙を返しておくれ。