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タカラモノ オーディブル42冊目

オーディブル42冊目読了

タカラモノ 和田裕美 ☆☆☆☆☆

表紙の女子力でアラカンのオッサンが読むのもどうか??と躊躇った。

読み(聴き)はじめると読み手の声もかわいらしくて、あら~、やっぱりオッサンが読むような本ではないのかもしれない・・・と思ったのだが、ドンドン引きこまれていき、読んでしまった。

読み手はすべて関西弁だ。

まずは破天荒なお母さんと娘の物語である。

子供は放っておいて、男と一緒で家に帰らないダメ母かと思いきや、実は子供にも旦那にも信頼されている。

自分のだらしなさを正直に子供もに打ち明けつつ、「人生のキモ」の部分の大事なことを、自分の経験と失敗をもとに娘に教えていく。

何よりもこのお母さんの愛情は深い。

自分の嫁がこんな女性だったらどうかな??と途中で一旦考えたけど、やっぱり俺は無理だろうな??とは思ったけど、この女性と主人公の父親である旦那は、世間一般で言われる普通の夫婦とは別に、お互い距離を置きながら、うまくやっている。

こういう女性と、距離を置きながら夫婦でいられるというのは、旦那(主人公のお父さん)も相当に心が広くて、ちょっと普通では考えられないほどの愛でこの嫁を愛しているんだろうなと思っていたが、後半でそういう場面が実際に出ている。


お母さんの物語ではあるけど、前述のように、お父さんも含めてかなり変わった家族であり、誰しもが「自分がスタンダード」って思っている人が人類の大半で、ただ、こういう家族の在り方というのも実はアリで、単なる母親の愛だけの物語で終わらなかったことにも多大な共感を覚えた。

実際に著者は外資系の会社で世界第二位の教育書の販売実績があり、小説家ではなく、ビジネス書の作家でもある。

その彼女の実体験に基づいた小説なのだそうだ。

自由奔放な夫婦とその子供、最初はいびつな家族に見えていた家族が、だんだん世の中の正解に見えてくる、摩訶不思議で楽しい、リズムのある文章だった。

この小説ではお母さんの「人生語録」がたくさん出てくるんだけど、その中でこんな表現があった。(文章はそのままではなく、記憶の限りなんとなくこんな感じ)

「あんた、男ができたら、絶対に料理が上手だとか好きだとか言ったらあかんで」

そうなると男はあんたをオンナからお母さんにしてしまうんや。

だからしばらくは、めいっぱいお金使わさせて、おごらせなさい。

料理するのはそれからや。

ほかにも名言がたくさん出てくるんだけど、この言葉は重みがある。

涙あり、笑いあり、なかなか浪花節(実際は京都と東京が舞台)な小説だった。



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