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むらさきのスカートの女~Audible43冊目
むらさきのスカートの女 今村夏子 ☆☆☆☆☆
第161回 芥川賞作品
この作家の作品は初めて読んだ(聴いた)。
黄色いカーディガンの女の視点でむらさきのスカートの女が描かれるのだが、なんとも気味の悪い、だけど読んでしまう中毒性のある作品。
当初は黄色いカーディガンの女は、実は存在せずに、幽霊とか宇宙人とかそういう存在なんじゃないかと??疑った。
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黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女を異常なほど追い回し、友達になりたいと願っていて、ついに自分が働いているホテルの清掃員として働くように工作して、同じ会社で働くようになり、ますます黄色いカーディガンの女のストーカー行為はエスカレートしていく。
たぶん、この作品は読んでいる(聴いている)人によって感じ方も違うし、見方も違う。
小説として読むと、登場人物含めて、全てが異常な人たちなのだが、実際は僕の生きている世界とはそういうものなんじゃないかとさえ思えてくる。
主人公の黄色いカーディガンの女は明らかにストーカーであり、サイコパスなのだが、この物語の途中ではむらさきのスカートの女が周りから奇異の目で見られ、黄色いカーディガンの女はのうのうと職場で働いている。(但しこの時点ではだ)
そういう狂気って、実は身の回りにたくさんあるんじゃないか???
兵庫県の知事の話も然りだが、真相など当の本人以外誰もわからない。
実際に昔に比べて、そういう世界に近づいているような気さえする。
きっと、そういう作者の視点が芥川賞の受賞とも結びつくし、5年前にこの作品が世に出たことは、ある意味予言であり、警告だったのかもしれない。
ラストシーンに近づくにつれて、裏の裏を突かれた展開になっていくんだけど、あー、本物のサイコパスってこういう感じなんだなと。
たぶん本当にこういう人っているんだろうな。
曖昧な感じでの終わり方も、不気味さをのこしていて、スッキリはしないんだけど、この物語がスッキリと終わったら、この作品の価値も半減してしまうような気もするので、これはこれかと思う。
Audibleの小説としては、朗読時間は中の上という感じで、決して長い文章ではないんだけど、ズッシリと重めの濃い作品であった。