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柊 南天
2023年11月14日 17:45
どれを選んでもそれが間違っていてもあれこれ目移りしてもすぐに飽きてしまっても代わりになるものは容易に手に入ってしまう最近に生きている周囲が騒がしい訳でもないのに静かな場所を探すような感覚は以前からあってその「うるさい」正体は未だに謎なんだけど立ち止まって考える、いとまもないくらい物も情報も手に負えないほどに飽和している様がもしかしたら、それなのかもしれないできるだけ
2023年4月5日 01:55
薄曇りだったある日の夕方。思っていたよりも早く仕事が終わったので、少し遠回りして帰ることにした。3年ぶりに桜を見に行く。そうは言っても、天気のいい昼間の満開の桜は贅沢で眩しすぎるだろうから夕方の、できたら曇り空で、ずいぶん散ったあとの桜がいい。どんなことでも「時間が解決してくれる」と至る所で良く耳にするけれど、その効果を、いまいち実感できないまま母が居ない三度目の春を迎えている。
2022年8月14日 18:50
母を迎える二度目のお盆二年経ったのかとうろたえもするが、過ぎ去る日々の速さに紛れてやり残した後悔や謝罪の念が消え去ることも淋しい記憶が薄まることもないあのまま止まっているわけではないけれどそれでも母が笑顔でいてくれるように心配かけないようにちゃんと日々を歩まねばと思うやたらと疲れることが多いこちらの世界とは違って母が居るところはきっと穏やかだろうから居心地のいい場
2021年6月25日 18:13
「本とか読まない人だと思っていました」仕事で出入りしている医療機関には20程の医療情報システムが導入されていて私はそれらの統括を任されている。定期的にシステムメンテナンスを実施するのだが、つい先日それがあって導入メーカーからシステムエンジニアが来院して一緒に立ち合い作業をすることになっていた。名前をT君としよう。このT君は以前にも別の医療機関で長期間作業を共にした経緯もあって、手が空くと
2021年2月28日 15:10
歳を重ねるたび、一年が瞬く間に過ぎてしまい本当に365日を暮らしてきたのか疑いたい気持ちになる。いろんなことを見落として、それすら気付かないまま生活しているのだとしたらもったいないことをしているなと思う。ひと雨ごとに暖かくなる時期がきた。次の季節に移り行く僅かな瞬間も趣きがあっていい。梅雨の雨間に目が覚めるほどの青空が覗く時期、金木犀が香ってくる時期、日に日に空気が凛と澄んでくる時期。
2021年1月9日 23:44
小学生の頃、学校の図書室で見つけた一冊の絵本。それは私たちが【お古本棚】と呼んでいた、読み古された本が並べられている隅の本棚の、一番下の列にありました。何度も修繕された跡のある、古い古い絵本です。 この物語は雪国が舞台で、おばあさんが子供の頃に経験した不思議な出来事をもとに物語が進みます。どこからともなく聞こえてくる、かごめかごめの歌。歌が聞こえるほうへ誘われるように夜の雪道を歩き出
2020年12月6日 19:46
もう何十年も記憶から引き出されることのなかった、子供の頃のことを不意に思い出す。街にひとつしかなかったデパート(今だとショッピングセンターとか呼ぶけれど)の階段登り口にあったおでんコーナー。どうしておでんだったのかは知らない。フロアから5段ほど下に降りるとそれがあって、ドーナツ状にカウンター席がある作りになっている。確か脇にテーブル席もあったと思う。その真ん中には大きなおでん用の鍋が3つあ