見出し画像

大学時代に読んだ「宮沢賢治 農民の地学者」(築地書館)

大学で地学を本格的に学び始めたころ、大学の生協で宮城一男さんの書かれた「宮沢賢治 農民の地学者」(築地書館) という本を見かけて思わず購入しました。

宮沢賢治さんの文芸作品は国語の教科書にも取り上げられ、また、家にも子供向けの本があり親しんできました。小説の中には科学や地学に関する用語もたくさん出てきます。鉱物などを集めていたという話も聞いたことがあったので、地学 (当時の博物学) に造詣が深い人なのだろうなとは思っていましたが、宮沢賢治さんの「地学者」の側面を前面に押し出した著書を見つけて思わず手に取ってしまったのです。

宮沢賢治さんは岩手県立盛岡中学校 (現・盛岡第一高等学校) を卒業した後、盛岡高等農林学校 (現・岩手大学農学部)に入学して、農学、特に土壌に関する研究などをされていたそうですので、科学、さらには地学に関する確かな知識があったことにも納得がいきます。

宮城さんの著書で、宮沢賢治さんがどのような地質学的な事象を目にしながら生きてこられたのか、また、「地学者」としてどのような生活を送ってこられたのかとてもよくわかりました。そして、農学に関してもそうですが、つねに科学的な視線を持ちながら、地元の自然や人々の生活を第一に考えてこられた姿にとても感銘を受けました。

私も大学進学する際に、農芸化学の道に進もうか地学の道に進もうかぎりぎりまで迷っていたので、宮沢賢治さんの学問への志向に共感を覚えたということもあるのかもしれません。

この本との出会いによって、改めて、宮沢賢治さんの文芸作品の中に感じる科学的な視点や地元の自然や人々への愛情のこもった雰囲気、そして農民の暮らしの向上に取り組む生き方の根底にあるものを知ることができたような気がします。

ちなみに著者の宮城一男さんは東北大学理学部岩石鉱物鉱床学教室卒業して弘前大学で教授をしておられましたが、2005年に亡くなられました。青森県をはじめ東北各地の地質学の研究のみならず、宮沢賢治さんに関する数々の著書を残されています。宮城さんも地元に根ざした研究をたくさん残されています。

私は、大学の卒業研究の時にお世話になった小さな書店のおじさんから言われた「いつかは日本に戻って、自分の生まれ故郷やお世話になった地域のためにぜひ働きなさい」という言葉が今でも忘れられません。それは宮沢賢治さんの生き方にも通じるものがあるような気がしています。改めてこれからの生き方を考えてみたいと思います。

今回、noteをきっかけに森川響喜さんの漫画作品「政とイチ」(のちに宮沢賢治さんの両親となる政次郎さんとイチさんの物語) を読ませていただいて、大学時代に読んだ「宮沢賢治 農民の地学者」のことを思い出しました。森川さんの漫画も宮沢賢治さんのご両親が生きた当時の様子がユーモアたっぷりに描かれていて素晴らしい作品です。


いいなと思ったら応援しよう!