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北海道、遠別旭温泉の思い出

会社に入って1年目の夏、北海道の天塩郡遠別町にある遠別旭温泉に地質調査のために1ヶ月ほど滞在したことがあります。

遠別町には水田があり、日本最北の水田だそうです。また、世界的にみると遠別町より高緯度でも稲作が行われているようですが、そのほとんどが自生種や陸稲で、水稲としては遠別が世界的にみても最北であろうとのことです。

夏の遠別は緑豊かな、美しい町でした。

遠別旭温泉は日本海側からモオタコシベツ川沿いに6㎞ほど内陸側に入った場所にあります。

遠別旭温泉は1972年に利用が開始されたそうです。温泉は歌越別背斜構造という地層が山状に褶曲した構造上に位置していて、歌越別ガス田として大正時代から探査が行われてきた地域の中にあります。

1913年には渡邊久吉さんという方が調査報告書の中で、歌越別背斜に関連する多数の産油地を報告するとともに,「モオタクシュペツ」の山麓の崖錐堆積層中にある直径約5間(9m)の円形の池中より,多量の可燃性ガスが発生していることを記しています。

私たちもこの地域を調査したときに、沢沿いに露出する地層にかすかに油徴 (油のにじみや水面に浮かぶ油膜) を観察したり、油臭を感じたりしたことがありました。

この地域では昔から沢沿いに小規模な泥の山があり泡がぶくぶく出ている様子が見られたとのことです。おそらく、高い圧力を持った地下水(温泉水),ガス,石油が地下から泥とともに地表に噴出して泥火山のようなものを形成していたのだと思われます。

地質調査を指導してくれた先輩社員から、歌越別背斜では油・ガス調査のために井戸を掘った際に、地下の異常高圧層にあたって度々ガスや泥水が爆発的に噴出したとの話を聞きました。温泉はまさにこの地層からくみ上げているそうです。油・ガスでは商業的に成功しませんでしたが、代わりに温泉が湧いたということでした。

私の記憶では、お湯は赤く濁っていて塩辛く、かすかに油臭がする印象深い泉質の温泉でした。

今調べてみると、源泉は2種類あって、違う泉質の温泉が楽しめるようです。

遠別で地質調査をしているときに、牛が放牧されている牧場の脇の沢を歩いていたら、10頭ほどの牛が私たちに気がついて、遠くから私たちに向かって走り寄ってきてとり囲まれてしまったことがありました。

牛たちは私たちを取り囲んだものの、脅すわけでも頭突くわけでもなく興味深そうに我々をみて、においをかいでリュックをなめてやがて去っていきました。

人懐こい牛だったのだと思いますが、あの時は生きた心地がしませんでした。そんなことも含めて懐かしい思い出です。

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