「不幸な奴隷と幸福な生活 ー革命とは地獄を破壊する行為であり、」ショートショート
「やった!!! 勇者さまたちが魔王を倒したぞ!!!」
「これで魔物たちに支配される生活は終わりだ!!!」
民衆は歓喜に沸く。ながらく続いた魔物たちによる人間の支配が終わりを告げたのだ。
そして、かつて魔王に支配されていた街の真ん中には勇者たちの立派な銅像が建てられた。
「ねぇおばあちゃん。これが勇者様たちなの?」
「そうじゃよ。この方達が、われわれを解放してくれたのじゃ」
「魔物たちは悪いひとたちだったの?」
「そうじゃ。われわれのすべては魔物たちに管理されていた。なにをするにも魔物たちの許可が必要だったのじゃ」
「そうなんだ」
「そう。魔王の元の魔物に人間たちは生活を管理され、自由を許されなかった。やるべきことを決められ、どこにも行くことが許されない。そして、日々、くらせるだけの糧を恵まれ、それでいきていくのがやっとだったんじゃ」
「これからはそうじゃないんだね!」
「そうじゃ、これからは人間たち、自分たちで決められる。自由に行きたい場所にいき、したいようにできる、幸福な時代の到来じゃ!」
ーーーーーーーーーーーーーー10年後
かつて立派な勇者の銅像があった場所には、なんとか台座があっただろうことがわかるだけになっていた。
撤去されたわけではないが、だれともなく壊されてそのままになっていた。
勇者の姿を想像させるものをみたくない、誰かの仕業なのだろう。
「あのころはよかった・・・・・・」
老婆は懐かしむように回顧する。
「あのころっていうのは、魔王に支配されていた時代ってこと?」
背の高くなった少年が腰の折れ曲がった祖母に聞く。するとうなづいた。
「そうじゃよ。あのころはよかった」
「魔王に支配されて苦しかったといっていた時代じゃないのかい?」
「日々の生活は楽ではなかった。しかし、明日のことを心配することはなく、暮らすことができた。魔物に管理されていたが、魔物たちのいうとおりにすれば、生きることを心配することはなかった」
「そうなんだ。」
「ああ。それがどうだい? いまはだれも生活を保証してくれない。明日の糧をだれも配ってはくれない。自分で糊口を凌ぐしかない。今日成功して、たらふくたべられたとしても、明日にはどうなっているかわからないじゃないか」
「たしかに」
「みてみなさい。あそこで酔い潰れている男を。一ヶ月前までは裕福に暮らしていたのに、いまでは落ちぶれて、酒に逃げるしかなくなっているじゃないか。魔物に支配されているときはこんなことはなかったよ」
「でも、遠くにいくことはできなかったりしたんじゃないの?」
「遠くにいけるからなんだというのさ。人が暮らすには街一つあれば十分じゃないか。それに遠くにいけることと、実際に行くことには隔たりがある。いくには莫大な労力がかかる。そして、その結果そこになにがあるっていうのかい?」
「そうか。そうだね」
結局少年もあの日からこの街をでたことはなかった。
「ああ。なんてことをしてくれたんだよ。昔が懐かしい」