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木挽町のあだ討ち(読書感想文)
2023年の直木賞受賞作品というのを、読後に知った。今まで直木賞や芥川賞の本を読んでみたけれど、私にハマったことがなかった。テーマが鋭く胸に突き刺さって抜けない様なものが多くて、それ自体は嫌いではないけれど、表現がどうしても私の好みではなかった。
だから、直木賞受賞作品でこうして自分にもしっくりくるものと出会えて、とっても嬉しい。
背景は江戸時代。言葉も江戸の言い回しがたくさん出てくる。子どもの頃祖父の隣で時代劇を観ていたから、話し言葉としては違和感はないのだけれど、活字で読む機会がなかったせいか、ちょっと最初は読みづらさを感じた。でもすぐにそれも感じなくなる程、話の中に引き込まれていく。
人情、人情、また人情。この世の人情をかき集めたような素敵な人々の人間模様。とはいえ、良い人ばかりのお花畑という訳でもなく、それぞれが立場や家柄関係なくそれぞれの抱える痛みや傷も描かれている。読み進める中で、傷や痛みよりも自分の環境や境遇を受け入れしなやかに生きていく人の姿の方が強く心に残るのは、この作家さんの意図するところだろう。描き方が美しくてスーッと心に入ってくる。
いつの世も同じ、生きている中で起こる理不尽や辛さを角度を変えてみることや、ちょっとしたアイデアで乗り越えていく。そのアイデアがそれぞれの人の傷や痛みを経て出てきたものだから、尚更感慨深い。過去は未来によって書き換えられる、という言葉がリアルに迫ってくる。
読後爽やかで、読んでよかった、出会えてよかったと思える本だった。
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【心に残った言葉(順不動)】
⚫︎...苦労知らずってのは有難いものだが、成長するきっかけを見失うらしい。
⚫︎ただ、いっとき浮世を離れる気持ちよさがたまらなかった。(芝居を初めて観た人の言葉)
まだまだあるけれど、内容に触れるので心に留めておく。
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