蟷螂の斧(古典ノベライズ前編)
昔々の昭和の頃に。
斉田町に住む荘介と言えばこの辺りで知らぬ者はいない、いわゆる札付きのワルだった。
バイクにまたがり、手下を数人引き連れて、金品も女性もまさしく狩猟のようにかっさらっていくフランスパンのような大きさのリーゼントは、近隣の人々を震え上がらせていた。
いつものように高校正門を待ち合わせの場所にのみ使った荘介は、手下と共にバイクにまたがり、放課後の高校を後にした。
そのときだった。
ランドセルの小学生男子が、1人バイクの前へと自ら飛び出してきたのは。
見れば、手には、鎌。
ここいら一帯がいくら田舎だとは言え、鎌を振り上げバイクの前に立ちはだかる小学生は、異様以外の何物でもない。
不良の一団は、驚き、一斉にバイクを止めた。
それを見た彼はランドセルを鳴らしながら、振り上げた鎌を下ろすべく、荘介たちの元へと走ってきたのだった。
(明日へ続く)
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