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【第26回】転職してしばらくは部下を泳がしておく
転職した先に部下がいる場合は注意が必要です。以下は、グローバル企業にマネージャー職として転職した、40代半ばの方とお会いした時の話です。
「古株の部下がいるんですが、日々の業務に関して、協力してくれないんです。それどころか、業務妨害とさえ思えるほどの仕打ちをしてくることもあるんです」
「それは、尋常ではないですね。何か原因というか、心当たりはあるんですか?」
「それがですね、聞くところによると、本当は、部下が私のポジションに昇格する予定だったんだそうです。
ところが、突然私が転職してきたものですから、反発してしまって。彼が本当に昇格することになっていたかどうか、確証はないんですがね」
「いや~、大変だ。上司に当たる方とは相談してみたんですか?」
「もちろんです。でも、埒(らち)が明かないんです。煮え切らないと言うか。
最近分かってきたんですが、実務はすべて社歴の長い部下が取り仕切っているので、上司としても文句が言えないようなんです」
「それはひどい。上司の役割を放棄しているとしか、言いようがありませんね」
「おっしゃる通りです。しかし、このままでは私も仕事にならないので、そろそろ次の会社を探そうかと思っているんです。入ってまだ間もないのですが……」
少し極端な事例ですが、実話でもあります。
一般論として、部下が実務を仕切っているケースは多く、古株になればなるほど、仕事を個人として抱え込んでいる場合があります。
仕事を抱え込む理由は様々です。自分のやり方に固執して、邪魔されたくない者もいれば、仕事を取られたくないと感じる者もいるでしょう。
また、先ほどのように、自分の昇格を阻止された(と思われる)ケースに至っては、敵対心すら抱くことになります。
そこで、部下に対しては尊重する姿勢を見せながら、しばらくの間「泳がす」ようにします。余程のことがない限り「口出しはしない」ほうが無難です。
その上で、日々の仕事の進め方を観察しながら、ローカル・ルールを少しずつ理解していけばいい訳です。
すると、部下のやり方だけでなく、会社独自の業務スタイルや、暗黙のルールが把握できるようになります。指示やアドバイスを行うのはそれからです。
「せっかく部下を持つ立場になったのだから、リーダーシップを発揮したい」と意気込む方もいるかと思います。
しかし、ローカル・ルールを把握するまでは、軽率な行動は禁物です。少なくとも部下を「敵」に回すことだけは、何としても避けなければなりません。
次回につづく(毎週月曜日に投稿予定)
(本文は、弊著『四十歳を過ぎて初めて転職の二文字が頭をよぎったら読む本』<ブイツーソリューション>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)
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