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これがヒーリング?本当に? 書籍「心の傷は遺伝する」解説-08

このnoteはアメリカで心理療法の臨床をしているマーク・ウォリンさんという方が書いた「心の傷は遺伝する」という書籍について、阿含宗会員信徒ならではの視点で解説をする連載の第8回目となります。

他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔をトラウマ、心の傷として抱えて死ぬと、その想いは阿含宗用語で言うと「怨念」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「苦悩の衝撃波」となり、世代を超えて継承されます。このトラウマを継承する現象を阿含宗用語で言うと「霊障」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「トラウマの世代間連鎖」と呼びます。
これらのトラウマによって、人生において様々な問題が発生します。
第5回までに仕組みや影響範囲についての説明をしました。
第7回はマーク・ウォリンさんたちが考案して実践しているらしい世代間連鎖したトラウマの解消方法について説明しましたが、彼らの方法はデンジャラスすぎて推奨できません。

今回、第8回ではマーク・ウォリンさんたちの考える心のヒーリング方法についての説明です。そして、この解決方法についてのボクの見解は、第7回のトラウマ解消法と同様です。

阿含宗会員信徒視点では、この方法は危険すぎて推奨できません


ヒーリングの定義

ヒーリングの定義

ここで取り上げるヒーリングの定義をします。スピリット系の人は色々な意味、定義、範囲でヒーリングという言葉を使うと思うので、このnoteでのヒーリングの範囲、定義を先に決めておきます。

ヒーリングの対象は、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を除去したあとの人の心、魂です。
これを癒やすことを、このnoteでのヒーリングの範囲とします。

ヒーリングが必要な理由

阿含宗会員信徒視点では「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の除去という行為は神仏の力が絶対に必要なのであって、マーク・ウォリンさん方式のトラウマ除去方法(第7回を参照ください)には疑問があるけれども、仮にそこそこ除去できるとします。
その後の霊障・世代間連鎖したトラウマを除去した人間の心をどうするかが次の課題となります。
トラウマを除去したら、それで解決ではないのか?と思うかもしれませんが、まだもう少し続きがあります。

「霊障」「トラウマの世代間連鎖」は魂に突き刺さったトゲです。

霊障やトラウマを取り除くとはトゲを抜く行為ですから、トゲを抜いたら、そこは傷口がぽっかりと穴を開いた状態になります。
穴が空いているのですから、その穴を埋めようという動きが発生します。
その穴に埋めるために入り込んでくるものは何でしょうか?

何も意識しなかったならば、まだ、魂に刺さったままの他の「霊障」「トラウマの世代間連鎖」が、そのまま心の穴を埋めてしまう可能性があります。まさかの展開として、全く別の新しい「霊障」「トラウマの世代間連鎖」が発生して入り込むかもしれません。

だから、そうなる前に「霊障」「トラウマの世代間連鎖」とは異なる何かで心の穴を埋める必要があります。
それが、ここで言うヒーリングであり、ヒーリングが必要な理由です。

阿含宗の方式

最初に阿含宗での実際の手法を説明します。
阿含宗ではヒーリングという言葉を使わないし、ほとんど全ての会員信徒さんが自分たちが毎日行っている行為がヒーリングの一種だという認識を持っていないはずですが、実際はヒーリングの一種を行っています。

目的は「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を除去したあとの癒やしです。
阿含宗は宗教ですから、単なる心の癒やしで終わるのではなくて、心に神仏の霊力を浸透、注入させて、その人の魂存在そのものを書き換えて霊的進化を遂げるというところまで目指します。

阿含宗の御本尊様の前で一生懸命に無心になって勤行、つまり真摯にお経や真言を唱える祈りの時間を作る。そうすると阿含宗の御本尊様が放出している特殊な霊力、霊波が祈る人の心の無意識の領域に浸透を開始して、霊障、トラウマを除去した心の穴を埋めていきます。

御本尊様側からすれば、その人物の魂に橋頭堡を確保できるわけで、そこから祈る人間の魂を清め、高め、書き換えていくことができるようになります。祈る側からすれば、神仏の力を借りながら、毎日コツコツ頑張っていたら、気づいたら自分の魂レベルが結構上がっていた!という流れになります。

このように非常に明確なプロセス、メカニズムがあります。

また、この技術は密教の用語で言えば入我我入にゅうががにゅうです。古くからの言い回しで説明すれば「我が心を仏様の心と成し、仏様の心を我が心と成す」となりますし、ボクが使う言葉で言えば「自分の魂を神仏の霊気・霊力と重ね合わせる」という表現になります。
本来の目的は、自分の魂、潜在意識、深層意識といった心の奥底を清めて、高めて霊的進化を目指すということなのですが、実際には、この流れの過程において「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を除去して空白ができた心を神仏のエネルギーで埋めて癒やすという行為も行われているのです。

ただ、こんなテクニカルな難しい事を言っても、?????????となる人が多いのが実情なので、現場においては、とにかく一生懸命に無心になって決められた通りに祈りなさいと説明することになります。

マーク・ウォリンさん方式は本当に危険

マーク・ウォリンさんは精神医療、心理療法の世界の人ですから、もちろん魂の霊的進化なんてことは管轄外の出来事であって、人間の力で可能な範囲で終わります。

マーク・ウォリンさんは癒やしのプロセスにはヒーリング・センテンスという特殊な「言葉」が必要だと説明しています。ヒーリング・センテンスについては第9回のnoteに詳細を書きますが、その言葉を使う前に準備をする必要があります。その準備がヒーリングを行うために重要な事柄でですので、この部分を引用します。

マインドフルネス瞑想でトラウマをほじくり返せ

癒やしのプロセスで鍵となるのは、体の感覚に注意を向けることだ。体の感覚に無意識的に反応せず、それらの感覚と「ともにいる」ことができれば、心に不安が湧き上がっても、落ち着いていられるだろう。自分自身を理解するために、不快なものにあえて対峙しようとする時に、しばしば洞察が得られる。
自己の内面に意識を集中させると、あなたは何を感じるだろう。恐ろしい考えや不快な感情と結びつくのはどのような感覚だろう。喉を締め付けられるような感じだろうか?それとも、息が止まるような感じか。胸が締め付けられる感じだろうか。痺れだろうか。それを最も感じるのは体のどこだろう。心臓?腹部?みぞおち?そのような感覚に圧倒されそうになっても、その場所をうまくコントロールしなければならない。

心の傷は遺伝する P.181
ヒーリング・センテンスと体

お願いですから、こんなデンジャラスで無茶なことをやらないでください。
本当に危険なことを指導しています。

これは何をしているかと言うと、マインドフルネス瞑想の手法を使って、今の自分のありのままを観察するみたいのことをやります。
マインドフルネス瞑想を至高の瞑想であるかのように吹聴している人は理解していないと思うのだけど、瞑想という行為は、表面意識を消して、深層意識、潜在意識にアクセスしようとする行為です。
表面意識を消すというのは、大脳新皮質による思考を止めるよう頑張ることで、例えば、さっき見たテレビ番組が面白かったなぁとか明日のお昼は何を食べようかなぁとか、そういう取りとめない考え、特に言語で浮かんでくる考えを止めようとします。
そうして大脳新皮質による思考を止めることに成功すると、大脳新皮質による思考によって今まで押さえつけられていた潜在意識や深層意識にある言語化される前の思念やその他諸々が表面に出てきます。
この潜在意識や深層意識にある言語化される前の心の動きを観察し、コントロールしようというのがマインドフルネス瞑想を含む、多くの瞑想で成し遂げたい事柄のひとつです。

問題は、瞑想の才能の高い人が、強い「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を持っていると、瞑想が上手なので表面意識を止めることに成功したとたんに、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」が持つ強い怨念が心の奥底から噴出してしまうということなのです。

色々な怨念が心の奥底から噴出するのですから、心は千地に乱れて制御はできず、そのストレスで肉体が勝手に動くなどの影響がでる。阿含宗会員信徒視点では、霊障を顕現させるなどという行為は危険極まりなく絶対に避けるべき行為なのだが、マーク・ウォリンさんは、逆にそれをやれと説明しています。

こういうことを知らずに瞑想教室を開催している方は、事故を起こさぬよう気をつけてくださいとしか言いようがないです。

トラウマを引き起こす言葉を使ってほじくり返せ!

さらに恐ろしいのは、自力の瞑想でトラウマを引き出せない場合、自分のトラウマをほじくり返す恐ろしい言葉、マーク・ウォリンさんは「コア・センテンス」という単語を使用していますが、これを「声に出して言ってみよう」と説明しています。勘弁してほしい。

体の感覚がどういうものかわからなければ、自分のコア・センテンスを声に出して言ってみよう。コア・センテンスを声に出すと、体の感覚が呼び覚まされることがある。コア・センテンスを声に出し、体を観察しよう。震えているだろうか。それとも、沈み込んでいくような感じか。あるいは、痺れか。

心の傷は遺伝する P.181
ヒーリング・センテンスと体

自分の、あるいは先祖のトラウマをほじくり返す、恐ろしい言葉「コア・センテンス」を声に出して言うことで、体が反応するから、その様子を観察しましょう。PTSDのフラッシュバック現象を自力で発生させて、自分自身でその反応を観察しましょうと言い換えることもできますでしょうか。

これは、心理療法の世界では、持続暴露療法あるいはエクスポージャー療法と呼ばれるものに該当すると思われます。この手法は厚生労働省のホームページにも「治療者が同伴して、安全、安心を保証しながら、段階的に現実の事物や過去の記憶といった刺激に触れます」とある方法なので、個人が瞑想状態に入って実行するようなものではない。
本当に危険です。

癒やしの実践はトラウマ顕現の最中に行う?本当に?

マーク・ウォリンさんの解説は続きます。
トラウマをほじくり出すことによって、肉体に何らかの反応が発生した状態からです。

その感覚を感じる場所に手を当てよう。次に、その場所に息を送り込む。その場所が周囲に支えられていると感じながら、息を送り込もう。呼気が一筋の光となってその部分を照らしているように思えるかもしれない。次に、自分自身に言おう。「大丈夫だよ」と。

心の傷は遺伝する P.181
ヒーリング・センテンスと体

本当にこんなことが可能であるか?。今まさに、PTSD症状を発症し苦しんでいる方に、これをする余裕があるかどうか、直接質問してみれば良いのではないでしょうか?

いくらなんでも、無茶振りが過ぎる、とボクは思います。
これを実践して自分の問題を解決したいと望む方がいるのであれば、必ず理解ある心理療法士や精神医療の先生と相談して実施してください。
自力でやろうとか、瞑想教室でやろうなどとは、絶対に考えてはいけない。

ただ、このマーク・ウォリンさんの引用文の瞑想方法、イメージ方法は、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」が顕現していない正常な精神状態の時に行うならば、有効な方法です。

「その場所に息を送り込む。その場所が周囲に支えられていると感じながら、息を送り込もう」という部分、これは気功の一種です。気を発生させて、心や体の問題がある部分に呼吸を駆使しながら送り込む。

「呼気が一筋の光となってその部分を照らしているように思えるかもしれない」というのは、例えば密教の行法的に言えば、神仏の霊気と霊光を自分の気に混ぜ込んで、自分の心や体内を巡らせるという瞑想技術に該当します。

ここだけ切り取れば、悪いことを言ってはいないのですが、これをいつ実行するかと言うと、意図的に「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を顕現させて、自分自身が苦しんでいる真っ最中だというのだから、なんと言いますか、常軌を逸しているとしか言いようがないです。無理です。

解決手段の相違についてのまとめ

阿含宗とマーク・ウォリンさんの両者において、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を除去したあとの心を癒やすという目的は、同じなのですが、思想や解決手段が全く違います。

一連のnoteで、ずっと主張している通り、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の影響は心の問題だけではなくて、交通法規上は問題ない場所で信号待ちをしているのにもかからわず、他者の運転する車が突っ込んできて死んでしまうという他責による事故も含みます。
阿含宗の修行の実践は、このような事件事故が、そもそも発生しないように神仏の力で運命を変えてもらうというところからスタートです。だから、「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を表に出すなんて考えられないわけです。表に出てきたら、他責の事故で死んでしまいます。

マーク・ウォリンさんは心理療法の世界で生きていますから、見ているのはその人の心の問題だけです。だから他責の事故で死んでしまうことが「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の影響であるとは考えていないかもしれないので、平気で「霊障」「トラウマの世代間連鎖」を表に出そうとするのでしょう。

マーク・ウォリンさんの問題解決方法に憧れと期待を持って渡米して学んだり、実際の治療を受けることは個人の自由です。
ただし、阿含宗会員視点からは、マーク・ウォリンさんの解決手段は本当に危険なので推奨できません、ということは繰り返し主張させていただきます。
基礎となる「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の考え方の多くが一致するのに、ここまで解決手段が違うのは残念に思っています。

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