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2夜限りの夢に浸る


いつか希望を託した紙切れが出てきた。
それがいつだったか、あまり記憶にないが
あの日の僕は確かに希望を持っていた。
当たったら、何をしようか
あれを買って、これをして
沢山希望が出てくる僕に、
いやいやこれが先でしょ、なんて君が笑う

結果それが叶うことは無かったが、
思い出すと面白いもので。
命運を託した6つの数字。
いや、正式には8つになる数字は、
遠い過去になったいまも僕を見つめている。

切手シート位は当たっているだろうから、
明日にでも交換に行こう。
この家での思い出は、
スッキリさせて次に行きたい。

その後も片付けをしていたら沢山の思い出が出てきた。
旅行に行った時の写真、やり取りしていた手紙、
お揃いで着ていた夏物のパジャマ。

やんわり寂しい気持ちもあるけれど、
もう着れないこのパジャマはゴミ箱に入れる。

午前から始めて、もう夕暮れ。
引越しは明後日。間に合うのかこの荷造り。
1Kの狭い部屋を眺めて、ここに2人で住んでたなんてなと笑う。

奥の部屋から、そうだね、と君が笑う。

これからは、3人で広い部屋だね。

お腹を撫でながら君がそう言うから、
少しこそばゆくなって
過去に希望を託した紙切れを握る。
やっぱり交換に行ってくると、足早に家を出た。

近くの宝くじ売り場まで走る。
よくわからない焦燥と高揚感と僕がそこにいて、
その紙切れは5000円に変わった。

なんだよ、ちゃんと当たっていたのかよ。

明日は家族3人のあの狭い家で、
最後に少し美味しいものでも食べようか。

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