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子供の自己肯定感を下げる親の言葉
小学校や中学校に上がるお子さんを持つ親にとっての悩みが「どのように子供に声掛けをしたらいいか」という点です。
成長段階がありますので、幼稚園・保育園のときのように無邪気で元気に明るくというやり方だけではうまくいかない時もあるからです。
気になるのが、親から子への「誤った声かけ」です。
突然ですが質問です。
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小学1年のお子さんが、初めてのテストで90点を取って帰ってきました。こんな時、親だったら、どのような声かけをしますか?
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(お子さんがいらっしゃらない方は、仕事の部下や後輩に仕事のことを話す時に置き換えて考えていただくと良いかと思います)
「頑張ったね。もうちょっとで100点だったね」
もしこのような「はげまし」が、お子さんの自己肯定感を下げていると言ったら、驚かれるでしょうか。ではどこが悪いのでしょうか。
実は、この声かけの問題点は「もうちょっとで」という部分。正解した90点の部分ではなく、できなかった「10点の部分」に注目しています。
小学校に入学したばかりの1年生にとって、この変化は衝撃です。なぜなら、幼稚園や保育園までは、評価されることはなかったからです。上手に絵が描けた、元気に体操ができた、太鼓をリズムよくたたけた…。基本的に何をしても「マルの世界」でした。
それが小学生になったとたんに「100点満点の世界」で、マイナス面を指摘されるようになるのです。つまり100点でないかぎり、毎回「できなかったこと」に着目されます。
これはテストに限ったことではありません。日常生活においても、子供たちは「できないこと」ばかり指摘され続けています。
「片付けなさい!」「早くしなさい!」「宿題しなさい!」。言い出したら、キリがありませんよね。これは「片付けてない」「早くしてない」「宿題してない」という「できていないこと」に着目した声かけです。
自己肯定感とは、
・自分は大切で価値のある存在だと、自分のいいところ悪いところの
全てをひっくるめて、自分で自分を認めている状態
です。
自己肯定感を育むには、絶対評価が必要です。なぜなら、他と比べることなく、「自分はできている」と自己認知することで、自分を肯定的に認めることができるからです。
しかし、学校は相対評価の世界です。「平均点より上、下」「あの学校に入れる、入れない」など、周りとの比較の中での一喜一憂せざるをえません。
なかなか成績が上がらない子供は「ここを直すように」と言われ、いい成績を取ったら取ったで「もっと上を目指そう」と志望校を上げるように促され、「もうちょっと頑張りなさい」と言われます。上には上がいますので、これでは終わりがありません。
子供自身も「自分のダメな部分」に注目するようになります。このように、勉強に関わる親からの発言によって、子供は自分の欠点ばかりに目がいくようになるのです。
すると九九が少し覚えられないだけで、「私、算数不得意」と言い出す。テストでできないところがあると「それ習っていないもん」と言い訳をする。
このような後ろ向きな言葉によって、さらに自己評価が下がっていきます。
実は、これらの言い訳は、親の「マイナス評価」から逃れて、傷つかない
ようにするための、必死の抵抗です。「×がついているのは、不得意だから、習っていないからしょうがないでしょ。私が悪くはないよね……」。子供が伝えたいのは、そういうことなのです。
ところが親は子供のためと叱咤激励します。その激励に応える子供を見て「素頑張っている」と安心します。でもその叱咤激励が、自己肯定感を下げている可能性があるとしたらどうしますか?
いちばんの問題は、親世代が偏差値教育の中で育ってきている点。いい学校に進学するために、弱点を克服していくことが当然と考えがちです。でもこれは改める必要があるのです。
まずは、大人である親自身が「自分のできなかったこと」を見る癖があることを認識する必要があります。その癖を直すために、親も「自分のできたこと」を見つける習慣が効果的です。
素直に自分を見ると、素朴なできたことがたくさん見つかるはずです。すると自然に子供の「できたこと」にも目を向けられるようになります。
子供が90点のテストを持って帰ってきたら、
「すごいね。宿題頑張ってたもんね」
と、結果ではなく勉強した「プロセス」を認めてあげましょう。
もし、30点でも、「30点取れたね」と言いつつ、点数のほかにもいいところはないかを探してみるのです。
・字をていねいに書いている
・文章問題にマルがある
・一生懸命計算した跡が残っている
などが見つかります。そこで
「何回も頑張って計算したんだね」
と「できたこと」に注目して認めてあげるのです。
そうすることで、子供は、肯定的な自己認知に変わっていきます。すると自己肯定感が上がり、前向きなチャレンジ行動につながっていくのです。まさに主体性が育まれていくのです。
子供に幸せになって欲しいと願う親だからこそ、一見遠回りに見える「できたこと」アプローチを実践してほしいと思います。
もちろん自分のできたことを見つけることも忘れないでくださいね。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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永谷研一の「できてる」通信
Vol.012 (2024/11/13)