とうもろこしのごはん。
青果店の軒先を覗くとそろそろとうもろこしが並び始めています。
最初は「とうもろこし」とだけPOPに書かれているけれど、やがて「ゴールドラッシュ」とか「ピュアホワイト」とか品種別に積み上げられて、値段もこなれてくると心躍る。
うん。とうもろこしが並び始めると、私心躍ります。スイカよりも「夏が来たな」と思う。
生き急ぐように手にとってレジに並ぶ私です。
濃い緑色の皮に包まれて褐色のもじゃもじゃのひげが伸びているのがいい。
その皮をバリっとむくと鮮やかでピッカピカの黄色な粒がビッシリ詰まっているとテンションがあがります。
皮を何枚か剥いてそのままレンジでチンしても、寸胴で茹でてかじりつくのも最高だけど、個人的にはなんといっても炊き込みご飯です。
とうもろこしは実は鮮度が命。
収穫すると1日毎に糖度がどんどん落ちてくるらしいです。
だから、できるだけ鮮度の良い近所の青果店で買ってその日のうちに炊き込みます。新鮮なとうもろこしで炊き込むと信じられないくらい甘くて、すばらしい香りだけでご飯3杯くらいいけちゃいます。
まずは皮とひげをバリバリと剥いて、包丁で半分に割って慎重に実を削ぎます。
心に余裕があれば、剥いたきれいな皮とひげは天日で干して煮出せばコーン茶のできあがり。それはそれで滋味深い季節の味。ま、余裕がない日のほうが多いですけど。
いつもと同じように米を研いで、酒と塩にいつもの水加減にしてとうもろこしの実と削いだ後の芯を入れてスイッチオン。
今日はちょっと気分で昆布だしの顆粒も加えてみました。
しばらくすると、炊飯器から夢のような甘い香りがしてきます。
よく知られているように、とうもろこしの炊き込みご飯の釜には芯は絶対。芯から甘みとダシが出てきてできあがりがゼンゼン違います。
むかーし一緒に住んでいたパートナーは、とうもろこしご飯が大好きだったのをいつも思い出します。
とうもろこしご飯がこんなに美味しいなんて知らなかった。
こどものようにはしゃぐパートナーに、旬は安くてすごいんだね。なんて自慢げに語っていた頃が一番私が人並みに幸福を感じていた時期だったのかも。なんて思います。
そんな思い出が私にとってのとうもろこしの芯。甘いだしで一層思い入れを深くしているのでしょうね。
そんなことを考えつつ炊きあがりを待つ間に、安かったあさりで味噌汁と、魚はあまり良いものがなかったのでれんこんの挟み揚げを用意。十分です。
やがて、チープな電子音が聞こえてくると、逸る気持ちを抑えつつ炊飯器にかけよります。
とうもろこしご飯の一番の盛り上がりどころは、炊飯器を開ける瞬間です。ここがピーク。存分にとうもろこしご飯の誕生を存分に祝わないといけません。
ぐっと力を入れてパカっと蓋を開く。
甘い湯気がぶわぁっと顔を覆います。そのあまりにも甘美な霧の先には真っ白な米の間にツヤッツヤのとうもろこしの粒がキラッキラに輝いております。真ん中にはすべてを搾り取られて性も根も尽き果てた芯がしっとりと鎮座していますね。
芯をご苦労さまと取り除いて(ポイッと捨てます)、しゃもじでまぜます。
ここでチョイス。
そのまま、淡い塩味でとうもろこしの甘みを存分に生かしたご飯にするか。それとも、ひとかけのバターをポイッと加えてかすかなバターの華麗な風味を加えてリッチなテイストにするか。
いつも悩みます。
今日は昆布の風味も入ってますし、せっかくだからバターをイン。
ひとかけのバターくらいだと、お米はツヤっとして少しパラパラしてきますけど、油っぽさはあまりなくてピラフっぽくない風味の良い仕上がりになります。
我が家に夏が来ました。
冷蔵庫からいただきもののきゅうりの粕漬と柴漬けも加えて、夏の食卓ができました。
茶碗を口に近づけただけで甘い香りがして、口に運ぶとなんとも言えないとうもろこしの甘さに引っ張られるように甘みが増したお米がうまい。私にとっての夏の味です。
貝のダシが口の中に広がるアサリの味噌汁も好サポート。
れんこんの挟み揚げにはめんつゆでつくったなんちゃって天つゆも思った以上にピッタリでした。
今が一番幸せではないけれど、季節の到来を味わうシンプルな食卓に向かう幸せはそれはそれで小さな幸せです。
少なからず明日一日は元気でいられそうな。
とうもろこしご飯、おすすめですよ。