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俳句、短詩

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自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
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2024年10月の記事一覧

【俳句10句】栞紐~夏目友人帳 漆 第四話「頁の奥」に寄せて

【俳句10句】栞紐~夏目友人帳 漆 第四話「頁の奥」に寄せて

栞紐

ほの暗き神在月の古書店よ
でこぼこと背表紙の列冬はじめ
父のこと冷たき頁捲りつつ
寒雷の遠し呪詛の字蠢いて
先生は片目を瞑り夜半の冬
本貸してしぐれを帰る淡き背
「あの人」と少女は呼んで冬茜
見開きに吸はれし霜枯の悪鬼
はつふゆの光る頁へ帰りけり
冬の日の記憶へ挟む栞紐

※俳句10句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。
映像より季節は「冬」と判断しました。

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てのひらの打ち明け話:乾佐伎句集『シーラカンスの砂時計』

てのひらの打ち明け話:乾佐伎句集『シーラカンスの砂時計』

「吟遊」同人・乾佐伎さんの第二句集。
絶滅したと考えられていた古代魚・シーラカンス。
実際には現生種が発見され「生きている化石」と呼ばれている。

人間には想像もつかない長い時間を紡ぎ生き残ったシーラカンスの歴史。
その砂時計の尺度は、人間のそれとは違う重みと刻み方をしているのではないか。
そのシーラカンスの歴史からみれば、わずかなヒトの歴史。
そして、個人の歴史。
それは、まるでてのひらほどの広

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【俳句12句】振り返らずに~夏目友人帳 漆 第三話「とおかんや」に寄せて

【俳句12句】振り返らずに~夏目友人帳 漆 第三話「とおかんや」に寄せて

振り返らずに

泡立草さわさわ山へ黒き列
一列に夜霧を乱す足音よ
たましひの揺れて案山子の五指だらり
蔦かづら闇を封じし左腕
禁術の話まばらに昼の虫
友人をまつすぐ庇ふ秋の雲
秋ゆふべ心の裡の零れたる
上弦の月や勝負は突然に
また一体負けて案山子は星となり
明け方を振り返らずに案山子たち
鳥渡る朝へ願ひのほどけゆく
饅頭はしばしお預け稲架の道

※俳句12句「振り返らずに」は、放映された物語からイ

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【俳句誌『聲』創刊号】耳をそばだてて

【俳句誌『聲』創刊号】耳をそばだてて

俳句誌『聲』は、2024年7月に創刊・発行。
所属作家は遠藤由樹子さん・容代さん。
母娘による十七音の美しい聲のハーモニーが各頁に響いている一冊。

◇感銘句
【春より】
 あたたかや馬小屋にある掛時計  容代
 ゐることを伝へむと鳴く仔猫かな

 沈丁花旧字の戀の匂ひなり  由樹子
 孕猫潮騒に目を細めたり

【夏より】
 開くとき翼の音のする日傘  容代
 夕立や悲しいときの字の丸く

 木漏

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【俳句10句】優しい手~夏目友人帳 漆 第二話「いつかの庭」に寄せて

【俳句10句】優しい手~夏目友人帳 漆 第二話「いつかの庭」に寄せて

優しい手

半月の箱庭まどろみし屋敷
ぽつてりと花壇へ肉球秋びより
不器用なてのひら包む月明り
おもひでを聞きつつ洗ふ障子かな
長き夜の先生は酒のことばかり
秋晴の花壇よ照れて嬉しくて
月白や蒔かれし種の鈴のごと
姫神の帰還の歌は金秋へ
おぼろげな父のほほゑみ秋の苑
優しい手秋夕焼の僕の家

※俳句10句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。
映像より季節は「秋」と判

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【俳句5句】振り子時計~夏目友人帳 漆 第一話「破片は愁う」に寄せて

【俳句5句】振り子時計~夏目友人帳 漆 第一話「破片は愁う」に寄せて

振り子時計

天高く語る時まなこの遠く

飛べぬまま壊れ秋夕焼になつた

秋灯や振り子時計の琥珀色

真つ白な羽のかけらよ銀漢よ

漕ぎ出せばしらべのごとき鰯雲

※俳句5句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。
映像より季節は「秋」と判断しました。
インスパイアに基づく俳句なので、必ずしも物語通りの映像でなかったり、物語に登場していない事物が登場することもあります。

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【物語る句】『貴方と共に』の巻〜「夏目友人帳 陸」を基に

【物語る句】『貴方と共に』の巻〜「夏目友人帳 陸」を基に

『貴方と共に』の巻

つきひぐい春の夕べに腐れ縁
 明日咲く花へ師弟の涙
凍返る闇を操る二体さま
 違える瞳に君は映らず
縛られしものへ感謝とさよならを
 西村と北本 あかね色の道
花の宴ゴモチの恩人思いつつ
 いつかくる日も貴方と共に
ながれゆくは神と従者の絆ならむ
 孤独を抱きし閉ざされた部屋
大切なモノと春満月の帰路
 鈴鳴るの切り株の約束
てのひらの夢幻のかけら夕焼けて
 そうっと撫でる遠

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