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俳句、短詩

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自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
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2024年6月の記事一覧

十七音の包容力と瑞々しさ:黒岩徳将句集『渦』

十七音の包容力と瑞々しさ:黒岩徳将句集『渦』

煌めきながら切ない、この十七音たちは、この感覚は何なのだろう。
本句集を読み終えての第一印象はそんな感じだった。

青島麦酒喧嘩しながら皿仕舞ふ
強きハグ強く返すや海苔に飯

たとえば、上記の句が表す言葉の組み合わせと映像が与えるインパクト。
そして、季語を重んじながら同時にオリジナルの視点によって作品に立体感を与える季語の独自の使い方。

作中の言葉は静か、巧みな技術。でも、完成した十七音はスマ

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【物語る句】『その時までは』の巻〜「続 夏目友人帳」を基に

【物語る句】『その時までは』の巻〜「続 夏目友人帳」を基に

『その時までは』の巻奪われた友人帳の名の舞えば

 たましい二つ春に溶けるよ

凸凹と妖(あやかし)退治 湯けむり行
 
 雛、孵る夜の月あたたかく

空と海約束の樹にひとり占め 

 少女の陣は夕日に滲む

朽野を呼んではならぬ影重く

 不死の想いの人魚の汀(みぎわ)

満開の桜並木の彼を抱き

 若き祖母座す仮屋の窓辺

無月なる呪術師の会ひそやかに

 廃屋の少年 げんげ田の輪舞

同じ花

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まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

金魚揺れべつの金魚の現れし

華やかに鰭を動かし、水を遊ぶように泳ぐ金魚。
複数あるいは品種の違う金魚が同じ水の中をすれ違ったり、並行したりして泳ぐ様子は静かながら、どこか不思議な雰囲気を漂わせており、独特の存在感を放つ。
それはまた、本句集の次から次へと繰り広げられる美しい十七音が織りなす景色にも似ている。

目次・あとがき他を含め総ページ数・288ページの大冊。
それもそのはず、小学生低学年の

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