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【料理エッセイ】新潟でバスセンターのカレーとか、タレかつ丼とか、弁慶の寿司とか、半身揚げとか、イタリアンとか、いろいろ食べてきた!

 中学時代の同級生が今年の四月から新潟で働き出した。美味しいものがたくさんあるし、前々から遊びにおいでよと誘われていた。なかなか都合がつかなかったけれど、この前のシルバーウィークに新幹線を予約して、ようやくピューっと訪ねることができた。

 東京駅から片道2時間ぐらいだった。向こうで日本酒を飲むとわかりつつも、駅弁の店でサッポロの黒ラベルと国技館の焼き鳥を買わずにはいられなかった。なんとなく、缶ビールの中でもサッポロがぬるくなっても美味しい気がして、こういうときは選んでしまう。

 冬だったらこのトンネルを抜けると雪国なんだろうなぁ、とか窓の向こうをぼーっと眺めつつ、その日に更新予定だったnoteの記事を書きつつ行けば、あっという間に着いてしまった。

 友だちは駅前のロータリーまで車で迎えに来てくれていた。本当は真っ直ぐ向かうべきだけど、新潟に着いたぞ! って感じの写真が撮りたくて右往左往した。

 まず、改札を出てすぐ、駅中でそれっぽい銅像を見つけた。その名も忠犬タマ公。

 ぶっちゃけ、ハチ公以外の忠犬を存じ上げなかったが、解説を読むにタマ公の忠犬っぷりもなかなか凄い。なんでも、飼い主を雪崩から二度も救っているらしい。地元の風土に根差した活躍に胸を打たれた。

 ただ、一目で新潟らしさが伝わるかと言ったら、そうでもない。とりあえず、駅を撮るのがよかろうと外に出てみるも、折しも大幅工事中。ごちゃごちゃしていて、どこなのかよくわからない状況になっていた。

 どうしたものかと歩き回っていたら、わかりやすいモニュメントを発見。

 そうそう。これこれ。あまりにも新潟過ぎると感心しながらシャッターを切った。近くにいる人たちもパシャリやっていた。いかにも定番。こういうのでいい。こういうのがいい。

 待ち合わせ場所に移動。友だちにピックアップしてもらった。新潟で買った車らしい。雪国で暮らすのははじめてだから、いつ頃、タイヤを変えたものかと緊張していた。暖房代がいくらかかるとか、生活費の予想がつかないと言っていた。

 とりあえず、家に招いてもらった。お土産に崎陽軒の焼売を渡した。忙しいし、あまり自炊はしないらしいけど、米は美味いから炊いているとか。こしいぶきが好きらしい。だったら、レンジでチンして食べられるおかずはちょうどいい。たぶん、喜んだもらえたはず。

 しばらくおしゃべりした後、街へ繰り出した。ネットで有名なバスセンターのカレーが食べたいと言ったら、万代シティに連れて行ってくれた。ショッピングモールみたいなところと聞いていたけれど、そこには伊勢丹があるし、グッチなどの海外ブランドもあるし、リトル新宿といった様相だった。

 バスセンターというネーミングから小規模なものを想像していたので驚いた。駅前もかなり盛り上がっていたけれど、バスセンターの方が明らかに活気があった。この辺の秘密は後ほど、ゆっくり腰を落ち着けたとき、ネットで調べてわかってくるのだけれど、このときはバスセンターのカレーが我々が思っているよりハイカラな場所の食べ物なんだと認識を改めるに留めた。

 行列に並びつつ、サイズをどうするか悩んだ。せっかくだし、たくさん食べたい一方で、これからいろいろ呑みに行くことを考えたら控えないわけにはいかない。ミニカレーを選んだのだが、これも別にミニって言うほど小さくはなかった。ふー。普通のやつを頼まなくてよかった。

 さてさて、噂通りの黄色にテンションが上がる。こういうところで食べられるカレーとは思えないほど具材がゴロゴロ入っていた。小麦粉が多めに入ったルーはシチューのようにトロッとしていて、一見すると甘そうだけど、口へ入れたら意外や意外! 本格的にスパイシーで目が覚める。

 舌鼓を打ちつつも、気になるのはどうすればカレーがこんなに黄色くなるのかという謎。普段、家でスパイスカレーを作るけれど、こんな色になったことはない。

 ターメリックが大量に入っているのか? 着色料を使っているのか? いや、どちらも味がよくなるわけじゃない。そんなことにわざわざコストをかけるとはとてもじゃないけど思えなかった。

 バスセンターのカレーが黄色い理由について検索してみても、それらしき答えは見つからなかった。これは自分でいろいろやって、検証しなくてはいけないだろうか。そう覚悟を決める直前、違うお店の黄色いカレーを再現している記事を見つけた。

 それによれば、小麦粉とラードを同量にすることでルーは黄色になるそうだ。え? そんな単純な話なの? なんかには信じられないが、なるほど、たしかに黄色くなっている。今度、家でスパイスカレーを作るときに試してみよう。ただ、とんでもないカロリーになりそうで恐ろしい。

 カレーを平らげ、外に出ると小雨が降っているせいか、肌寒かった。残暑のつもりだったので、羽織るものを忘れてしまった。慌てて、GUで買い物をした。なんだかドラクエなどで新しい街に着いてすぐ、武器や防具を整える勇者のような心境だった。

 準備万端、冒険に繰り出した。目当ての店は半身揚げが有名なせきとりさん。今回は古町の店舗を目指した。

 途中、西堀ローサという地下街を通っていたら、賑やかな笑い声が聞こえてきた。楽しそうな雰囲気に誘われていくと、大喜利大会をやっていた。

 オダニハジメさんという新潟で活躍する芸人さんが主催で、一般の人たちがフリップを持って、次から次へとお題に答えまくっていた。

 老若男女が絶え間なく回答を出し続ける様は圧巻だった。しかも、普通に面白い。新潟、レベル高っ! と驚愕しつつ、しばらく熱き戦いに目を奪われてしまった。

 それから、せきとりさんに向かうも満席で入ることができなかった。予約しておくべきだったかと後悔しつつ、路地裏をぶらぶら彷徨っていると舞妓さんとすれ違った。さすがは日本を代表する花街。伝統が息づいている。

 この近くに感じのいいお店があったので、とりあえず、入ってみることにした。

 名前は吟さん。日本酒と蕎麦が売りのお店らしかった。

 生憎、わたしは蕎麦アレルギーなので、日本酒とつまみでちびちびやるしかなかったが、どれも絶品で当たりも当たり、大当たりだった。

 お造りはもちろん、栃尾の油揚げだったり、ノドグロの煮付けだったり、地元の豚肉を使った生姜焼きだったり、最高も最高だった。

 ご飯を食べながら、新潟の街がどのように発展してきたのか調べてみた。

 歴史的に港町から始まっている新潟なので、もともと人々は海寄りのエリアに集まっていたという。古町が花街として成長したのもそういう理由によるものだった。

 その後、鉄道が敷かれるわけだが、信濃川がある関係で駅を海寄りに作ることができなかった。予算的に橋を作ることができなかったのだ。これによって古町は駅から遠いにもかかわらず、活気を失わずに済んだという。

 さて、そんな古町と新潟駅のちょうど中間地点に立てられたのが前述の万代バスセンター。当然、最初は交通の便が目的だったが、1950年代に進んだ新潟市内の地盤沈下や1964年の新潟地震によって、バス利用者が激減。このままだとヤバいという危機感から、1970年代、新潟交通はバスセンターを商業施設として活用する方針へと打って出る。

 ダイエーが入り、伊勢丹ができ、ジョイポリスが作られたというからめちゃくちゃ凄い。もし、当時の新潟に暮らす若者だったら、毎週末、万代シティに行っていたことだろう。こうして、古町は名前の通り古い街となり、万代シティは新しい街としてのアイデンティティを獲得するに至ったという。

 これが他の地域だったら、駅前を中心に再開発が行われているケースがほとんどだろう。そう考えると信濃川の存在がいかに大きいか思い知らされる。

 さて、友だちが〆の蕎麦を食べている横で、わたしはそんなことをせっせと確認していたわけだが、ちゃんと胃袋にスペースは残しておいた。というのも、せきとりの半身揚げを諦めてはいなかったのだ。

 リベンジで再訪した。さすがに夜も22時を回っていたので、お客さんは少なかった。カウンター席に倒してもらって、待望の半身揚げを注文した。値段は時価! 期待値が高まる。

 しっかり調理時間が経過した後、でっかいやつが現れた。ジューシーで、柔らかくって、カレーの風味が食欲をそそる。ここにきて、ビールに戻らざるを得なかった。

 食べ物を食べ物で喩えるのはタブーとされているけれど、要するに、でっけいケンタッキーといった感じ。さすがにアメリカナイズされたスパイスの方が中毒性はあるけれど、もし、これをケンタッキー日本上陸前に食べたとしたら、目玉が飛び出るほど感動しただろうなぁって想像される。

 ローカルフードって、そういう歴史とセットで食べたくなるよね。これだけ飲食店が多岐に渡っている現代の価値観に基づいてしまったら、なんだって、東京で食べられるの一言で終わってしまう。そうではなくて、これを最初に食べた地元の人たちはどのように魅了されたのか、考え食べると頭に美味しい。それが嬉しい。

 満腹になり、店を出た。あとは寝るだけなのでのんびり深夜の古町を歩いていたら、忠犬タマ公と再会!

 本当に愛されているんだなぁと感慨深くなってしまった。

 次の日は遅めに起きて、お昼ご飯にタレかつ丼発祥の店、とんかつ太郎に行ってみた。昨日のアルコールが抜けていないにもかかわらず、ビールを頼んでしまえるところが旅行の醍醐味。日頃の摂生を台無しにするのはもったいないけど、ええい、ままよとて。行くしかないでしょ!

 食後は近くにあった新潟市マンガの家という施設に寄ってみた。新潟にゆかりのある漫画家の展示を行っていて、赤塚不二夫とか、水島新司とか、高橋留美子とか、錚々たる面々の名作を久々に乱読した。

 その中でも『パタリロ!』コーナーがあるあたり、よくわかっている。クックロビン音頭が飛び出していたので、思わず、写真を撮っちゃった。

 まだまだ食べたいものがあったけど、タレかつの直後に行けるはずもなく、こんな風に文化的なものに触れることにした。

 歴史博物館みなとぴあでこの辺りの歴史を学んだ。

 上映されているビデオを見て、展示を見て、気になるワードをググってを繰り返し、少しずつだけど新潟の解像度が上がってきた。ここでもやはり信濃川の話がたくさん出てきた。

 江戸時代の間、密輸の中継地として重宝されたエピソードは刺激的だった。幕末に開かれた五港、横浜・神戸・長崎・函館・新潟に選ばれたのもそういう経緯によるものらしい。ただ、場所的に欧米の国々は日本海側の新潟港を利用するメリットがなかったとかで、期待していたよりは外の文化が入ってはこなかったと書いてあった。

 そんな新潟が国際的な影響力を持ち始めるのは満州国が建てられ、新潟から北朝鮮を通るルートで人や物が大量に動いたことがきっかけなんだとか。

 いやはや、大学受験で日本史は相当勉強したつもりだったけど、まだまだ知らないことがあるんだなぁと気付かされる。こういう地域の歴史は現地の博物館を見て回らなくちゃわからないので、個人的には旅行のマストな目的地のひとつになっている。

 帰りの新幹線まで3時間ぐらいあったので、みなとのマルシェピアBandaiへ移動した。目当てはそこに入ってから回転寿司の弁慶。以前、テレビで有吉弘行さんが激賞しているのを見て、ぜひ行ってみたいと思っていたのだ。

 お昼時を避けているし、すんなり入れるだろうと思ったら、2時間待ちと言われた。さすがは人気店。三連休となれば、どんなに中途半端な時間帯でも混み続けている。

 タイムリミットの関係で泣く泣く諦めなくてはいけないのだろうか。そう落ち込んでいると、隣に弁慶の立ち食いバージョンを見つけた。ダメ元で入ってみると、こちらは1時間待ち。

 よし! 立ち食いにしよう!

 市場を軽く見て回り、ソフトクリームを堪能しながら名前が呼ばれるのを待った。

 塚田牛乳で作ったソフトクリームと言っていた。なんでも、新潟の給食でお馴染みのやつらしい。口溶けサラリで美味しかった。

 けっこう歩き疲れていたので、ぼーっとしているのが心地よく、1時間はあっという間に過ぎ去った。正直、立ち食いはしんどかったが、背に腹はかえられない。ワンカップの日本酒片手に、握りのセットを注文した。

 これがもう期待通りも期待通り! 2,000円ちょっとでこのクオリティって、新潟住みたい! 良過ぎるって!

 残念だったのは三連休中で切れているネタが多かったこと。本当は佐渡産の煮ダコなんかも食べたかったが、それは次回の楽しみにとっておくことにした。

 夕方になり、新潟の旅もいよいよ終わり。駅に向かう途中、再び、バスセンターの前を通りかかった。芳醇に漂うカレーの香りに惹かれながらも、そういえば、もうひとつの新潟ローカルフードを食べていなかったと思い出す。

 寿司の後にジャンクなものを摂取するのはいかがなものかと逡巡したが、寄っておかなきゃ後悔するぞの精神で、みかづきに駆け込み、イタリアンを決めてやった。

 うどんみたいな焼きそばにミートソースがたっぷりかかったB級グルメの中のB級グルメ。自分の中に存在しないはずの懐かしさが立ち現れてくるから不思議。

 習い事なんてしてなかったけど、小学校の放課後、スイミングスクールを終えた後、みんなでみかづきに集まって、イタリアンを食べていた気がしてくる。完全なフィクションだけど。

 本当は青島食堂で生姜醤油ラーメンも食べたかったけど、今回はここでタイムアウト。お土産をささっと手に入れ、新幹線に飛び込んだ。

 帰りは眠ることにした。お酒はもういいやって。でも、車内販売がやってしたとき、ガバッと目覚めて、例の硬いアイスは買ってしまった。ストロベリー味があったので、それにしてみた。

 帰宅したらすぐに眠った。翌日、買ってきたものをあれこれ食べた。佐渡のお米にバスセンターのカレーをかけてみた。

 あと、新潟県立海洋高校の生徒たちが開発に関わったという味付きノリも買ってみた。こういう地元の学生さんが参加している商品は買いたくなっちゃうんだよね。素敵だなぁと思う。

 笹団子も買ったよ。結構すぐに悪くなるみたいで、慌てて食べちゃったけど、やっぱり美味しい。定番のお土産って安定している。

 とりあえず、友だちは少なくとも2年は新潟にいる予定とのことなので、また遊びに行きたいなぁ。次は日本酒を購入し、家で呑むというのもよさそう。原信でおつまみを用意して、だらだらやるのも楽しそう。

 いやはや新潟、いい場所でした!




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