【料理エッセイ】中学生の頃にやっていたジュニアリーダーの先輩たちとバーベキューで茄子を焼いたよ。肉も焼いたよ。美味しかったよ。
中学生の頃、わたしはジュニアリーダーをやっていた。地元の子供会がクリスマス会などのイベントをするとき、司会進行をしたり、レクリエーションを取り仕切ったりするボランティアみたいなもので、毎週末、忙しく活動していた。
なんとなく始めた割にはけっこう楽しく、中2の頃、会長になるほど深くコミット。歳上から歳下まで、幅広い人たちと関わった。
特に、高校生の先輩たちがいろいろと教えてくれたのは大きかった。公立の中学生が高校生と話す機会なんてほとんどなかった。制服の着崩し方とか、バイトの話とか、恋愛のあれこれとか、大人だなぁと思ったものだ。
でも、中3になり、高校受験を頑張るようになったせいで、わたしはジュニアリーダーと距離ができてしまった。あんなに仲良くやっていたのに、和気藹々とやる暇があるなら、ひとつでも多くの英単語を覚えなくちゃと躍起になっていた。
無事、第一志望の高校に合格することはできたけれど、お世話になったジュニアリーダーの先輩たちには報告ができなかった。自分が失礼なことをしている認識があったので、嫌われているんだろうなぁと不安が広がり、メールを送る勇気も湧いてこなかった。
気づけば、大学に進学し、社会人になり、あっさり三十路を過ぎたとき、そんな先輩の一人から15年ぶりにメールが届いた。
なんでも、その先輩もいろいろいなことがあってらしく、ジュニアリーダーの人たちとは疎遠になってしまったが、みんなで楽しくやっていた時期が懐かしくて仕方ないとか。そのため、ダメ元で古いガラケーの連絡帳に登録していたアドレス宛にメールを送ってみたそうだ。
わたしはすぐに返信した。SIMフリーにした方が安いと知りつつ、万が一、むかしの知り合いから連絡があるかもしれないと、softbankのアドレスを変わらず持ち続けていてよかったとつくづく思った。
お陰様で不思議なことに当時の関係は復活し、定期的に集まってはバーベキューなんかをやる仲になっている。
昨日も雨なのにバーベキューをやってきた。川沿い、テオ・アンゲロプロスの映画みたいにどんよりと暗かった。
濡れないように橋の下を陣取った。アウトドアが得意な先輩が火を起こしてくれているうちに、わたしは野菜をカットした。
みんな、なんだかんだ歳をとっているので、バーベキューなのにベジファースト。まずは焼き茄子を堪能した。
ここからソーセージを焼いたり、ジャンボししとうを焼いたり、漬け込んだスペアリブを焼いたり、美味しいものを次から次へと楽しんだ。会話がわーっと盛り上がったので写真こそ撮っていないけれど、どれも最高に素晴らしかった。
わたしは免許を持っていないので、普段、自分主体ではバーベキューができない。だから、こういうとき、地元の先輩たちが頼もしい。
やたら旨味の強い調味料を使わせてくれたり、さけるチーズを焼いたらヤバいよと教えてくれたり、この年齢でも教わることがたくさんある。
最後、切れ込みのたくさん入ったステーキを焼いてもらった。勢いが落ちてきた炭火をうまいこと真ん中に集中させて、とろ火でじっくり攻めていた。こんがりとした見た目があまりに映えていたので、久々に写真撮影を思い出し、パシャリ。ナイスですね!
いっぱい飲んで、いっぱい食べて、いっぱい喋って、いっぱいUNOをやった。何回やっても、最後の一枚になったとき、「ウノ!」と言い忘れてしまうわたしに勝ち目はなかった。
止まることを知らない連敗記録に嫌気が差して、ふと、視線をあげてみれば、青空が笑っていた。
わたしは地元の暮らしが嫌で東京を目指した。その思いはいまも大きくは変わらない。でも、こんな風に、ひょんなことから地元の先輩たちも遊んでみれば、なにがそんなに嫌だったのだろうとむかしの自分がわからなくなる。
ある意味、それは成長なのかもしれない。狭い視野で物事を判断し、凝り固まった偏見で良し悪しを決めていた愚かさからの卒業であり、喜ぶべきことのように思えてしまう。
ただ、同時に寂しくもある。ここ以外のところへ行きたいという欲求だけで、いまのわたしは出来上がっている。そのことを否定したくないという小さな意地が、まだ、心のどこかに残ってはいるようだ。
京王線に乗って、地元から新宿へ向かいながら、頭の中で吉田拓郎の声が聞こえた。
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