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【短歌】選者に認められる短歌とは? その謎が岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』を読んで、あっさり解けた! +毎日短歌 10月28-11月6日分

 最初は短歌の詠み方を知りたくて、短歌の入門書を読んでいたのだけど、次第にそこで書かれている考え方の面白さに惹かれて、短歌入門書マニアのようになってきた。

 考えてみれば、入門書って、一流の歌人が己の経験やノウハウを体系的に示してくれているわけだから、当然、そこにはとんでもない知見が含まれている。短歌って、そんなにも凄いものだったんですね! と毎回感動してしまう。

 今回は塚本邦雄や寺山修司と並ぶ前衛短歌三雄の一人、岡井隆の『今はじめる人のための短歌入門』を読んでみて、これまで漠然と抱いていた疑問の数々が片っ端から氷解した。

 いや、ヤバ過ぎるって、岡井隆!

 どういうテクニックを使えば上手に短歌を詠めるようになるだろうとか、甘っちょろいことを考えていた自分が恥ずかしい。もっと素直に短歌が好きという大前提を大切にしなくちゃいけないと反省した。そういう諸々をひっくるめて、結論、これからは近代短歌を古典まで遡り、ちゃんとしっかり勉強します……って、真摯な気持ちが湧いてきた。

 と言っても、なにがなにやらだと思うので、どうヤバかったのかまとめていこう。

 まず、岡井隆はこう断言する。

 長いあいだ短歌をつくって来たわたしの実感は、短歌はむつかしいということであります。一部の天才的な作者をのぞいては、短歌をつくることは、困難な道であります。自分に満足のいく歌を生みだすためには、それ相応の努力をかさねなければならないのです。

岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』14頁

 なんだか受験生時代を思い出す。

 あるとき、先生に、

「どうすれば成績がよくなるの?」

 と、尋ねたところ、素っ気なく、

「勉強しなさい」

 と返された。

「それが難しいから聞いているのにー」

「うーん。勘違いをしているね。勉強っていうのはそもそも難しいものなんだよ」

「でも、頭のいい人は簡単にいい点数をとってるよ」

「いい点数をとって終わりならいいけど、勉強に終わりはないからね。ある単元で百点を取ったとしても、すぐにまた新しい単元と向き合わなくちゃいけない。そうやって常に困難を乗り越えていく行為が勉強だから、難しいに決まっているんだよ」

「えー。そんなのつまらないー」

「どうだろうね。僕は面白いと思うけどな」

 当時はよくわからなかったけれど、諦めて、コツコツ勉強を始めた頃から、わたしも知らないことを知る喜びに目覚め出した。ようやく簡単な勉強というのはすでにわかっていることを反復しているだけで、あまり意味がないのだと認識できるようになり、難しいものが難しく感じられなくなったとき、はじめて人は学んだと呼べる状態になるのだと納得した。

 岡井隆が「短歌はむつかしい」と言っているのもそういうことなのではなかろうか。

 そして、そんな初心者の心をへし折る残酷な事実が提示に続き、短歌を詠むにあたって気をつけなくてはいけない基本的なポイントが丁寧に解説されていく。

 例えば、「なにを歌うか」という究極の問いに対してはこんな風に答えている。

うたうべきことなどは、この世にないといってもよく、また無数無限であるといってもいいのです。それは、その人その人が生きて生活しているあいだに、おのずから、その人の胸に落ちてくるといってもいいでしょう。また、短歌という詩型が、おのずから、呼びよせてくれるといってもいいのです。

岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』17頁

 また、正岡子規の「自分で短歌をつくると同時に、昔から今までの短歌(和歌)を読むことが、まず第一に、しなければならないことです」という趣旨の言葉を引用しつつ、他人の作品を読むことの重要性を説いている。

 作るとは、創作であります。
 読むとは、批評であります。
 作りつつ、読み、読みつつ、作るとは、自分の作品を、他人の作品によって測りつつ、批評しつつ、使っていくということであります。そのときに、子規をはじめとして、多くの先達がそういたしましたように、名人が、自分にのりうつったように、他人の言葉を盗んだり、他人の作品を模写したりする創作がはじまります。

岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』53-54頁 

 さらに、この他人の作品を読むべしという基本に従うことで、多くの人が疑問に感じている、短歌の良し悪しを決める選者と言われる人たちは何者なのかが、自ずと理解されてくる。

 選者とか、選考委員とかいう人たちは、いわゆる「専門歌人」であります。それでは「専門歌人」とは、なにかといえば、一言でいえば「近代短歌の歴史を知っている人」であります。かれら選者の人たち、いわゆる「専門歌人」には、作品の高下を判断する基準があります。その基準とは、近代短歌が、約百年のあいだに築いて来た価値基準であります。

岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』195-196頁 

 だからこそ、選者に短歌を認められないとき、わたしたちは自分の作品だけを見てなにがダメなのか考えても仕方がなく、近代短歌(および現代短歌)の文脈と照らし合わせて、どうダメなのかを考えなくてはいけないというのだ。

 批評用語の「平凡」「通俗」「もの足りない」は、すべて、比較の上に立って出て来た言葉だと理解なさって下さい。
 すなわち、だれかの非凡な作品にくらべると、あなたのこの一首は平凡なのです。だれかの高雅な作品にくらべると通俗なのであり、名歌秀作の完璧さにくらべれば、今一、もの足りないのであります。

岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』214頁 

 評価とは常に比較によって成り立っている。

 またしても受験を思い出してしまうけれど、一般的に入試とは合格者を選抜しているように見えて、実は不合格者を選んでいるんだよ、と教えてもらったことがある。

 大学側は定員いっぱいの学生がほしいけれど、一人一人の力をチェックし、入れるべき人を探すのは物理的に不可能である。そのため、全員に同じテストを実施せざるを得ない。ただ、簡単過ぎるとみんな解けてしまうので、あえて難しい問題を作り、それが解けないやつらをふるい落としていくのだ、と。

「つまり、難関大学に合格したからといって、君の頭がいいという証明にはならないのだよ。今回の審査基準において、落ちていったものたちよりも多くの問題を正解できたというだけの話。仮に審査基準が違っていれば、結果は変わっていたかもしれない。選抜というのは常に相対的な評価に過ぎないということを忘れないように」

 たしかに、その通りだと納得する反面、わたしはちょっと憤っていた。なぜなら、それを言われたのは先生に志望校の合格を報告したときであり、思わず、

「いいから、まずはおめでとうでしょ!」

 と、ありがたいお言葉を遮った。

 でも、改めて、比較検討なくして選ばれるということはあり得ず、そこには当然なにかしらの基準が存在しているという原則を忘れてはいけないと気付かされた。短歌も同様で、選者に認められたい場合、自分一人であれこれ悩んでいてもどうしようもない。選者が価値判断の基準にしている近現代短歌の歴史を押さえることから始めるべきで、故に、古典を読むことが重要となる。

 なお、いわゆる天才というのは、たまたま時代の基準とナチュラルに適応している人たちなんだと考えれば、その理屈を超えた強さに理屈を与えることができるかもしれない。

 もし、この世界に野球が存在しなければ、大谷翔平は単に球を速く投げて、棒を振ってものをめちゃくちゃ飛ばせるだけの青年だったかもしれない。将棋がなければ藤井聡太は順番になにかを動かすのが得意なだけかもしれないし、HIPHOPがなければCreepy Nutsはダジャレで早口を言える名人として忘年会を盛り上げていただけかもしれない。

 あまりに極論が過ぎるけど、要するに天才っていうのは天才になるための土壌が必要で、才能や努力の前にそれを評価する基準が世界に存在していなくてはいけない。

 このあたりのことは拙記事『「能力」が存在しないってどういうこと?』で取り上げた新書、鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化』に詳しい。

 これまで、わたしは一般的にいいとされる短歌について、よくわかっていなかった。さすがにそれを読み、ダメだとは思わないけれど、どうしていいとされているのか聞かれたら、適当に「なんとなく雰囲気が」としか答えられなかった。

 でも、選者の方々が持っている基準を知ることができて、近現代短歌の歴史を学べば、もっと短歌を楽しむことができそうだとワクワク盛り上がってきた。

 短歌はむつかしい。だけど、面白い。……いや、違うか。だから、面白い。

 岡井隆は入門書を通して、わたしたちがもっと短歌を好きになれるような魔法をかけてくれた。


◇毎日短歌 10月28-11月6日分


10/28 お題「灰」

比較して落ち込む夜は長いけど
最後はみんな灰になるから

 人生いろいろとは言うけれど、悩みはたいてい人間関係。それも誰かと比較して落ち込むケースがめちゃくちゃ多いと思っている。でも、考えてみたら、悔しいのって年齢が近い人の活躍だったり、年下の成功だったり、自分にはできないことをしている他人の栄光に嫉妬しているだけで、死んだ人に対しては特になにも思わないもの。

 だったら、視点をぐわっと上に挙げ、みんな最終的には死んで灰になるんだと思ったらいいんじゃなかろうか。比べることがバカらしくなるかもしれない。


10/28 一字題「歌」

風呂場から漏れるジジイの鼻唄に
耳をすませばこっちのけんと

 この前、近所の商店街を歩いていたら、ヨボヨボのおじいさんが鼻歌でこっちのけんと『はいよろこんで』を唄っていた。トレンドを追いかけているんだぁとビックリしてしまった。

 もし、おじいちゃんの家に泊まって、風呂場からこっちのけんとが聞こえてきたら笑っちゃうかもしれないなぁ。名曲は世代を超えるとはいえ、驚かずにはいられないよね。


10/28 テーマ「選挙」

落ちるべき人がしっかり落ちていて
民主主義って案外いいね

 この前の衆院選の結果を受けて。立場によって感じ方は違うかもしれないけど、裏金議員の多くが落選し、概ね納得のいく選挙になったんじゃないかと思う。

 民主主義の是非を問う声はたびたび出てくるけど、こういう風にちゃんと選挙で民意が反映されると、まだまだ捨てたもんじゃないなぁと嬉しくなってしまう。


10/29 お題「氷」

その氷溶け切るまではわたしたち
恋人だから……泣きたくないの

 吉田拓郎の『外は白い雪の夜』が好き。松本隆の作詞がやたらいい。特にこの部分。

あなたが電話でこの店の名を
教えた時からわかっていたの
今夜で別れと知っていながら
シャワーを浴びたの哀しいでしょう
サヨナラの文字を作るのに
煙草何本並べればいい
せめて最後の一本を
あなた吸うまで居させてね

吉田拓郎『外は白い雪の夜』より

 あー、もう無理なんだろうなぁ。そんな風に悟りつつ、でも、形だけでもちゃんと話さなきゃいけないとき、この歌詞を思い出す。タバコは吸わないから、アイスコーヒーの氷が溶けるまでは仲良いフリをしようね、と。


10/29 テーマ「負け惜しみ」

逆説が口癖な人きついよね
え? わたしもそう? いや違うでしょ!

 負け惜しみする人って、すぐ、逆説で話し出すんだよね。ただ、そんな風に言っている人に限って、自分も逆説を使いガチだからタチ悪い。

 え? わたしも?

 いや、そういう話じゃなくて!


10/29 一字題「宝」

一生の宝にすると言ったから
ここは寄せ書き専用の部屋

 部屋の片付けをしていて、困るのが学生時代にもらった寄せ書きとか手紙とか。若かりし頃の自分が「一生の宝物にします!」と言っていた姿が思い出される。

 これ、捨てられる人っているのかな。ミニマリストとされる人たちがどうしているのか気になる。

 たぶん、こんまりメソッドではときめくアイテムだよね。一応、わたしはそれを言い訳に心のこもったプレゼントはひたすら溜め続けている。いつか、マジで一部屋埋まってしまいそう。


10/30 お題「地震」

揺れているような気がして問いかける
首傾げられちょっと恥ずかし

 揺れている気がしたとき、つい、近くの人に「揺れてる?」と尋ねずにはいられない。そのとき、電気の紐とか、テーブルの上の飲み物とか、揺れを感知するものをチェックした上で首を傾げられてしまうと、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 でも、そのあと、ネットで調べて地震情報を見つけたりして、わたしは鬼の首をとったように「やっぱり揺れてた!」と宣言する。たとえ、その場所は震度2以下であったとしても。


10/30 お題「金輪際」

金輪際会わないはずの人たちと
再会果たす地獄の門で

 もし、地獄が本当にあったとしたら、こうなるような気がしている。二度と会いたくないようなクソ野郎どもは何人もいるけれど、じゃあ、その人たちと比べて自分がまともかと聞かれたら、ぶっちゃけ、自信はない。

 たぶん、地獄の入口で再会することになる。あ、どうもって。あの節も、この節も、いろいろお世話になりましたって適当な挨拶をしちゃうんだろうなぁ。はぁ。嫌過ぎる。


10/30 一字題「味」

わたしだけ? コトコト煮込む料理って
味見のときが一番うまい

 カレーでも、シチューでも、豚の角煮でも、筑前煮でも、和洋中の種類を問わず、煮込み料理を作っていると味見が楽しみで仕方ない。「わたし、天才なのでは?」と悦に入れるぐらいに美味しい瞬間がやってくるのだ。

 不思議なのは完成し、盛りつけて、食卓で食べてみると普通になってしまうこと。いや、普通に美味しくはあるんだけど、キッチンで感じた煌めきはどこかへ行ってしまう。

 これって、わたしだけ? そうじゃないなら、科学的に分析の上、食卓で再現する方法を教えてほしい。切実に。


10/31 お題「缶」

缶蹴りの鬼やめられず三十年
いまも隠れた友探してる

 元ネタは寺山修司。

かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭

寺山修司『田園に死す』より

 また、この短歌をもとにした映像が映画『さらば方舟』にも出てきて、かくれんぼの鬼のまま、誰も見つけられなかった自分だけが置いてかれ、みんなは大人になっていくイメージが思春期のわたしに刺さりまくった。

 当時、すでにまわりと歩調を合わすことができず、高一で心療内科を受診するなど、将来に漠然とした不安を覚えていた。なにをしてもうまくいかなかった。

 一方、かつては一緒に遊んだ同級生たちはどんどん大人になっていく。バイトをしたり、恋人ができたり、専門学校に通い始めたり。

 あれからけっこうな時間が経った。いまもわたしだけは小学校の校庭で缶蹴りをした日々を懐かしみつつ、こんな風に、お金にならない文章をダラダラ書いて遊んでいるのだ。


10/31 一字題「反」

中華屋の古いサンプル反り返り
ラーメンの汁宙に浮いてる

 神保町にある中華料理屋さんの前を通ったら、ガラスケースに入った食品サンプルのラーメンがひっくり返っていた。なにがあったか知らないが、相当派手にやったらしく、麺を柱にスープが宙を浮いていた。

 そのときは偉いことになっているなぁと通り過ぎた。でも、何度か同じ道を通るうち、一向に直されない食品サンプルを見て、「もしや本当にここのラーメンはこういう状態で出てくるんじゃなかろうか」なんてことを考えた。なお、怖くて中には入れていない。


10/31 テーマ「ハロウィン」

若者が恋しなくなりクリスマス
廃れた代わりハッピーハロウィン

 ハロウィンが盛り上がってからというもの、クリスマスの存在感が減っている気がする。なぜだろうと考えたとき、恋人のいない若者にとってクリスマスは楽しいイベントじゃなくなったんじゃなかろうかと思い至った。

 たぶん、これ、当たっている気がする。ハロウィンは友だち同士で集まれるし、たぶん、誰にとっても気が楽なのだろう。こんなところにも世代による価値観の違いが現れている。


11/1 お題「落書き」

いまはまだ落書きだけど待ってくれ
価値が出るからたぶん出るから

 画家を意識して詠んでみたけど、この気持ちはわたし自身も持っている。

 noteを毎日投稿しながら、内心、いつか価値が出るはずと魂を込めまくっている。じゃなきゃ、こんなに時間をかけられないし、読んで頂いたみなさんに申し訳ない。

 どのクリエイターもそうだよね。価値があると信じて発信しているんだよね。

 なんか、そういう人がこの世界にたくさんいるという事実をこういうプラットフォームを通して知れただけでもグッときてしまう。ひたすらに尊くて仕方がない。


11/1 一字題「犬」

権力の犬になったとバカにされ
嫌われてもなお平和のために

 警察の不祥事を目にするとなんだかなぁとなってしまうが、同時に、闇バイト事件など凶悪犯罪に命懸けで向き合っている姿を見て、やっぱり凄いと圧倒される。

 冷静に考えて、悪を取り締まる仕事ってめちゃくちゃだよね。危険極まりないというか、万が一のことがあったら絶対割に合わないというか。不祥事はもちろんダメだけど、警察って凄い仕事なんだとみんながちゃんと認識しておかないと、誰もやってくれなくなっちゃう。

 自衛隊とか、学校の先生とか、現場仕事とか、必要なのに人手不足な仕事って、そういう凄い仕事だって認識をわたしたちは忘れがち。


11/1 テーマ「夜が似合う短歌」

小四で紅白最後まで見れて
夜は長いと初めて知った

 元ネタは『ちびまる子ちゃん』で、まるちゃんが大晦日にはじめて年越しを経験するという話。その中でまるちゃんは初めて夜中が本当に存在しているのだと知ったみたいな描写があり、たしかに、わたしもそんなことを思ったなぁと共感した。

 子どもの頃、わたしは夜九時に眠り、朝六時に起きる生活をしていたので、夜中とは一度も会ったことがなかった。そんな中、小四ではじめて紅白を最後まで見て、まだ朝じゃないんだと驚いた。


11/2 お題「草」

放課後の公園包む草いきれ
知ってる? そこに死体があるの

 草と死体の組み合わせから青春を感じてしまうのは映画『スタンド・バイ・ミー』の影響なのは間違いない。幼い危うさは死体を求めてしまうんだよね。

 似たようなもので岡崎京子の『リバース・エッジ』や湯本香樹実の『夏の庭』なんかもそうだよね。草の向こうの死体に対する好奇心が子どもたちを大人にさせていく。どれも名作ばかり。


11/2 一字題「柿」

デザートは柿でいいよと君は言う
だったら手前で皮むけやオラ

 秋になるとデザートは柿を用意しがち。簡単なようで皮を剥くのは面倒くさい。ネットで簡単な剥き方を調べたら、①柿を四等分に切ります、②皮を剥きます、というクソみたいなライフハックが出てきた。それは知ってるの!

 ちなみに本当に役立つ方法として、ピーラーを使うというのが便利だった。果実を無駄なく食べることができていい。

 でも、できれば、みかんやバナナみたいに食べやすい皮になってほしいなぁ。まるで人間に食べられるための果物って感じなのが素晴らしい。


11/2 テーマ「出口」

なんとなく忙しい日々送ってる
どこに出口があるとも知らず

 最近、やたらと忙しい。本を読む時間もあまり確保できていなくてストレスが溜まる。でも、なにがどうして忙しいのか、理由がよくわからない。

 こうなったら落ち着くという目安が存在しない。そういう忙しさって心がやられる。でも、たいてい、そういうものなのかもしれない。とりあえず、暗闇を前に向かって走り続けるのが人生なのか。


11/3 お題「はじまり」

はじまりは自分で決められないから
終わりはちゃんと自分で決める

 これ、最初は恋愛について詠んだつもりだった。誰かを好きになるって、自分の意志じゃなくて、映画なら恋には落ちるし、フランス語ならつまずいてしまうもの。

 ただ、できあがったものをみると、安楽死の話みたいになってしまった。例えば、ゴダールなんかはそんなことを言っているような気がした。


11/3 一字題「回」

自らの尻尾追いかけぐるぐると
やってるポチ見てビールをごくり

 うちは犬を飼っていないけど、もし、飼っていたらこんな休日が最高だろうなぁと考えて詠んでみた。

 自分の尻尾を追いかけまわる姿って可愛いよね。


11/3 テーマ「禁止」

カービィでストーンしかせぬケンちゃんに
ずるいと言ったら負けな気がする

 スマブラの思い出。カービィをふわふわ飛ばして、ストーンになって吹き飛ばすって技が強過ぎて、ずるいなぁとやきもきしていた。でも、ルール上は禁止されていないし、そのことを口に出すものかと意地になって自分はリンクを使い続けた。

 わたしは幼い頃にゲームばかりして過ごした世代だから、懐かしい日々の記憶は画面の向こう側の風景だったりするんだよね。今後、そういう人は増えていくような気がする。

 所ジョージが言っていた。そんなにスマホばっか見てると走馬燈で他人が経験した記憶ばっか流れてきちゃうよ。これ、あながちだよね。


11/4 お題「夜」

「代々木ってもともと夜々木だったの」と
鼻孔広げた君を信じる

 明らかに嘘の情報であっても、発言者が魅力的だったら、信じてあげようかなぁとなびいてしまう。もちろん、それが詐欺ならノーというけど、あり得そうな偽豆知識なら「へー、そうなんだぁ」と感心するフリをしてと損はあるまい。


11/4 一字題「斜」

あの日から街中少しだけ斜め
人もわんこも猫背で歩く

 SF系短歌。たまに詠むんだけど、短い言葉で世界観がばーっと広がる感じが面白い。

 あの日になにが起こったのか。街中が斜ってしまったのにどうしてみんな暮らし続けているのか。考えだすといろいろ気になる。ここからショートショートに展開することもできるかも。


11/4 テーマ「顔認証」

目覚ましを止めるついでに顔認証
するも開かず別人言うな

 寝起き、顔認証がうまくいかないと舐めんなよって腹が立つ。

 わたしはわたしなんですけど!

 浮腫んでいるとか、目が開いてないとか、仕方ないでしょうが。仕方ないでしょうが……。 


11/5 お題「パズル」

偽物のピースなんだよわたしたち
なにをやってもダメなわけだね

 小学生の頃、児童館にパズルがあって、みんなで作って遊んだ。完成したと思っても、なぜか、ピースが余ってしまってなにが違うんだろうと戸惑った。

 結局、誰かが家から関係ないパズルのピースを持ってきて、混ぜていただかだとわかったのだが、なんとなく、その間違ったピースが可哀想になってしまった。

 ふと、そのことを社会でうまくいかないとき、思い出してしまう。いま、わたしもあのピースのように本来いるはずじゃないところに迷い込んでしまったいるのではなかろうか、と。


11/5 一字題「卵」

「卵しかないよ」で作ったぺぺたまを
裸のまんま頬張る夜更け

 プッタネスカというパスタがある。日本語にすると娼婦風パスタで、トマトベースにアンチョビとオリーブ、ケイパーを入れたもの。諸説あるらしいが仕事を終えた娼婦がキッチンにある適当なもので客に作ってあげた簡単レシピなんだとか。

 うちの場合、冷蔵庫に常備しているものと言ったら卵とニンニクぐらいなので、プッタネスカはぺぺたまになってしまうんだろうなぁ。


11/5 テーマ「電池」

適切な捨て方わからないせいで
空っぽなのに君手放せず

 これはシンプルに我が家の悩みです。空になった電池がどんどん増えて困っています。どうすればいいのだろう。


11/6 お題「血」

「俺の血はお酒なんだ」と笑ってた
祖父の遺体が青白く燃ゆ

 酒飲みの祖父が亡くなった。自宅で急死だった。久々に会う予定の数日前のことだった。「ビールはガソリン」「じいちゃんの血はお酒なんだよ」とよく買っていた。

 火葬に立ち会った。無論、お釜の中は見えないけれど、たぶん、血の代わりに流れていたアルコールに火がついて、青白く燃えていたんじゃなかろうか。


11/6 一字題「六」

六という割り切り易い人数で
呑んでいるのに孤立し爆食い

 六人の飲み会で会話にあぶれてしまったとき、自分はなんてダメなやつなんだろうと落ち込む。左右の話に耳を傾け、それっぽく相槌を打ちはするけど、なんかしっくりこなくって、結局、ご飯を食べ進める。

 学生時代、朝とか休み時間に話し相手がいなくって、でも、寂しいやつだと思われるのも嫌で、本を読んでいたことを思い出した。なにかしているやつになろうとしちゃうんだよね。まさか大人になっても変わらないとは……。


11/6 テーマ「お風呂の中の短歌」

シャワーでは洗い流せぬあれこれに
身体固まり今日も長風呂

 長風呂をするつもりはないけれど、結果的に長風呂になってしまうことがしばしば。リラックスしたとき、考えるでなしに日々のあれこれが脳内いっぱいに広がって、べったり全身を覆い尽くしてしまう。

 身体的にも精神的にも綺麗になることがお風呂の役割なのだろう。シャワーでささっと洗うだけでは終わらせられない。




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