本屋さん、長い間ありがとう <仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ>
9月末に私が住んでいる町の本屋さんが静かに閉店しました。
お店のシャッターには貼り紙がしてあり、「70年間のご愛顧に感謝申し上げます」と記されていました。
人通りが少なくなった商店街にあった本屋さん。詳しい理由はわかりませんが本好きの1人として残念でしょうがありません。
本屋さん離れは食い止めることはできないのでしょうか。
どうしたら本屋さんが存続していくのでしょうか。
個人経営の本屋さんは本を売るだけでなく、他のものを売る。イベントを行う。コミュニティを作るなど様々なことが求められるようになっているのかもしれません。
そんな中、ポプラ社の「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ 著者:川上徹也さん」を読みました。(単行本:1,760円)
実在する尼崎市にある小林書店の店主、小林由美子さんをモデルとした小説です。この小林さんに出版取次会社に勤める新人の大森里香(小説での人物)が教えを乞う物語となっています。
小林さんの書店経営に関してのエピソードが事細やかに描かれている中で、小林書店の強みを考えたというのがあります。
小さな書店にはベストセラーも新刊もこない。
それはすべて大きな書店に流れていくという現状。
じゃぁ、どうやったら送ってくれるようになるか?
一部紹介しますと、人気がある大手の出版社の全集を売ることを決めて40セットを予約してもらうことに成功しました。この実績を糧にしてその後も企画ものがあるたびに、丁寧に説明して予約を取り続け、「小林書店」のみならず他の本屋仲間にも広げていく。そして、家族にも日々感謝しつつ、出版社および取次会社と深い関係を築いていくのです。
しかし、いいことばかりではなく不運なことも訪れます。そこではお客さんなど多くの人が支えてくれ何とか乗り越えられたという箇所があり、由美子さんのお店には地元の人を始めとするファンがたくさんいるのだなぁと想像します。
出版社や取次会社も厳しい世の中だと思いますが、本を読む人にとって一番身近な本屋さん。その本屋さんの役割や存在がいかに大きなものだと痛いほど感じました。
馴染みの本屋さん、長い間お疲れ様でした。私にとって多くの本と出合わせてくれた貴重な憩いの場所でありました。そして、小林書店のような本屋さんが1店舗でも長く続けられるようにと願ってやみません。