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1960年代ロンドンの光と闇『ラストナイト・イン・ソーホー 』

早くサブスクに来ないかなと待ち望んでいた作品がついにアマプラへやってきたのを見たときは、いても立ってもいられず、友だちに「見て」とおすすめしまくっていました。1960年代ロンドンが舞台の、夢か現実か分からなくなるような展開とネオン輝く夜の街で繰り広げられる男女のアレコレが観る人を引きこむサイコスリラー『ラストナイト・イン・ソーホー 』です。映画館で観て以来虜になって、まだかまだかとサブスク配信を待っていました。20世紀半ば、ロンドン、夜の街、スリル、これらの言葉にピンと来たら、ぜひ観てほしい。

『ラストナイト・イン・ソーホー 』監督&概要

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監督は、1974年生まれでイングランド出身のエドガー・ライト。これまで『ベイビー・ドライバー』や『ホットファズ』などを制作しており、スタイリッシュな演出やテンポの良いストーリー展開が特徴。

『ラストナイト・イン・ソーホー 』は、日本では2021年12月に劇場公開された、1960年代イギリス・ロンドンが舞台のサイコスリラー映画です。60年代のカルチャーを反映した音楽やファッション、建物、雰囲気などが美しい。R15がついていて「怖い」との評判もあるけれど、怯えるほどではないかと思います。少しホラーチックな描写が一瞬出るのと、常に次のシーンがどうなるのか気になるようなハラハラした展開が多いくらい。『エスター』『羊たちの沈黙』『セブン』あたりを観れる人なら余裕です。雰囲気やレベル的には『ジョーカー』『シックス・センス』らへんが似ています。

『ラストナイト・イン・ソーホー 』あらすじ

主人公のエロイーズはファションデザイナーを夢見る女の子。念願叶い、ロンドンのデザイン学校に入学します。しかし田舎から出てきた彼女は都会っ子の同級生たちと馴染めず、寮を出てソーホーの片隅にある、初老の女性の家で”下宿”のような形で暮らし始めます。そこで眠りにつくと、なんと夢の中で1960年代のソーホーへトリップ!

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そこで歌手を夢見るブロンドヘアーとバッチリメイクが印象に残る魅惑的な女性サンディに出会い、次第に身体も感覚も彼女とシンクロしていきます。充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、タイムリープを繰り返す。しかしある日、夢の中でサンディが殺される場面を目撃してしまいます。その日を境に現実世界で謎の亡霊が現れ、徐々に精神を蝕まれ…。そんな中、犯人が現代にも生きている可能性に気づき、たった一人で事件の真相を追いかけることに。

ソーホーとは?

本作は、ソーホーというエリアがメイン舞台となっており、それはロンドンのシティ・オブ・ウェストミンスターという、ロンドン中心部にあるロンドン特別区の一つです。20世紀に歓楽街として発展し、今でもグルメ、ショッピング、ナイトライフまで、エンターテイメントで溢れる街。特に1960年代後半には、ファッションや音楽をはじめとするストリートカルチャーが爆発的に流行し、「スウィンギング・ロンドン」とも総称されます。


『ラストナイト・イン・ソーホー 』を観て、感想

シビれる!の一言につきます。田舎から出てきたキュートな女の子が、1960年代ロンドンに生きるサンディと出会い、彼女の無念を晴らすためにもがき苦しみ、夢か現実か分からなくなるほどの目まぐるしいストーリー展開を経て最後に待ち受ける衝撃は、単に「面白かった」では片づけられない強い印象を与えます。

また、ネオン輝くロンドンの街並みが非常に綺麗。華やかさと闇の両面を持つ街って、なぜこれほど魅力的なのでしょう。夢・欲望・人情が渦巻く場所でめげずに生き抜く登場人物たちから、情熱と、しんどいときも生き抜く力をもらえます。昨年映画館で公開されたときに観て以来、ずっと、もう一度観たいと思い続けていました。印象に残り教訓になり、憧れを抱いた映画。20世紀半ばのヨーロッパや、輝く街に潜む闇、サスペンス、スリルが好きな人は、絶対好きになります。


次に観るならコレ|『ラストナイト・イン・ソーホー』を観て気に入った人におすすめしたい3作品

ネオンが印象的で、感情を丁寧に繊細に描いた3作品をピックアップ。きっと好きなる!と太鼓判を押せるほどの素敵な作品です。すでに観たことがあるものもない作品も、手にとってみてください。ほかにもおすすめ作品があれば、教えてほしいです。観ます。

心の変化が繊細に、けれどしっかり描き出された『ジョーカー』

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心優しい主人公が、思いがけないつまづきを機にだんだんと、でも確実に心を壊していく様が、しっかりと描かれています。1,2箇所を除き、特別派手な演出は用いられないからこそストーリーにのめり込み、心にくるものがありました。忙しいとき、もう嫌だとなったとき、ふとした瞬間に観たくなります。自暴自棄になったとしても、まだ頑張ろうと思ったとしても、どちらも正解だと思わせてくれる映画です。


陰と陽、憎しみ、復讐、深い闇で貫く信念とその顛末は?『プロミシング・ヤング・ウーマン』

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『ラストナイト・イン・ソーホー』とほぼ同じ時期に公開され、映像のイメージや展開、テーマがよく似ています。夜な夜なバーへ繰り出して、男性をお持ち帰りするその目的は? ただ一つの信念のために、危険な状況も一切顧みず突き進む姿には、ただ「感服」の一言です。決して褒められた行動じゃないけれど、彼女と周りの人たちが経験した過去を知ると、少しだけ共感できるかも知れません。

エレベーターでのあのシーンが忘れられない!『ドライブ』

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アクション映画の割に、ストーリーは淡々と進みます。昼間は映画のスタントマン、夜は強盗を逃すための運転手という二つの顔を持つドライバーと、同じアパートに暮らすアイリーンが偶然出会い次第に仲を深める一方、アイリーンの夫が服役から帰って以降は思うように進まなくてもどかしい。本作、何よりも好きなのはエレベーターでのあのシーン。これまで隠してきた本性を、嫌われること・離れることを覚悟した上で、それでもこれまでの行動や想いは本物だったよと伝えるためだったのかなと考察しています。この映画を観て以降、小さくて少し寂れたエレベーターに乗るときは、毎回あの熱いシーンが思い浮かびます。


次の日が仕事休みの夜に、お酒と簡単なおつまみを片手にボーッと観るのがぴったりな映画たち。気になる作品があったら嬉しいです。人の闇を炙り出した少し暗めの内容や、夜や哀愁漂う街が舞台の映画が好きなので、そういった作品を紹介することが多いです。逆境に負けずに踏ん張る強い人が主役の映画も好き。今回紹介した作品全てに当てはまります。みなさんも、おすすめの映画がありましたらぜひ教えてください。


良ければこちらも覗いてみてください。

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