B2B SaaS企業のカンファレンス主催(企画~運営)ことはじめ
■ これは何
・自社カンファレンス「Customer Engagement Conference TOKYO 2020」を実施した経験を元に、B2B SaaS企業においてカンファレンスを主催することの意義や背景について書いたドキュメントです
■ どんなことが書いてあるか?
・B2Bマーケティングにおいて「カンファレンス主催」という施策が近年盛んに行われている背景の考察や実行する上でのメリット/デメリットなどを自身の経験を元に書いています。
・「なんか最近B2Bベンチャーが主催するカンファレンス多すぎじゃない?😶」と思っている人や「web広告やセミナーなどの刈り取り施策では新規リードが取れなくなってきた…💀」という人はぜひ読んでみてください。
・20,000字くらいあって卒業論文級に長いので、お忙しい方は目次から自分の読みたいところに飛んでそこだけ読むのがお勧めです📖
・読んでみて「もっと詳しく聞きたい!」、もしくは「長すぎて読めない🙄口頭で内容教えてくれ!」という方に向けて、3/3(火)にこの記事の内容やカンファレンスに関するぶっちゃけ話をする勉強会をやります。そちらも興味がありましたらぜひお越しください👐
情報交換したい方もお待ちしてます☕
そもそもカンファレンスとは
そもそも何をもって『カンファレンス』なのか?
wikipedia先生に聞いてみたのですが、なんか期待していたのと違う…🙄
会議(かいぎ、英: meeting/ミーティング、conference/カンファレンス)は、関係者が集まり、特定の目的(議題)に関して意見交換・審議し、合意・施策などの意思決定をすること、およびその物理的構成員の集まりを意味する。また、「会議」には、それらの集まりを計画・管理・運営する組織(合議体)の意味もある。 英語のmeetingは集まり・協議を意味し、conferenceは協議および協議体を意味する。
(ウィキペディア『会議』より抜粋)
もう少しググったらなかなかに腹落ちする説明を見つけました。
"カンファレンスは、先行きが不確かな分野について、先行的な複数の専門家・実務家・学識経験者が発表と議論を繰り広げ、聞き手も一緒に将来性や実現性、方向性を考える。
話し手はたとえ主観的でも自分なりの考え方を述べることが求められ、話し手による議論を通じて未来を明らかにしようと試みる。登壇者は、話し手となるスピーカー複数名、聞き手役のモデレータ1名から成り、多くの参加者も議論に加わるような関係性で成り立つ。
平行線のまま終了することもあるが、結論を出すことは目的ではない。議論の過程で現れるスピーカーの思考方法や本音を知り、参加全員が自分なりの考え方・方向感を持つことが目的である。"
(『知っておきたいセミナー・研究会・カンファレンスの違い』より抜粋)
「先行きが不確かな分野について議論を繰り広げる」「結論を出すことが目的ではなく、参加者全員が自分なりの考え方・方向感を持つことが目的」というあたりがセミナーとは違うポイントみたいです。
英語でググってもこれだ!と思える説明が出てこなかったので、本稿では上記説明を参考に、IT/スタートアップ界隈で使われる『カンファレンス』という言葉をざっくり「ある一つのテーマに関して業界の識者たちが発表や議論をし未来を明らかにしようと試みる目的で行われる、半日~3日間くらいかけて行われる大規模なイベント」という理解で進めます。僕らの主催したカンファレンスもこの定義の範疇です。
カンファレンス多すぎ問題
カンファレンスという言葉の認識統一ができたところでいよいよ表題の件。
IT業界、とりわけSaaS界隈にいる皆さんのなかにはこう思っている人も少なからずいるでしょう。
さいきんB2B SaaS主催のカンファレンス多くない?🙄
そんなに行けないんだが...😣
てか傍から見ている限りコスパの良いマーケティング施策では無さそうですね🤔
食傷気味になる気持ちもカンファレンスの効果に懐疑的になる気持ちもめっちゃわかります。かく言う自分もそうでした。
なんなら社として「カンファレンスやんぞ🔥」と意思決定する少し前にイキった発言もしていました。もし過去に戻れたら全力で殴りに行きたい…
まあ実際、自社でがっつりカンファレンスの主催に携わった実感値としても、単純に「準備にかけた時間 + 金銭的コストの総和」と「リターンとしての獲得リード数の総和」で比べると、もっと効率の良いマーケ施策はあるなあと感じます。
カンファレンスバブルに関する考察
こうした「労多くして功少なし」な印象も拭えないカンファレンス主催という施策ですが、なぜB2B SaaS企業はこぞって開催するのでしょうか?その背景をちょっと考えてみます。
■ 国内外のSaaS市場の盛り上がり
昨今のSaaS市場の活況は1つ理由になるかなと思います。
『SaaS市場規模・トレンド徹底解説!SaaS業界レポート2018』より抜粋。出所はBessemer Venture Partners「State of the Cloud Report 2018」
猫も杓子もSaaSなスタートアップ界隈。
特にシリーズB以降では国内でも数十億円規模の大型調達が実施されることも珍しくなくなり、多くの企業は調達の使途を「マーケティング活動に充てる」と言っています。
昔よりも手段が増えたとはいえ、B2CほどマスプロモーションのレバレッジがかかりにくいB2B SaaS商材。
そんな商材を売っている企業の大型調達が増え、潤沢なマーケ予算の予算投下先としてカンファレンスを実施する。だからカンファレンスが増えている。というのは背景としてありそうです。
■ イベントマーケティングの重要性の高まり
これも多くのB2B SaaS企業にとっては既知の事実だとは思いますが、マーケティング施策のなかでもセミナーの開催といったイベントマーケティングに注目が集まっていることとも関係がありそうです。
以下は対面でのイベントマーケティングの重要性を示したアメリカのサーベイ。回答者1,000名のうち41%が「イベントは効果的なマーケティング施策である」と答えています。
In a survey of 1,000 mid-to senior-level marketers across sectors, in-person events was considered the single most effective marketing channel by a 41% share of respondents from all sectors.
(『B2B Tech Marketers Get Results With In-Person Events』より抜粋)
”Paid Social” が2つあったり項目にMECE感がない若干アヤしい調査結果ではありますが、それにしても圧倒的な結果👀
イベントマーケ、めちゃめちゃ大事ですよね。ちなみに当社もけっこう前から頑張っていて、マーケ組織がまだ1人の時からもりもりイベントをやっており、初期のマーケティング活動の中心になっていました 💪 詳しくはこちらに。
今もB2B業界のイベント芸人こと井上さん(@yu_jin_iphone)を中心にもりもりやっています。
■ B2B SaaSにおけるブランディング施策の重要性の高まり
あとは、中長期的なブランド施策の一つとしてのカンファレンス開催。主催している個々の企業にまでフォーカスしたミクロな視点としては、これがもっとも当てはまりそうです。
下記はSmartHR岡本さん(@takaokamoto1)の「組織をリードマネジメントとブランドマーケティングに分けるぜ!」という記事ですが、中長期的な認知施策の重要性から組織を再編したと書いていらっしゃいます。わかる、わかりすぎる~~~
1つ目は、事業として顕在層・顕在的なリードは、すでにかなり取れてきてしまっていることに起因しています。まだ顕在化していない潜在層へ認知、好感を高めることと同時に既存ユーザーとのさらなる強い結び付きに重要さが増してくるフェーズになってきたということです。
(『SmartHRのマーケティング組織Ver.2020』より抜粋)
また、「ブランディング」という言葉こそ使われてはいませんが、ファネル上部に位置する認知/興味喚起向けの施策にはイベントがもっとも効いたという調査結果も出ていました。
(※余談ですが、TOFUって最近聞かない気がします。もう死語なんですかね?😶)
76% of survey participants named in-person events as their most successful top of the funnel engagement tactic.
(『In-Person Events Ranked #1 Among B2B Demand Generation Tactics』より抜粋)
顕在層に対する刈取り的な手法の限界→ブランディングとLead-Genの両面でメリットがありそうなカンファレンスをやろう!というのは背景としてありそうです。
■ カンファレンスバブルに関する考察まとめ
昨今、カンファレンスが多くなっている背景とその考察をまとめるとこんな感じです。
・国内SaaS市場の隆盛、大型調達の増加 ≒ 多額のマーケティング予算を使えるB2B SaaSの増加 → 大規模予算の投下先としてのカンファレンス主催
・B2Bマーケティングにおいてイベントを重視する企業の増加 → オフラインマーケ施策としてのカンファレンス主催
・B2Bマーケティングにおいてブランディングを重視する企業の増加 → ブランディング施策としてのカンファレンス主催
なるほど、一見確からしい理屈ではある🤔
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しかし、本当に上記だけがカンファレンスを重視する企業が増えている理由なのでしょうか?
B2Bマーケで予算を大胆に使ったブランディング施策であればタクシー広告への出稿や展示会での大型ブース出展もありますし、イベントが注目されているというファクトデータも「セミナー/相談会/ミートアップetcを含めた対面のマーケティングが重視されてきている」と示しているだけで、「カンファレンスをしなさい」とまでは言っていません。
上記だけではこれほどまでに多くのカンファレンスがB2B SaaS事業者によって開催されている事実の説明にはやや不十分、というか考察が浅いように感じます。
ここからは、「カンファレンスという施策だけがもたらす価値」についてもう少し深堀して考えてみたいと思います。
カンファレンスという施策が生む代替不可能な価値とは
結論(というか持論)から言うと、他のマーケ施策では難しく、カンファレンスを主催することで生まれる価値は「エンタープライズ攻略への一手」と「エンプロイーエンゲージメントの向上」だと思います。
このあとの「カンファレンスはどの事業フェーズで始めるべきなのか」というパートで詳述していますが、カンファレンスを主催する企業の多くは創業から5年目以降に第一回を開催しています。
このフェーズのB2B SaaS企業で重要度の高い課題とは何か?
そう、ターゲット顧客の転換と拡大する組織を一枚岩にし続けることです。
・【事業成長の壁】SMBからエンタープライズへのターゲット転換
・【組織成長の壁】増え続ける人数と反比例する組織の強度
当社代表の平田(@bunkiten88)も、6期目に差し掛かるタイミングで売上の壁、組織の壁についてヤプリ庵原社長(@ihaemon)と話しています。
B2B SaaSスタートアップのミドル~レイターステージにおいて最もポピュラーと言っても過言ではない2つの壁。
それら課題の突破口となるマーケティング施策がカンファレンスなのです。たぶん。
カンファレンスとエンタープライズ攻略の関係
どういうことか?順を追って説明していきます。
まずはカンファレンスとエンタープライズ攻略の関係について。
Salesforceの佐藤さん(@satoryo23)が簡潔にまとめてくださっていますが、 一般的に大企業顧客は以下のような特徴が挙げられます。(勿論この他にもありますが)
このようにsmbとは勝手が異なるエンタープライズ企業に対し、カンファレンスという施策は様々な面で効果を発揮します。
■ アウトバウンドで接点を作りにいく武器に
エンタープライズを狙おう!となったときによくあるマーケ/インサイドセールスの悩みの一つは「顧客リストは作って担当部署の連絡先までは手に入れたのに会うきっかけが作れない 😢 」かなと思います。
コンテンツにもよりますが、通常のセミナーよりも登壇者が豪華だったりマーケティング/経営etcの上流の課題について話されるカンファレンスは、自社にまだ興味がないエンプラ企業をアウトバウンドで惹きつける強力な武器になります。
実際、カンファレンスに関するアウトバウンドメール施策は他のセミナー等のメールと比べて開封率、クリック率ともに1.3~2.2倍ほどとなり、普段は接触できない多くのエンプラ企業にお申込みいただきました。
集客ペースが予想以上に好調だったことも功を奏し、「いま申し込んでいただければ頑張ってお席確保しますので…!」といった直接招待のご案内もうまくできたかなと思います。(会場のキャパシティの関係でご参加の案内ができなかった方々、本当に申し訳ございませんでした。次回は必ず。)
また、アウトバウンドだけではなくインバウンドでもエンタープライズのリードが低CPAで獲得できました。(カンファレンス申込みページの広告出稿をインバウンドと呼んでいいのかと言われるとアレですが…)
ペイドでの集客チャネルはFBとTwitterがメインだったのですが、通常のセミナー集客の広告と比べて約6分の1のMQL-CPAで参加者を獲得できました。
また、こうしたSNS広告経由でも普段は接点を作れないエンプラ企業の方々にお申込みいただいたことで、「FBやTwitterといったプラットフォームではエンプラ企業にリーチできない」というわけではなく、単にこれまでは興味を持ってもらえるコンテンツを作れていないだけだということもわかりました。”Content is King”だなあと改めて実感。
■ 意思決定者の多さに対する受け皿に
名著『隠れたキーマンを探せ!』(実業之日本社)によると、B2Bの購買決定に正式に関わる人数は平均で5.4人であり、取引に関わる顧客関係者の数は年々増え続けているそうです。調査は「エンタープライズ企業を対象に」とは書いていないので、エンプラに絞って調査をすると関わる人数の平均はもっと高いのではないかとも思います。
また、かつては購買決定に関わっていなかった役割の人も関わるようになっているという傾向もあるそうです。
個人的な印象かもしれませんが、B2Bマーケ界隈ではこの”5.4人”という数字が一人歩きし、上記トレンドが示す課題を「キーマンを見つけるのが難しくなった」or「キーマンに辿り着くまでのパスが長くなった」と捉えている人が多いように感じます。
というか、この本の英語の原題は『The Challenger Customer』で内容的にも前作の『チャレンジャー・セールス・モデル』の続編なのに、『キーマンを探せ』という邦題を付けているのがミスリードを生んでいる要因な気がする…🤔
もちろんキーマン特定の難易度アップも課題としてあると思いますが、上記トレンドによって同書がむしろ指摘している課題は”購買に関わる人たちのあいだでの合意形成の困難さ”です。
「確実に社内のキーマン/決裁者をグリップしているはずなのに進まないやんけ…!」というやーつ。泣けます。
それもそのはず、彼らが気にしているのは費用対効果でもツールの機能不足でもなく、"周囲の目"だからです。たとえ決裁者が自分であっても、自分以外の人も「このツールで良いと思います」と言ってくれないと不安なのです。
実際、数百社の上級意思決定者を調べたところ、彼らがサプライヤーの選択に際して一番気にするのは、そのサプライヤーが顧客組織全体で幅広く支持されているかどうかだっただった。言い換えれば、上級意思決定者が複雑な取引で最重要視するのは、サプライヤーのソリューションではなく、自社の賛同である。
(マシュー・ディクソン他 著 『隠れたキーマンを探せ!』p82より抜粋)
「関わる人数が多くなった& 昔は購買に関わらなかったロールの人も増えた」 → 「沢山の中からキーマンを特定するのが大変になった」 → 「売るの難しい」😢
ではなく、
「関わる人数が多くなった& 昔は購買に関わらなかったロールの人も増えた」 → 「関わる全員の合意形成を取るのが難しい」 → 「売るの難しい」 😢
なのです。
では、そんな複雑化するB2B取引においてカンファレンスがなぜ良いかというと、セミナーなどとは比べ物にならない圧倒的な会場のキャパで、エンプラ企業の関係者をまとめてご招待できるからです。大きい is 正義。
100人規模のセミナーで1社から10人参加があったら「さすがにちょっと…」となりますが、1,000人以上の登録で10人はもはや誤差。
実際当社のカンファレンスでも、既存クライアントではありますが1社から20人以上のご参加があったエンプラ企業もありました。
決裁者やメインでやり取りしているご担当者「以外」の方にも自社を知っていただく機会を作り良い体験を提供することで、エンプラ企業の社内での「あそこの会社/ツールええやん」という空気感を醸成し、合意形成を前に進める後押しをする。そんな効果がカンファレンスにはあると思います。
だからこそ、自社のソリューションから少し遠いテーマのセッションも用意することや、セッション以外のおもてなし体験も磨きこむことが重要なのです。
そうすることで、例えば業務では使わないけれども意思決定には関わる購買部の方にも「あーRepro、なんかすごいイベントやってたところね。あのセッション面白かったわー」と良い印象を残し、社内で導入検討を推進してくれる担当者を手助けできるのではと考えています。
■ 強い知覚体験がもたらす記憶への定着とカラーバス効果
エンプラの特徴は接触してから契約に至るまでの検討期間が長いこと。数年かかることもざらにあります。
一言で言うと、「リード数が少なく、商談期間が長い」つまり”提案チャンスが極端に少ない”のがエンタープライズセールスの特徴です。
(『大手企業相手の営業手法「エンタープライズセールス」を解説します』より抜粋)
ということは、長きにわたって自社を覚えていてもらわなければいけないということ。つまり、記憶に残る強烈な感動体験を参加者に与える必要があるということです。
当日ご来場もいただいていたアジャイルメディア・ネットワークの徳力さん(@tokuriki) さんが、メディアチャネル別の接触と記憶の定着率についてコラムを書かれていました。
ロペス氏がエクスペリエンスピラミッドとして紹介していた資料によると、人間は一般的に読んだものは10%ぐらいしか覚えていられないのに対し、実際に自分で体験したことは90%を覚えていられるのだそうです。
スライドの詳細を細かく日本語で書くとこうなります。
■人が一般的に覚えている確率 (メディアチャネル)
・文字を読む行為では10% (新聞、雑誌、メール)
・言葉を聞く行為では20% (ラジオ)
・視覚で見る行為では30% (テレビCM)
・聞くと見る両方では50% (ビデオプログラム)
・話したり書くことで70% (インターネット)
・体験することにより90% (体験)
(徳力基彦氏のAdverTimesコラム『人は読んだことの10%しか覚えてないが、体験したことの90%は忘れない』 より抜粋 ※筆者注: ロペス氏とはキッザニア創業者 ハビエル・ロペス CEOのこと。)
繰り返しにはなりますが、”体験が大事”だからこそセッション内容が面白いだけではカンファレンスとしては不十分で、ブース装飾/導線設計/スタッフ対応/食事/Tweetした人への反応/音楽/ノベルティなどなど来場者に「Wow」を与える総合的な演出、準備が必要なのです。無駄にお金をかけているわけではないのです😗
当社はそのあたりはかなりこだわったほうかなと思います。一部ご紹介。
セッションを聴講するメインのホールはもちろん、休憩スペースやスポンサードのノベルティなども全部デザインの対象でした。
また、カンファレンスで感動体験をしてもらうことによってカラーバス効果が起こり、ディスプレイ広告、メルマガ、展示会など今までは目を向けられなかった他のマーケティング施策も効きやすくなるのかなと思います。
“百聞は一見に如かず”ならぬ "百見は一験に如かず" とは日本を代表する経営者の一人にしてパナソニック創業者である故・松下幸之助さんの名言ですが、細々とナーチャリングメールを送るよりは、カンファレンスのような最初にガツンと印象に残す施策をやるのが正解なのかもしれません。(※この辺まだ当社も取り組み始めたばかりでファクトに乏しいので、知見のある方はぜひ教えてください!)
逆に言うと、いくらセッションの内容がよくても他の体験がショボいとその後も「イケてない企業」というイメージがついてしまうため注意が必要です。カンファレンスのコンセプト、演出、オペレーションなどセッション以外のコンテンツもやり切りましょう。
■ 企業内部でのUGC発生に寄与
僕の前職(入社当時で売上5,000億弱はあったのでエンプラといって差し支えない規模かな?)もそうだったのですが、大きな会社だとイベントやセミナーの参加にレポートの報告が義務付けられていたりします。
特に海外のカンファレンスのような出張込みでお金のかかっているイベントへの参加だと、東京本社全体向けの報告会もマスト。そこに社内の色んな部署の人が100人以上来たりします。
つまり、エンプラ企業に勤めている方に金銭的コストや時間的拘束があってでも参加したいと思ってもらえる大掛かりなイベントをすることで、来場していただいた方を中心にその企業内で(義務的な)UGCが生まれ、その企業内でのカンファレンス主催企業のマインドシェアが上がるのです。
また、スタートアップやIT企業ほどではありませんが最近は大企業でもslack/chatworkのようなチャットツールを使うところが増えてきていますし、イントラネットも充実しています。(前職では実施した社内勉強会のアーカイブを全て社内ポータルに残していました)
カンファレンスのような様々なトピックをカバーした規模の大きいイベントは、こうした社内のクローズドなところで話題にしてもらうチャンスも通常のセミナーより高いのかなと思います。
当社は今回は初めてということもあり(というかチキって)無料でカンファレンスをご提供させていただきましたが、カンファレンスを有料にしたり出張を必要とする場所で開催することで参加者側のコミットも高め、社内UGCを発生させるのはやり方としてはありかなと思います。
ちょっといやらしいですが、その会社内で影響力のある方には来場のご招待と一緒にクローズドなイベントレポートの執筆や社内報告会の開催をお願いしてもいいかもしれませんね。
再三言いますが、クローズドな口コミやコンテンツを生むためにも感動レベルの体験させるのが大事。
■ 世界観への共感とバリューセリング
一般論ですが、大企業になるほどSaaSは機能だけでは売れなくなります。俗に言うソリューション営業というやつです。
そういった企業に対する売り方のhowはApp Annie Japanカンマネ向井さん(@Shun_Mukai0718)のBtoBセールス勉強会レポにとても分かりやすくまとまっているのですが、商材をより高く売るにはSolution Sellingができてもダメで、Value Sellingが必要なんだそうです。
Spec Selling
- スペック訴求
- 価格勝負
Solution Selling
- 課題解決訴求
- ニーズ把握と課題解決力勝負
Value Selling
- 価値訴求
- ニーズ発掘とニーズの最大化が勝負
下に行けば行くほど、一般的には価格が大きくなる。
『勉強会レポート「はじめてのBtoBセールス〜"プロ"のセールスになるために〜」』App Annie向井さん講演より抜粋
価値訴求、つまり僕らが実現したい世界観を顧客に訴えかけ、共感してもらうこと。
"Selling"(≒購買意欲の喚起)まで実現するのは難しいものの、来場者の五感をジャックして価値訴求ができるのはカンファレンスだけでしょう。どんなに素晴らしいストーリーとクリエイティブでCMを作っても、カンファレンスで与えることができる共感の強度には及ばないと思います。
今回の当社のカンファレンスでいうと、「顧客との長期的な関係構築を見据えてマーケティングコミュニケーションをしよう」というメッセージが多くの来場者に共感してもらえたからこそあれだけの盛り上がりに繋がったのかなと。
カンファレンスはエンタープライズ企業を呼び込むLead Genの観点だけに留まらず、呼び込んだ人に将来的に買ってもらえる素地を作ることにも貢献するということですね。
■ パートナーとの連携強化
「カンファレンスとエンプラ攻略の関係」の最後は、カンファレンスのスポンサーをしてくださっているパートナーの皆様について。
大企業との案件にはパートナー企業との相互協力が欠かせません。営業連携しかり、技術連携しかり。
そして、決して安くはないカンファレンスのスポンサー料を出していただく交渉の過程で、単なる認知貢献やリード情報の提供に留まらないコミットをすることもあります。お金と期限がシビアに絡むやり取りだからこそ、別件で止まっていた交渉がカードとして切られ前に進んだりするという。
実際、今回の当社カンファレンスは沢山の企業にスポンサーとなっていただいたのですが、一部のスポンサーとはカンファレンスの枠を超えた協業が始まっています。
例えば当カンファレンスの提唱する世界観にも強く共感いただき、もっとも高いスポンサー料を払ってくださったオプトさんとはカンファレンス開催と同日にツール連携も発表し、「エンゲージメントマーケティング」の重要性と実現を進めていきます。
代表の平田も当日に来場者の前で話していましたが、カンファレンスの運営面で支援いただいているのはもちろん、今後の自社の成長、エンタープライズ企業への浸透にもパートナー企業との連携は不可欠です。
そういう意味で、仮にカンファレンス運営の予算が自社だけで潤沢にあったとしてもパートナーの本気度をいま一度試すためにお金をいただくというのはやるべきなのかもしれません。
■ カンファレンスとエンプラ攻略の関係まとめ
すでにめちゃめちゃ長くなってしまいましたが、「カンファレンスが生む代替不可能な価値」の1つ目についてまとめると
【事業成長の壁】SMBからエンタープライズへのターゲット転換
というARR10億くらいのフェーズのSaaS企業に立ちはだかる壁の突破口になるのがカンファレンスなのではないか、理由は
・通常のセミナーよりも登壇者/その他コンテンツが豪華なカンファレンスは自社にまだ興味がないエンプラ企業をアウトバウンドで惹きつけることができる
・カンファレンスは会場のキャパがあるのでエンプラ企業に対してキーマンを含めた当該企業の購買に関わる人を大勢招待することができ、社内での合意形成を促進させられる
・カンファレンスは他のマーケティング施策よりもターゲットの記憶に残る強烈な感動体験を与えることができ、長い購買サイクルの間にも忘れず覚えていてもらえる。
・参加する側にも金銭/時間面でコストがかかるカンファレンスは参加する見返りを所属企業から求められやすく、イベントレポートなどの形で企業内部でのUGC発生に寄与する
・カンファレンスは豪奢な会場、大音響による有名ゲストスピーカーの有難い話などにより来場者の五感をジャックして価値訴求ができる
・金銭面でのコミットをパートナーに求めるカンファレンスはエンプラ攻略に必要なパートナーとの営業連携、技術連携を前に進める役割も果たす
などがあげられる、という感じです。
当社もまだまだエンタープライズ企業とのお取引は少ないので、上記以外の観点で考えられるものがあればぜひ教えてください🐴
カンファレンスと社員エンゲージメントの関係
次に、カンファレンスとエンプロイーエンゲージメントの関係について。
SaaSはとにかく人手が要るビジネスです。
特に我々のようなセルフサーブ型ではないSaaSの場合、エンタープライズを狙い始めるフェーズでは十中八九、組織の人数は100名を超えるでしょう。
以下は前田ヒロさん(@djtokyo)のSaaStrシリーズ翻訳記事より。
SaaSは〈営業型〉である場合は特に、アウトバウンド、販売開発担当者、インバウンド、フィールド・セールス、マーケティング、カスタマー・サクセス、サポート、さらに複雑なプロダクト管理など、システムの開発はもちろんのこと、それ以上の非常に多くのファンクションが必要になるからだ。
(中略)…ということは、10億円程度のARRを目指すならば、プロダクトとエンジニアリング部門であなたが必要とするのは約40名ということになる。
これらを全部合わせると110名になる。そしてさらに、アドミン関連や経理などの人員を必要なだけ雇用する。分かっている。もうすでに100人を少し超えてしまっている。
(『SaaStr シリーズ:SaaS企業の最初の100人』より抜粋)
「スタートアップ100人の壁」についてはいろいろと記事が出ているので本稿では詳しく述べませんが、ひと言でいうと組織の一枚岩感が薄れます。
例
・人数増加によるコミュニケーションパスの複雑化、他部署への無関心
・古参メンバーと新しく入ったメンバーの熱量の差、会社に対する帰属意識の薄まり
などなど。ご多分に漏れず当社も直面しています。
あくまで副次的な効果ではありますが、カンファレンスはこのフェーズの
🙁「どんどん知らない人が入ってくる…」
🙁「最近、会社がどこを目指しているのかわからない…」
🙁「勢いで入社し5ヶ月。本当にこの会社で良かったのだろうか…」
といった組織のモヤモヤに対する処方箋にもなるマーケティング施策なのです。
■ 協働による一体感の醸成
カンファレンスの成功には全社の協力が不可欠です。
直接ご招待する方々へのお声がけ、LPの拡散協力、登壇者への出演依頼、当日の運営協力などなど、など。
ビジネスサイドとエンジニアサイド、古参と新人、経営と現場。様々な垣根を超えてカンファレンスは全社ゴトとなります。普段会話しない部署の人とカンファレンスをきっかけに話したり、本番当日が近づくにつれ何となく全社的にピリピリしたり。
そうして迎えた当日は、slackがカンファレンスの話題一色になります。ほとんどの社員が会場には行っていないものの、slackを包む謎の連帯感。
100人を超える組織を沸かすことができるマーケティング施策って他にないのではないでしょうか。
展示会準備などもそうですがこの“多くの人を巻き込んだ文化祭感”がけっこう大事だと思っていて、例えばTV CMの制作~公開などは世の中へのリーチとしてはカンファレンスより広いですが、施策に直接携わる人数でいうとずっと少なく、たとえ公開されて反響があっても自分ゴト化してくれる社員はカンファレンスより少ないのではないかなと思います。(CMやったことないから知らんけど)
実際やってみて、カンファレンスの成功は運営のコアメンバーがいかに周囲を巻き込んでいけるかにかかってるなと感じました。もちろんそれがすべてではありませんが。
今回当社は初めてのカンファレンスでオペレーション的に不安ということもあり当日スタッフの多くをイベント運営会社さんに依頼しましたが、運営スタッフを自社で用意することでより連帯感を生めるかもなと思いました。次回開催時は検討したいと思います。
■ 全社員へのビジョン浸透の機会に
FORCASの酒居さん(@jmagicpie)も自社カンファレンス「SaaSway」の振り返り記事で「カンファレンスはビジョンを共有する場」だということを繰り返しおっしゃっていました。
なぜカンファレンスをつくるのか。それは結局のところ、自分たちが実現したい世界、つまり「ビジョン」を多くの方々と共有し一緒に実現するため。
そのために、セッションというカタチで自分たちが伝えたい情報を発信し、空間づくりを通して参加者に体感してほしい世界をデザインする。
(『7.24 SaaSway Conferenceが終了。 カンファレンスをつくるということ』より抜粋)
これは本当にその通りで、前述のエンタープライズ企業攻略に必要なバリューセリングの観点からも来場者にビジョンを共有することは重要なのですが、今回やってみて、カンファレンスは自社の社員に対してもいまいちど自分たちの目指すべき方向性を共有、意識付けする絶好の機会になると思いました。
当社はまだぜんぜんそんな規模には達していませんが、サイバーエージェントさんなど社員数が多くてもひとり一人のモチベーションが高い企業が社員総会を大規模に、派手に行う理由が少しわかったような気がします 🙂
■ 社外からのポジティブな評判形成
「カンファレンスとエンプロイーエンゲージメントの関係」の最後は、来場者やスポンサー、登壇者の皆様からの温かな言葉が社内にもたらす効果について。
これは正直うれしい誤算、というか全くもって予期していなかったのですが、カンファレンスにいらしていただいた多くの方々に「Reproさんすごいですね!」とお褒めの言葉をいただきました。
各セッションの内容については登壇者の皆様と議論を重ねて準備したのでそこそこ自信はあったのですが運営に関しては本当に不安で、直前の週末に徹夜でオペレーションマニュアルを作る始末。
自分は当日もバタバタして来場者とはほとんど話せずSNSも見れなかったのですが、会が終わって同僚スタッフからの報告を聞いたりTwitter上でのコメントを見て、すごく安堵したのを覚えています。
下記は沢山いただいているお褒めの言葉の数々のほんの一握りです。
来場者アンケートからも一部ご紹介。
・「おもてなし精神に溢れる(Customer Engagementを体現している)素敵なイベントでした。」
・「さまざまなものにスポンサーを集めた仕掛けを面白く体験させていただきました。 内容の充実以上に、学ぶ環境の良さに、得られるものがより大きくなったのではと感じています。 この度は貴重な機会をありがとうございました。」
・「期待以上のセッションのクオリティで、とても楽しめました。会場の広さや来場者数もちょうどいい(混雑しすぎず、寂しすぎず)ですし、ドリンクのサービスやお菓子の提供なども小腹を満たせて助かりました。立地も便利ですし、初回開催とは思えないほどのオペレーションの高さを感じました!」
・「イベントのコンセプトが細部にまで行きわたっていてセミナーの枠をはみ出た面白い会でした。」
・「特に前半のセッションは非常に勉強になり、また興味深いお話もたくさん聞くことができました。 これが無料で参加できるというのは素晴らしく、日本では数少ない貴重なイベントだと思いました。」
(以上、開催後アンケートより一部コメント抜粋)
僕はRepro在籍丸4年と最古参の部類で良くも悪くもこの環境に慣れてしまっているのですが、そんな僕ですら「クライアントやパートナーに愛される良い会社にいるんだなぁ…」と思ってしまうくらい褒めちぎられました。
もちろん厳しいご意見もゼロではありませんが、それも「第二回に期待してるよ」という気持ちの現れ。
社員ひとり一人によって捉え方は微妙に異なるとは思いますが、社外からのポジティブな評判形成は日々ハードワークで働く我々にとって少なからぬ救いとなりました。僕らの”クライアントファースト”という行動指針は間違っていなかったんだと。
社員のなかにはカンファレンスに自身のご家族をご招待している方もおり、カンファレンスは家族のエンゲージメントも高められるんだなあと感心した次第です。
■ カンファレンスとエンプロイーエンゲージメントの関係まとめ
「カンファレンスが生む代替不可能な価値」の2つ目についてまとめると、
【組織成長の壁】増え続ける人数と反比例する組織の強度
というこのフェーズのSaaS企業に起こりがちな組織課題の解決にも繋がるのがカンファレンスなのではないか。理由は
・全社を巻き込んだプロジェクトであるカンファレンスは社内に一体感を生む。また、準備や当日の運営などを通じて他部署とのコミュニケーション創出のきっかけにもなる
・コンセプトやコンテンツを練りに練るカンファレンスは来場者のみならず社員にも自社の目指している世界観を共有、意識付けする絶好の機会となる
・カンファレンス来場者のtweetや直接招待客からのポジティブなフィードバックが帰属意識の向上に繋がる
などがあげられる、という感じです。
全社を巻き込むことの必要性はカンファレンス全体の総仕切りを務めた役員の吉澤のnoteにも書いてあるのでお時間ある方はぜひ 🙂
どの事業フェーズから始めるべきなのか
なるほど、カンファレンスが盛んに行われている背景やB2Bマーケにおける必要性はわかったぞ。てか長いんじゃ😡
じゃあいつ第一回を開催するべき? 今の自社の事業フェーズだとどうなんだろう?😶 というのが次に気になるところです。
ググってもそんなニッチなニーズにこたえてくれるコンテンツは無かったので、調べてみました✎
■ 数字から見るSaaS企業のカンファレンス初開催のタイミング
以下は思いついた国内外のSaaS企業をいくつかピックアップし、創業した年と第一回目のカンファレンスを開催した年を表にしたものです。
ほぼMarTech系のSaaSなのでだいぶ偏ってはいますが(._.)
・各企業の発信している情報を元に筆者作成。(※2020年1月時点のもの。創業年で昇順)
・Marketoなど外資の第一回の開催年は全て現地法人のもの
・カンファレンスの第一回を開催している中央値は創業7年目、最頻値は6年目
ヒストグラムを作るとこんな感じ。
表とグラフを見ていただくとわかる通り、1番多いのは4~6年目、次いで7~9年目となっており、10年目までに80%以上の企業が初開催を終えています。(最頻出は5,6,8年目)
もちろんこのSaaS企業群25社は自分が無作為にチョイスしたものですし、各社のビジネスモデルや資金調達タイミングを考慮したものではありません。日米の差もあると思います。
しかしながらカンファレンスを継続して実施している表内の6割の企業(15社/25社)が創業から5~8年目で第一回目を開催していることを鑑みると、多少の差こそあれSaaS企業でIPOを目指して売上を作っていくのであればカンファレンスはシリーズB~Cのうちに実施するのが良さそうです。
以下はSaaSスタートアップでお馴染みのT2D3 (Triple, Triple, Double, Double, Double)をよりブレイクダウンしたものですが、この表と照らし合わせると売上のT2D3成長や組織の100人/300人の壁の真っ只中に多くの企業が最初のカンファレンスを実施しているのがわかりますね。
(『Roadmap to a SaaS IPO: how to unicorn your way to $100M revenue』より抜粋)
何月に開催するのがベストなのか
なるほどなるほど、創業5年目からカンファレンスを実施している企業が多いのか。うちも調達して5期目に突入するし、今年はいっちょカンファレンスやるか~✊
む、でもカンファレンス開催するなら何月がいいんだろう? 展示会は秋に集中しているイメージがあるから自社カンファレンスも秋にやるべき?😶 というのが次に気になるところです。
こちらも上記25社の第一回開催データをもとに調べてみました。
■ SaaS企業のカンファレンス開催月の分布
・Salesforceのみ第一回の開催日が不明だったので上記表から除いた24社(※2020年1月時点のもの。日系15社、外資9社)
・最頻出月は11月、次いで2月
日本企業主催のカンファレンスは11月が圧倒的に多いですね👀 サンプル少ないのでアレですが、外資のカンファレンス開催月は散らばりました。
こちらは第一回の開催月の分布で、何年もカンファレンスをやっている企業はここから開催月のPDCAを回していると思うので、特定企業の開催月の変遷を追うのも面白いかもしれません。気になる方はぜひ調べて教えてください👐
ちなみに曜日別でも集計してみました。こちらは大方の予想通り日米ともにほとんど火~木に行われていますね。
唯一の日曜日に開催しているのはTableau Customer Conferenceの"July 20-22, 2008 in Seattle"でしたが、こちらは既存ユーザー向けでClosedだから日曜開催にしたのかな?調べてもわかりませんでした🤔
もちろん自社の状況や外部の展示会の開催状況、おさえる会場の空き状況などにもよると思いますが、データを見る限りだとカンファレンスを開催するなら11月の水曜日、木曜日がテッパンですね📅 ちなみに当社は水曜日開催でした。
準備期間はどれくらいなのか
11月か、よっしゃ今のうちに予定おさえとこーっと。
む、でもいつからどんな準備すべき?100名くらいのセミナーなら2~3か月前からの準備で大丈夫だけどカンファレンスの準備は半年以上前からだよな…😶 というのが次に気になるところです。
こちらは他社さんのデータはないので、当社で実施したカンファレンスの準備期間のめちゃめちゃざっくりしたマイルストーンを公開します。
7月🍧
∟ 経営としてカンファレンスやる意思決定
∟ 運営メンバーのアサイン、リソース調整、社内kick off
8月🌻
∟ 会のコンセプト、カンファレンス名決定
∟ イベント会社決定
∟ 会場決定、開催日決定
∟ 予算の握り終える
9月🌜
∟ セッションのテーマ、タイムテーブル決定
∟ スポンサープラン決定
∟ サイト設計
10月🎃
∟ スピーカー登壇交渉開始
∟ スポンサー交渉開始
∟ ティザーサイト公開(10月末)
11月🍁
∟ スピーカーほぼ決定
∟ スポンサーほぼ決定
∟ 本サイト公開、本登録開始(11月末)
12月🎄
∟ 各セッションの内容詰め(スピーカー打合せ等)
∟ スポンサー対応
∟ 装飾、演出の詳細詰め
∟ ひたすら集客
1月🎍
∟ 当日のオペレーション確認
∟ その他もろもろ最後の追い込み
∟ 本番
2020/1/22開催『Customer Engagement Conference TOKYO』
・集客目標: 約1,700人 / 当日来場者数 約1,000人
・会場:渋谷ヒカリエ 9F
・1day, 2トラック合計10セッション
・参加費:無料
あくまで正午から丸一日で当日1,000人程度の規模のカンファレンスを主催する場合はこうだったという一例ではありますが、参考になりましたら幸いです。ざっくり半年前から準備すればカンファレンスはできる、ということですね。
準備期間や段取りに関しては反省が山盛りなので、経験値がある方はぜひ情報交換などできればと思います! 3 daysとか東京/大阪で同時開催とかやってる企業さんほんと尊敬します…
どういうチーム編成だといいのか
半年前からで間に合うのか!よっしゃ今からプロジェクト開始だ🔥
む、でもどんな役割の人が何人くらい必要なんだろう?専任だとしても一人じゃ流石にきついよな…😶 というのが次に気になるところです。
こちらも他社さんのデータはないので、当社の場合どんな感じだったかをざっくり記載します。運営コアメンバーは4人でした。
全体統括 吉澤
∟ 事務局Team | 黒川… イベント会社や会場であるヒカリエ、その他スポンサー企業や登壇者とのフロント、当日のオペレーション決めなどを担当。
∟ Sponsor Team | 吉澤, 黒川… スポンサーさんへの営業から決定後のフォローまで担当。
∟ 集客管理,外部告知Team | 伊藤… LP制作~公開、広告運用、メルマガ配信、PRなどを担当。
∟ 制作物、装飾 Team | 菊地… 装飾や音響などの会場周りや販促物のデザインなどクリエイティブ全般を担当。
∟ Session Team | 吉澤, 伊藤… 登壇者打診、セッション内容決め、資料作成などセッション周りを担当。
∟ コンテンツ、UGC Team | 伊藤… イベントレポート作成、Twitterの拡散依頼など担当
メインは上記4人だったのですが、各チームの下にそれぞれ数人ずつメンバーが紐づいている感じです。名前を出せていないReproメンバーの皆様すみません<(_ _)>
特に登壇者探し&オファーとスポンサー交渉はCEOの平田、COOの齋藤にも積極的に手伝ってもらいました。
やはり有名経営者などハイレイヤーの方々や何百万をお金をいただくスポンサー様との交渉には自社のトップに出てきてもらうことも必要だと思います。全てはカンファレンスの成功のため。
ちなみに上で紹介した運営コアメンバーは3/3のミートアップにも全員参加予定ですので、各パートの話をもっと詳しく聞きたい方はぜひ遊びに来てください :)
いつから集客を開始するべきなのか
準備期間のパートでも少し触れていますが、カンファレンス準備期間のうち、大きな山場の一つが「LP公開」です。
登壇者もスポンサーも半分ほど決まり、いよいよ世の中に「当社が遂にカンファレンスをやります!」と宣言するとき。
とはいえセッションによってはタイトルとモデレーター以外まったく決まっていない枠もあったりして、「本当にこれで大丈夫なのか…?😥 」と不安にもなる時期かと思います。普段の大規模セミナーの集客はせいぜい200人。カンファレンスとは文字通り桁が違います。
これもあくまで当社の場合のデータでしかないのですが、結論、本サイトを公開し集客を開始するのは開催1か月半(6週間)くらい前からで大丈夫です。
下記は当社カンファレンス『Customer Engagement Conference TOKYO』の本サイトで事前登録した時期と歩留り率の関係を調べてみたグラフですが、見ていただくとわかる通り、直前に登録している人ほど来場率が高く、サイトオープン直後に登録している人ほど来場率が低い傾向にあります。
・カンファレンスの本登録サイトオープンは2019/11/26、当日は2020/1/22。
・カンファレンスに「一般枠」で事前登録した1,720名を登録時期別に分け、各時期の来場率を算出。
当社の場合は集客の開始から本番が年末年始をまたいでいるという事情も多分に影響していそうですが、それにしても開催2ヶ月~1ヶ月前の時期と1ヶ月~当日までの歩留り率の差が顕著。(表内の3週間前は12/30~1/5の年末年始、かつ登録のn数も少ないので例外的に4週間前より下がったと予想。)
事前登録をしたにも関わらず当日いらっしゃらなかった方々を対象にその理由を聞いてみたところ、ほとんどの理由が「登録後に別の予定が入った」でした。
・事前登録はしたけど当日来場しなかった767人を対象に実施。
・最も多かった理由が「当日に急に差し込みの予定が入った」(n=50)、次いで「登録後、2020/1/22に予定が入った」(n=27)
アンケートを見るまでは「最初のほうの人たちは登録したのが昔すぎて1/22にカンファレンスがあるのを忘れたのかな?」と思いましたが、開催1ヵ月前から登録者に対して定期的にメールを送っていたのが功を奏したのか日程忘れはほとんどいませんでした。
この結果から推察するに、いくら主催側としては通常のセミナーより何倍も力を入れているカンファレンスだろうと登録する側からしたら「行けたら行ってみよう」レベルのイベントであり、まだ先の予定が不透明な6~8週間の時点で登録しても結局そのあとに入ってくるより重要度の高い予定には勝てないのではないかと思います。今回無料だったしね(._.)
逆に3週間前などはかなり予定も具体的になってきているので、そのタイミングで行くことを決めた層は歩留まり高く参加してくれたのかなと思います。
まだ登録径路別や業界別などでの歩留り率は見ていないので、セグメントを切ったときにまた違った傾向があったら追記します。
カンファレンスを成功させるには
つらつらと書いていたらとんでもなく長くなってしまいましたが、最後のパートとして「カンファレンスの成功確度を上げるためのヒント」について考えてみました。細かく挙げるとキリがないので、テクニック論は抜きにして本当に大事だと思ったこと1点だけ。
■ 旗振り役はエモい方がいい
前半部分であれだけ「カンファレンスがブランディング目的?甘え!エンプラ契約ゲットのためだろ!」と書いておいてアレですが、カンファレンスを成功させるならまずはビジネスゴールの作りこみより世界観やコンセプトの作りこみをやったほうがいいです。
今回カンファレンスの責任者を務めた吉澤は、とにかくエモかったです。
元々別の部署なので関わる機会はほぼなかったのですが、この半年間仕事をしていて「え、ここの部分そんな軽く決めていいんかいな😦 」と思ったり直接言う場面がたびたびあった一方で、Reproがカンファレンスを通じてどういう世界観を描くべきで、そのためにどういう登壇者、コンテンツ、演出を用意すべきか、お客様やスポンサーには何を感じてもらいたいか、というところには細部まで非常にこだわっていました。
これだけ規模の大きなマーケティング施策の割にはビジネスKPIの設定や各施策の詰めなどザルな部分が多々あったのですが、それでも他の経営陣含め会社全体が最後まで協力してくれたのは、ロジックでは語れないエモーションな部分を吉澤が持っていて、その熱量に賭けようという気になったからだと思います。
お恥ずかしながら、本稿で公開しているカンファレンスの良い結果データの数々も来場者からのポジティブなご感想も、きちんと狙って実現させたものは多くありません。
ただ、もしもコンセプトや世界観より先にビジネスゴールや感情設計をゴリゴリに細かく決めていたら、社内も社外もここまでの盛り上がりには至らなかったのではないかなあと思います。
個人的にすごいなあと思ったのは、「俺がやりたいからやる」と「お客さんはこれを求めているはずだ」のバランスが絶妙であること。
僕は割とかなりマーケットイン思考寄りというか、自分が良いと思うものは何らかの裏付けがないと自信が持てないタイプ(本稿が引用やファクトデータ満載なのとかまさに…)なので、一緒に仕事をしてみて勉強になりました。
Reproの「クライアントファースト」という行動指針を「同僚/お客さんの求めるものだけをやること」だと履き違えてしまわないように、自分の芯を強く通すところは通そうと思います👦
おわりに
自分の備忘録を兼ねてカンファレンスのアレコレについて書いてみました。自社で実施を検討している方にとって少しでも参考になりましたら幸いです。
僕らも今回が初めてで反省がてんこ盛りなので、すでに何度も開催していて知見のある方はぜひ情報交換したいです👏 第一回は終わりましたがチームは燃え尽き症候群に陥ることなく、すでに次のカンファレンスに向けて動き出しています🏃
また、本稿ではタスクスケジュールの詳細や具体的な数字上の成果 etc は書かなかったので、より詳細について知りたい方はTwitterかFBでご連絡ください📧
ちなみにReproに入れば引き継ぎドキュメントという名のめちゃめちゃ詳細なカンファレンス実行のいろはが見れますよ、join us👼 あえてhowよりwhy重視の記事にしてみたのでした
そしてそして、冒頭に書いた通り3/3(火)にこの記事の内容やカンファレンスに関するぶっちゃけ話をする勉強会をやります!
この記事を読んでカンファレンス開催に興味が湧いたあなたや既にカンファレンスを何度も開催している百戦錬磨のあなたからのご参加、お待ちしております。お席に限りがありますのでお早めに💨
ハッシュタグは「#bb2b」🐥
3/3は都合が合わないけど話聞かせてくれ~という方は個別でお茶しましょう🍵🍵
Reproのキング・カズこと今回のカンファレンス総責任者の吉澤のアカウントも要チェケです👇
補足:B2Bマーケで実施される大規模イベントの種類
本稿を書くにあたって、B2B事業者が主体となって行う大規模なイベントを自分なりに整理してみました。
当社カンファレンスもそうですが、本稿では赤で囲っている部分(a-1)について主に論じています。
■ "カンファレンス"的な大規模イベントの分類
a. どちらかというと新規(未契約)ユーザー向けのイベント→「カスタマーサクセス」「SaaS」「AI」など特定の領域や業界における自社のプレゼンス向上、ブランディングを目的に行われる。
∟ a-1. カンファレンスとかサミットとかインダストリーイベントとか呼ばれるもの。「ある一つのテーマに関して業界の識者たちが発表や議論をし未来を明らかにしようと試みる」という前述の定義に最も当てはまるのがこのタイプ。adobe主催の「Adobe MAX」やGainsight主催の「Pulse」など海外ベンダー主催のものだと登壇者の豪華ぶりもさることながら出演アーティストのライブや装飾などもものすごく、さながら音楽フェスのよう
∟ a-2. アワードと呼ばれるもの。その領域/業界に属する会社をなんらかの基準をもとに表彰するタイプのイベント。カンファレンスよりも規模は小さめ(~300人)で、雰囲気作りもよりフォーマルにされていることが多い。しばしばa-1のカンファレンス内の1コンテンツとして行われることも
b. どちらかというと既存(契約済)ユーザー向けのイベント→自社製品の理解促進、エンゲージメント増を目的に行われる。参加者は基本的には自社製品のユーザー。
∟ b-1. ユーザーカンファレンスとか呼ばれるもの。自社製品のアップデートの発表やクライアント/パートナーの成功事例の発表を主なコンテンツとする。クライアント以外には開催自体をクローズドにしていることも
∟ b-2. ユーザーアワードとか呼ばれるもの。自社製品の活用具合や達成した成果などなんらかの基準をもとに表彰するタイプのイベント。広く普及してる製品だと表彰経験やそれに紐づく資格の取得自体が転職で有利になったりする🏆
∟ b-3. 開発者向けカンファレンスとか製品戦略発表会とか呼ばれるもの。自社製品の技術面でのアップデートが主なコンテンツで、開催するのはFacebookやGoogle、日本だとLINEなど利用ユーザーも製品ラインナップも多い一部のプラットフォーマー企業に限られる(one productでもやってるところあったらゴメンナサイ)
例に挙げているカンファレンスは思いついた企業のものを恣意性なく選んでいるので「は、うちのカンファレンスは既存向けじゃねーわ 😡 」「そんな目的でやってねーわ 😠 」とかあったら教えてください。何卒<(_ _)>
参考リンク/書籍
記事を書くにあたって参考にさせていただいた記事リンクもまとめて貼っておきます。英語得意ではないのに英記事からの引用も多いので「解釈違うよ!」とかあれば教えてください🙇 ★マークが本稿で実際に引用した記事です。
■ 日本語
・★ Wikipedia「会議」
・★ 知っておきたいセミナー・研究会・カンファレンスの違い
・★ SaaS市場規模・トレンド徹底解説!SaaS業界レポート2018
・SaaSスタートアップの成長フェーズ別マーケティング活動
・イベント運営が顧客獲得に有効なのはなぜか?元芸人が説く「リアルマーケティング」の価値
・★ SmartHRのマーケティング組織Ver.2020
・SaaSは年商10億円の壁をどう超えるーーRepro、Yappliの創業者が語る「PMFまでの道のり、ARR成長の鍵」
・『隠れたキーマンを探せ!』(実業之日本社)
・★ 大手企業相手の営業手法「エンタープライズセールス」を解説します
・★ 人は読んだことの10%しか覚えてないが、体験したことの90%は忘れない
・★ 7.24 SaaSway Conferenceが終了。 カンファレンスをつくるということ
・★ 勉強会レポート「はじめてのBtoBセールス〜"プロ"のセールスになるために〜」
・★ SaaStr シリーズ:SaaS企業の最初の100人
・組織はなぜ潰れるのか” ~スタートアップの成長を阻む“成長の壁”の正体~
・30人・50人・100人の壁!?ベンチャーの組織が壊れる理由
・AGC、3万人の従業員が選んだブランドステートメント
・海外レポート:SaaStr2019 カテゴリー創出@Gainsight
・バブル化する「B2Bイベント」市場、どこで弾けるのか?:「市場があまりに混み合っている」
■ 英語
・★ B2B Tech Marketers Get Results With In-Person Events
・★ In-Person Events Ranked #1 Among B2B Demand Generation Tactics
・ 2019 EVENT MARKETING BENCHMARKS AND TRENDS
・★ Roadmap to a SaaS IPO: how to unicorn your way to $100M revenue
・What Is B2B Event Marketing And Why Is It Important?
・5 Things You Need to Do to Create a Category (and What Makes Them Super Hard)
・★ informa engage「B2B Marketing Trends Report」
・2019 Demand Generation Benchmark Survey
余談 of 余談
記事のタイトルは「ヘイ Siri、B2B企業のカンファレンス主催って結局何がいいの?」と迷いましたがAndroid派なのでやめました🍎 AirPods Proは欲しいな~~
というか最近はもはや脱スマホしてます📴 Mightyが良い感じです。