ケアマネジャーも知らない「老人ホームの正しい探し方」
この記事は3,563文字あります。
今回は老人ホーム情報を「漏れなく・正しく」手に入れる方法をご案内します。
それぞれの方法の良し悪しではなく、背景を理解して情報を鵜呑みにしない技術を身につけるお手伝いになれば幸いです。
WEB広告
皆さんは老人ホームを探そうと思った場合、先ずは当たり前のようにGoogle などの検索エンジンを使用されるはずです。
検索結果の上位に表示される施設は、広告やSEO(検索エンジン最適化)対策を施したサイトが多いことが一般的です。
ブラウザの広告ブロックをOFFにした状態で、以下のワードをGooleで検索してみました。
検索結果は以下のように色分けしています。
ピンク
広告、ポータルサイト、営業代行業者(記事後半の老人ホーム紹介業者の項目に詳細)の集客サイト等
ブルー
行政のサイトオレンジ
老人ホームを運営する介護事業者のサイト
見てわかるように、検索結果の上位を占めるは広告、ポータルサイト(広告によって収益を得るサイト)、もしくは営業代行業者のサイト(間接的な広告)です。
ポータルサイト
ポータルサイトとは、インターネット上にある様々なページの玄関口となる巨大なWebサイトのことです。
検索エンジンやリンク集が掲載されているサイトを経由し、Webサイトにアクセスすることから、港(port)の派生語で「入口」という意味を持つ「ポータル」サイトと呼ばれるようになりました。
ほとんどのポータルサイトは営利目的で運営されており、主に広告掲載によって収益を得るビジネスモデルです。
広告枠の販売タイプ
老人ホームを運営する企業に「月額○円」という形で広告の枠を販売する収益化方法です。
広告掲載の費用対効果を推しはかる際にサイトの閲覧数は大きな指標となるため、多くのアクセスを集める施策を実施しています。
具体的には、老人ホームや介護にまつわる様々なコラムを有識者が投稿するメディアを内製していたり、GoogleやYahooといった大手検索エンジンに多額の広告費用を支払って検索結果の上位に表示されるようにしています。
このタイプの国内最大手はLIFULL介護です。
LIFULL介護は、老人ホームに関する「お役立ちガイド」を発信しており、そこへインターネットの検索結果からたどり着くケースが多いようです。成果課金タイプ
掲載した広告(無料で掲載できることが多い)を通して老人ホーム運営法人に問い合わせが入り、入居契約が成約した場合は成功報酬として老人ホーム運営法人がポータルサイトに広告費を支払うタイプが成果課金というビジネスモデルです。
このタイプの最大手はみんなの介護です。
特定のブランド(企業)の老人ホームにこだわりを持つ方はまずいないと思います。経済条件、立地(アクセス)、入居対象者が必要な介護サービスの内容に照らし合わせて、希望条件にマッチするポータルサイトを活用される方が多いのではないでしょうか。
効率的に情報収集できる便利な反面、ポータルサイトには広告費を支払った企業の老人ホームが掲載されている点には留意すべきです。
また、ユーザーが最も必要としている情報ではなく、老人ホーム運営法人が支払う広告費の大小によって作為的に閲覧情報をコントロールされている可能性もあります。
公開情報
老人ホームを探すには、指定権者や管理団体の公式サイトが最も確実な情報源です。
介護施設
介護サービス情報公表システム有料老人ホーム
地方自治体(都道府県・政令指定都市・中核市)のホームページサービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
未公開情報
地方自治体によってサイト内にある有料老人ホーム情報欄の更新頻度はまちまちのため、届け出が提出されたばかり老人ホームや、オープン間もない新規物件はホームページに掲載されていない事があります。
そのような物件の情報を収集したい場合、求人広告を確認するが一つの手です。私も営業マンだった頃はインターネット求人媒体や、駅構内等で配布しているアルバイト情報誌(フリーペーパー)に掲載されている新規オープンスタッフ募集から運営会社の情報を検索していました。
老人ホーム紹介業者
老人ホームの営業代行を専門とする業者をご存知ですか?
ここ数年、高齢者の老人ホーム選びを無料でサポートし、入居斡旋することで老人ホームから紹介料をうけとる「老人ホーム紹介ビジネス」がブームです。
住まい等の不動産を仲介するのは宅地建物取引業者(不動産業者)の独占業務ですが、それには該当しないという経産省のグレーゾーン解消制度が太鼓判となり、資格・届け出・免許不要のビジネスとして新規参入が後を絶ちません。
老人ホーム紹介事業の開業をコンサルティングする企業や、フランチャイズ展開する企業もあります。先に説明した「成果課金タイプのポータルサイト」も老人ホーム紹介業者と言えます。
複数の不動産屋を回った経験がある方はピンとくるかもしれませんが、紹介業者毎に提携する老人ホームの数が異なります。
紹介業者の事業規模によって得られる情報量に差があるのはもちろんのこと、提案が手数料額の多い老人ホームに偏る可能性は考慮する必要があります。
注意点として、老人ホーム側は複数の紹介業者から同一の見込み客の提案(いわゆるバッティング)があった場合の優先順位を決めています。
山田さんが紹介業者であるA社、B社からそれぞれ同じC老人ホームの提案を受けていた場合、先に相談していたA社の営業とフィーリングが合わず、後から相談したB社の営業マンに任せたいと思いました。
しかし、先にA社が山田さんの入居相談をC老人ホームへ持ちかけていたら、C老人ホームはB社に手数料を支払わないため、それぞれの思惑が食い違ってトラブルになるケースがあることは覚えておきましょう。
開設準備中の老人ホームや、老人ホームのガイドラインに準拠していない未届け施設(未届け施設については過去記事に詳しく記載)などは、そもそも地方自治体のホームページや老人ホームポータルサイトには掲載されていません。
入居者募集広告を出稿するより先に紹介業者へプロモーションする老人ホームも少なくないため、ケアマネジャーや医療機関の相談員より最新の老人ホーム情報を持っています。
総合的に高齢者の住まいの情報収集をするための”手段の一つ”として老人ホーム営業代行業者を利用するのは大幅に時間の節約ができます。
まとめ
WEB広告やポータルサイトの情報だけでなく、公式サイトや専門家(ケアマネジャーや医療機関の相談員)のアドバイス、老人ホームを無料で紹介する営業代行業者から得られる情報も積極的に活用すると、効率的に老人ホームの情報を収集することが可能です。
しかし、世の中に無料のものは無く他の誰かが費用を支払うことでビジネスは成り立っています。背景を知らずに無料サービスに飛びつくと押し売り営業を受け、思っていたのと違う結果になるリスクもあります。
広告の仕組みを理解することは、売り文句に踊らされることなく老人ホームを客観的に選定する手助けとなるでしょう。