利用する介護サービスによって価格は変わる【地域加算とは】
この記事は2,132文字あります。
介護保険制度は非常に考えられて作られた制度ですが、専門用語も多く、一般の方のみならず福祉業界の中の人間でも完全に理解していない事が少なくありません。
今回は地域加算について誰でもわかりやすく解説する試みです。
区分支給限度基準額
介護保険サービスは、所得によって1割から3割の少ない自己負担額で利用することができます。そのため、介護を必要としている方は積極的に介護保険サービスを利用しますが、その介護保険にも財源があります。
介護保険の財源は、全国民が40歳以上になると強制加入する介護保険の保険料と、税金で賄われています。
財源が無くなれば介護保険制度が破綻してしまうので、使い過ぎないように要介護認定を受けた一人一人に月の利用上限を設定しているのが区分支給限度基準額(上限額)です。
この上限を超過して介護サービスを利用すると、全額自己負担となります。
単位とは
そもそもなぜ「円」で基準値を設定しないかというと、介護サービスによってかかる人件費等が異なることや、地域間の人件費の差を考慮されているからです。
もし地域毎に区分支給限度基準額を変えてしまえば、居住地によって利用できる介護サービスの総量が変化するため、国民皆保険制度としての公平性を欠きます。
また、介護保険サービスは公的に単価が定められているため、事業者が自由に価格設定をすることができません。介護サービスの基準が「円」で設定されていると、都市部の事業者と地方の事業者の報酬(売上)が同じになってしまい、地域間の人件費の差で事業者間に不公平が生じます。
そのため、全ての介護保険サービスは「単位」を基準とし、それを円換算するように制度設計されています。
地域加算とは
1単位の単価は、医療保険の診療報酬の単価と同額の10円が基本ですが、人件費や賃料の地域格差もあることを考慮して、上乗せの地域加算が設けられています。
地域加算は、全国を8つの地域区分に分類して上乗せ割合が決まります。
この地域加算は、統一的かつ客観的に設定する観点から、原則として、地域ごとの民間事業者の賃金水準等を反映させたものである公務員の地域手当に準拠しており、なおかつ隣接地域とのバランスを考慮して調整されています。
人件費割合とは
介護保険サービスは、その種類や規模に応じて、職種や職員に人員基準が設けられており、その配置が義務付けられています。
そのため、介護保険サービス毎に介護報酬(売上)にかかる人件費の割合が異なります。
それを補正するため、人件費割合が高い介護サービスと低い介護サービスが、利用者に対して同じ時間の介護サービスを提供した場合に、人件費割合の高い介護サービス事業者の方がより多くの介護報酬(売上)を得られるようになっています。
利用者が同じ単位数を、人件費割合が異なる介護サービスを利用した場合、人件費割合が高い介護サービスの方が介護報酬(売上)が大きく、それに伴って利用者の自己負担額(所得に応じて1割から3割)も大きくなるということです。
訪問系サービスは利用単価が一高い
時間単位で介護保険サービスを比較した場合、利用者が住む居宅(在宅)に訪問するサービスは原則、職員と利用者が1:1のため人員効率が悪く、移動時間は算定できないため、他の介護保険サービスより単価(単位)が高く設定されています。
また、介護士よりセラピスト(療法士や治療士)、セラピストより看護師と、人件費が高い専門資格を有する職員が提供するサービスの方が、サービス提供時間あたりの単価(単位)が高くなります。
居宅を訪問するサービスには、様々なルールや制限が設けられています。
例えば夫婦二人とも要介護者の場合、片方にサービスを提供した後に連続してもう片方にサービスを提供することはできません。
また、アパートやマンション等の集合住宅に利用者を集めて老人ホームのように運用すれば訪問する効率が格段にアップしますが、もちろんそれはNGで、同じ建物(同一の敷地内であれば隣接していても対象)に20名以上のサービス利用者が居住していると減算される仕組みになっています。
まとめ
公的に価格が定められている介護保険制度において、従業者の賃金は地域によって差があり、この地域差を介護報酬(売上)に反映する為に、「単位」制を採用し、サービスごと、地域ごとに1単位の単価が設定されています。
そのため、居住している地域に隣接する地域の級地区分が異なり、地域加算額が少ない場合は、隣接する地域の事業者の介護サービスを利用した方が自己負担額は少なくなります。
市と市の境界近くに居住している場合は、地域加算も念頭において利用するサービス事業者を選定されてみてはいかがでしょうか。