「チーコ」三途の川の手前から戻った文鳥
「僕の昭和スケッチ」250枚目
昭和50年代は、文鳥ブーム。
僕も子供の頃に文鳥を飼っていた事がある。
仲が良かった親戚の叔父さんから譲ってもらったのだ。
文鳥は今も人気がある小鳥だ。
チーコ
僕が飼っていたのは、小4の頃だったと思う。
名前は「チーコ」、よくある名前だ(笑)
穏やかな性質の桜文鳥でよく慣れて、いつも一緒に遊んでいた。
学校が終わるとチーコと遊ぶために一直線に家に帰ったものだ。
けれど、ある日異変が起こった。
夜、鳥籠からチーコを出していつものように遊んでいると、不意にバタリと倒れてしまったのだ。そして、体を痙攣させてピクリとも動かなくなった。
一緒にいた母親が、「アレ、、、チーちゃん、、、どうしたんやろね」
と覗き込んだが、チーコはぐったりと動かなかった。
突然の事に僕は驚き、恐る恐る両手でチーコを包んだが何の反応もなかった。
『一体何があったんだろう、何が起きたんだろう?』
チーコは全く動かなかった。
僕は手の中に文鳥を包んだまま大声をあげて泣いた。
思うにあの時ほど泣いたことは自分の人生で無かったように思う。
数分が過ぎた様に思ったが、事態は変わらなかった。
「こら、もうアカンね、ゆう君。可哀想に、チーちゃん・・・」
チーコを見て、母が言った。
僕は泣き止まず、あまりに泣いたので体温が上がり文鳥を包んだ両手もひどく熱くなっているのが自分でも分かった。
「庭に埋めたらなあかんね・・・お墓を作ったげような・・・」
母がそう言って僕の肩を撫でた、、、と、その時手の中でチーコがピクリと動いた。驚いた僕が、恐る恐る包んでいた手を開けると、チーコが顔を出した。そして、まるで悪いものでも振り払うように身震いして飛び起きた。
そうして、チーコは勢いよく僕の肩に飛び移ってきた。
何か異常な事が自分の身に起きたことが、自分でも分かったのか、目をパチクリさせていた。
家人も驚いて目を丸くしていた。
「生き返ったよ!」
と僕は叫んだ。
「あらま!」
と母も目をパチクリさせていた。
手の中には大量の糞があり、糞詰まりだったのだろうか・・・
それとも何かの理由で死にかけて脱糞していたのだろうか・・・
両手で温めたのが幸いしたのだろうか・・・
それは僕にはよく分からない・・・
ただ、子どもの僕はその時ばかりは本当に思った。
『この世には神様がいるんだ、奇跡ってあるんだ!』
と。
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