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世界との不確かな壁を築くことで、人生は楽になるかも。 〜「街とその不確かな壁」を読みました〜


村上春樹さんの「街とその不確かな壁」を読んだ。

現実世界と、そしてもう一つの不確かな壁に囲まれた世界を描くお話だ。

物語では「本当の自分」と「影の自分」という描写が用いられる。
この考え方は、人生を楽にするコツだなと感じた。

本当の自分の他に、もう一人の自分がいる感覚。
辛い現実世界では、その影としての自分が自動的に果たすべき役割を果たしてくれるイメージで生きればよい。

壁の内側の世界と外側の世界。
人生が辛い人は、きっとそこに壁をうまく築けずに、一つの世界として生きてしまっている。

辛い仕事。理不尽な上司。
そんな外の世界での出来事が内側まで侵略してくるから、プライベートな内側の世界まで真っ暗闇に包まれる。
つまりは死にたくなる。

壁を築けばいい。
そして壁の外側で必死に仕事をしたり怒られているのは、影の自分だと思えばいい。

人生の楽しみ方はそれぞれだ。
理想を言えば壁なんて取っ払って、ありのままの自分で世界と繋がればいいのだろう。
だけど私にそんな器用な生き方はできそうにない。

そこに確かな壁を築いて生きる。
私の世界と、どうでもいい世界。
壁の外で起きている出来事なんて、どうだっていい。
大嫌いな仕事、暗いニュース。
全て壁の外に押しやって、私は壁の内側でぬくぬくと過ごしていればいい。

たまには壁を緩めて、外の世界と繋がってみてもいい。
心許せる存在が、もしかしたら人生をより豊かにしてくれるかもしれない。
違うと思ったらまた壁を強固にして、ガードを固めればいいだけだ。

壁の外側で、影としての自分が社会生活を営む。
そうやって世界との距離を生み出せれば、日常のストレスに押しつぶされることなく、人生を楽しんでいけるかもしれない。

臨機応変だ。
それこそ壁は不確かでいい。
一度決めたからといって、ずっと永遠にその設定を守り続ける義理はない。
調子が良い時は壁を取っ払ってみてもいいし、生きてるだけで精一杯な時期には、壁をより頑丈なものにしてもいい。

人生は捉え方次第だなと思う。
辛い現実を自分事だと思うと辛い。死にたくなる。
でも壁の外側の出来事で、自分には関係ないやって思えたなら、軽やかに辛い日々をやり過ごしていけそう。

この小説は私に生きるヒントをくれた。
好きな本を読み、食べたいものを食べ。
壁の内側にある自分だけの人生を、楽しめる分だけ楽しみながら、いつか死んでいけたらいいなと思う。

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