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#087 [読書レビュー]風が強く吹いている(三浦しをん)

お正月は箱根駅伝を見ましたでしょうか?私は息子にYoutubeでTVを独占されてしまって、見ることができませんでした。ま、それはいいとして、今日は私が一番大好きな小説、三浦しをんの「風が強く吹いている」を紹介したいと思います。

この小説は大学の寮生を寄せ集めて10人の陸上部を作り、箱根駅伝を目指すストーリーです。素人同然の10人で10区を走るため、メンバーはギリギリで、補欠はなく、絶対無理だろうといわれるなかでの無謀な挑戦からスタートします。

エースの清瀬灰二(ハイジ)が、蔵原走(かける)の走りを見染めて陸上部に誘い、箱根を目指すと断言。そこから1年間かけて、寮生10人でトレーニングに励み、合宿を行い、予選会を見事通過して、箱根の切符をつかみます。

箱根の本戦では、9区のエース蔵原と10区の清瀬の限界を超えた走りで、感動的なラストを迎えます。清瀬と蔵原はエース格なのですが、それ以外の8人もキャラクターが引き立っていて、各区間で個性を発揮しています。

箱根路の描写も忠実に再現されていて、箱根駅伝の中継の映像が浮かんでくるようで、臨場感があります。著者の三浦しをんは、この小説を書くために4年間かけて箱根駅伝と大学を取材したとか。疾走感あふれる筆致で特に9区の蔵原の激走はページをめくる手が止まりませんでした。

この作品は映画化もマンガ化もされている青春小説ですが、幅広い世代に愛されている作品です。私は映画版も見ましたが、やっぱり、小説のほうをオススメします。

2017年に予選会を一度だけ見に行ったことがあります。

この小説を読むと、より正月の箱根駅伝中継を楽しむことができますし、立川市で行われる予選会も見たくなります。読んだ後に走りたくなるような、背中を押してくれるような、そんな作品です。

三浦しをんの作品は、辞書を編纂する「舟を編む」や、植物の偏愛を描いた「愛なき世界」など、マニアックな世界ながらも何かを目指して努力することの素晴らしさを教えてくれます。大好きな作家さんです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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