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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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2022年7月の記事一覧

【7/29・30阪神戦●●】駅前の吉野家が、黄色くなる世界で。

ここにいると、なんだか世の中の人は全員、阪神ファンなんじゃないかと思えてきた。 梅田駅から阪神電車に乗る人はほぼ黄色いユニフォームに身を包んでいたし、座席の前後両隣はもちろん阪神ファンったし、おまけに甲子園駅前の吉野家は、オレンジではなく黄色だった。 でも普段、なんというか比較的、ビジターファンに寛容である世界で生きていると、この街全体でアイデンティティーを確立したような世界は、それはそれで非常におもしろかった。考えようによってはそれはテーマパークであり、ディズニーやもし

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【7/24広島戦○】時には休んだって、大丈夫。

当たり前に見えるものは、当たり前でないのだと、気づいた2週間だった。 ネクストバッターズサークルの村上くんが打席に向かうとき、ベンチに戻ってくるてっぱちと軽く会話を交わすのを見ながら、私は改めてとそう思う。おかえりてっぱち、よかったねむねちゃん、と、ぽんと肩を叩きたくなる。 やっぱり、なかなかにしんどい2週間だった。どれほどうまくいっている時でも、こんなにガタガタと崩れてしまうものなのか、と、つくづく思った。それはほんとうに、少しの差なのに、一勝はやっぱり遠かった。 て

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【7/22広島戦●】どんな場所にも場面にも、成長の種がある

「あれ、ぐっちスタメンでコールされてる!」球場の外に、パトさんの声が聞こえてきたのを聞いた息子が言う。「ほんまやん!急いでいこ!!」と、私は足を早める。今日は息子の塾がおやすみだったので、子どもたちと3人で久々の神宮である。ちなみに夫はまたもや出張中である。もうだいたい出張である。 ぐっちは1回裏、さっそくタイムリー2ベースを打った。この状況になってから初めてのスタメンで、最初の打席がさっそくチャンスで回ってきて、そこで結果を残した。「ここぞ」で打つ難しさをこの二週間ほどひ

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【7/20巨人戦○】一勝の難しさと、任せる勇気を知るからこそ

歯車というのはこんなに簡単に狂い、でもこんなに魔法のようにスムーズにまた噛み合いだすのか…と、なんだか狐につままれたような気持ちで、スマホの画面を眺めていた。 でもそれはもちろん、魔法でもなんでもない。それどころかスムーズに見えるそれは、結局のところ、みんなの紆余曲折とそして葛藤と、なんとか折れずに踏ん張ったことが、運んできたものなのだ。 夫と息子がパリサンジェルマンの試合を国立競技場に観に行くと言うので、私とむすめはおいしいものでも食べに行くか!と、築地のビストロを予約

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【7/19巨人戦○】それはかけがえのない一勝だ。

武岡くんは3塁でにこにことかわいいガッツポーズをした。そうそうそういうのが見たかったのだ、と、私は思った。みんながいない間に、若い子たちが活躍しまくって、みんなが帰ってきたときにどうしよう誰と入れ替えよう…!!と、(勝手に)悩むような状況を、私はきっと待っていたのだ。 でももちろん、もちろん、現実はそんなに甘くはなかった。ヤクルトは6連敗をし、二軍のみんなはなかなか打てず、守れず…の日々が続いた。連敗におけるあらゆる感情を思い出した。投打が噛み合わない日々の、それぞれの胸中

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【7/17横浜戦●7/18巨人戦●】それでも戦うヤクルトの姿を、息子と見られること

★こちらは全文無料で読めます!★ 私はまた、大好きなムーンライト・シャドウの一節を思い出す。 そういえば前にこの一節を書いたのも、巨人戦だった。2019年、それは、16連敗があった年だ。 あれからヤクルトにはほんとうに、いろんなことがあり、優勝し、日本一にもなり、最速のマジックが点灯し、…そしてそれはあっというまに消滅し、そして今チーム最大のピンチを迎え、またこの一節をかみしめている。 ♢ 二ヶ月ほど前に取ったハマスタのその席は、目の前を選手が通る楽しい席だった。私

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【7/16横浜戦●】まだまだこんなもんじゃ、ないはずだから。

な…なんだったんだ…。と、私は思わずつぶやく。なんかよくわからないけれどもサヨナラ負けをする。と、いうのは、しばし見られることではある。ぽかんとしている間に、相手チームの歓喜が画面いっぱいに映る。しかし考えてみれば、逆のことも何度かあったのだ。サヨナラって、そういうものなのかもしれない。 当然のこと、サヨナラのピンチ(相手にとってはチャンス)の場面では、とんでもない緊張感が、バッテリーにも野手にも漂う。もちろん、見ているこちらの胃も痛めてくれる。普通ではない空気が、球場を、

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【7/14中日戦●】宮台は「ここぞ」を掴もうとする

塾から帰ってくると息子はいつも、玄関を開けるなり「ただいま」も言わずに「ヤクルトどう!!!!!」と、叫ぶ。で、リビングでソファにうずくまる私を見て「あ…負けたね…?」と、悟ったりしている。 なんせ先月はだいたい、早くに試合は終わって、私はごきげんに家事をしている、なんてことが続いたわけですが、ここのところはそうはいかない。今日も息子は帰るなりソファにいる私を見て「やっぱ…だめだった…?」と、悲しげに聞いていた。そう、悲しい。悲しいのである。 あと1点がどうしてもとれない。

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【7/13中日戦●】それは崖っぷちのプライドかもしれないけれど

村上くんはこのチームのピンチを受けて、話した。 まるで、不安でいっぱいだったこちらの気持ちを、なだめるかのように。だけどそれはきっと、チームのみんなに伝えるための言葉だったのだ。僕が引っ張っていくから大丈夫だ、と。きっと動揺だって不安だって抱える、チームメイトに伝えたかったことなのだ。 たった22歳の選手が、本気で、みんなを引っ張っていこうとしている。 ♢ 試合前、いつものナゴヤドームを背景に映し出されるスタメンを改めて見ていたら、なんだかめちゃくちゃ、緊張してきてし

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【7/8阪神戦●】ヤクルトは「日々」のありかを教えてくれるもの。

朝から枡田絵理奈さんと「聴くコラム」ならびにvoicyの収録。そのあと別の打ち合わせがあり、夕方からは交流会。ということで、朝から夜まで都内のスタジオにこもって作業していた。 お昼前、打ち合わせを終えたくらいで、ショッキングなニュースがとびこんでくる。さすがに受け止めるのに時間がかかり、一日引きずる。(というか今もまだ引きずっていてランニング日記にそのことばかり書いている。)でもちょっと、あとから思うと、あのニュースを見た時に一人でなくてよかったな、と思う。信頼できる仕事仲

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【7/7巨人戦○】どんな時も、また明日がやってくる

負けたときはとにかく、いろいろと、そこからも学ぶべきものがあるとか、良きものもあるとか、きっとそれを糧にするとか、そういうことをつらつらと、言い連ねる。そして、書き連ねる。 それは多くは、自分に言い聞かせているのである。 ここから連敗したらどうしようまた急に調子を落としたらどうしようなにかの歯車が狂ってしまったらどうしよう自信をなくしてしまったらどうしようもうみんなみんな打てなくなってしまったらどうしよう。 そういうぐるぐるとした思考と不安を、いやいやいやいや。と、なん

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【7/6巨人戦●】物語のスポットは、今日は一塁側ベンチに当てられたけれど

「あーなんか、くやしいねえ。」と、しみじみと、息子が言う。ほんとだねえ。と、私は思う。いつもいつも、うまくいくわけじゃない。そして記録は、それはどんな記録も、いつか途絶える。それは頭ではよくよくわかっているけれど、いつだってヤクルトには勝っていてほしいし、田口にはテンション高く笑っていてほしい。 勝っているときも負けているときも、ヤクルトのことが好きだし、連勝中も連敗中も、勝てばうれしいし負ければ悔しいのだ。 もう何カードか連続で、ヤクルトは負け越していなかった。もう何日

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【7/5巨人戦●】「少なくともこれだけは」という実感を

夕方から久々に天気が崩れた気圧の影響からか、朝から私はほとんど魂が抜けていた。ランニングして、筋トレして、家事を一通り片付けて朝ごはんを食べてコーヒーを飲んだら、そこでなぜかぱたりとスイッチが切れ、ソファに沈みこんでしまって動けなくなった。 今日はもう休みということにしようか…と、思うも、いやしかしあれもこれも進めておかねばならぬ…という、仕事やら子どもまわりのあれこれやらは今日も山のように待っている。それらをえらくスローペースでなんとあかこなしていると、もうあっというまに

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【7/3横浜戦○】どれだけ時間がかかったとしても。

「これで一回入ってみて!」と、息子のキッズケータイに、チケットのQRコードを送る。今日はサッカーの試合があったので、息子だけ遅れて神宮へ来ることになっていた。 私が神宮の外まで迎えにいっても良いのだけれど、今日はバックネット裏二階席(そう、階段が大変。)であり、さらには試合はしょっぱなからなんだかピンチを迎えたりチャンスを迎えたりと動きが慌ただしかった。できれば席を離れず、自分で入場してもらえると助かる。と、思ったのだ。 とはいえ息子の小さいキッズケータイの画面に表示され

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